【ネタバレ解説・あらすじ】「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」がもっと面白くなる11の秘話
2022年7月30日 15:00
7月29日、ついに日本公開を迎えた「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」。約30年間続いた伝説的シリーズの“完結編・最終章”とされており、熱狂をもって観客の支持を集めています。
今作の記事を数多く掲載してきた映画.com編集部が、様々な取材情報を基に、物語の解説・考察や、“作品がもっと面白くなる11の裏話・製作秘話”をまとめてみました。
あらすじに始まり、「ジュラシック・パーク」のレジェンド登場の素敵エピソード、悪役ルイス・ドジスンのトリビア、描かれたテーマなどなど。これを読めば、何度でも「ジュラシック・ワールド3」が観たくなる!
※本記事は「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」や、過去シリーズのネタバレが含まれます。未鑑賞の方は十分にご注意ください。
恐竜たちが世界中へ解き放たれてから4年。世界は“支配者”である人類と、“かつての支配者”である恐竜が混在していた。文字通り“ジュラシック・ワールド”である。
主人公オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、前作「ジュラシック・ワールド 炎の王国」のロックウッド邸で出会った少女メイジー(イザベラ・サーモン)を連れ、人里離れた地でひっそりと暮らしていた。そこへ、人類と恐竜の共存の未来を阻む新たな課題が降りかかる。
イスラ・ヌブラル島を完全に飛び出し、地球規模のスケールで繰り広げられる新たな冒険とドラマ。力を貸すのは、かつて“ジュラシック・パーク”で起きた惨劇に立ち会った3人のレジェンド博士だった――。
監督:コリン・トレボロウ
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、アレクサンドラ・ダービシャー、コリン・トレボロウ
撮影:ジョン・シュワルツマン
キャスト:クリス・プラット(オーウェン・グレイディ役)、ブライス・ダラス・ハワード(クレア・ディアリング役)、ローラ・ダーン(エリー・サトラー役)、ジェフ・ゴールドブラム(イアン・マルコム役)、サム・ニール(アラン・グラント役)、ディワンダ・ワイズ(ケイラ役)、マムドゥ・アチー(ラムジー役)、B・D・ウォン(ヘンリー・ウー役)、オマール・シー(バリー役)、イザベラ・サーモン(メイジー・ロックウッド役)、キャンベル・スコット(ルイス・ドジスン役)
シリーズで初めて、「ジュラシック・パーク」「ジュラシック・ワールド」の人気キャラクターがスクリーン上で共演。コリン・トレボロウ監督が、「ジュラシック・ワールド」1作目から思い描いていた映像が、ついに実現したのだ。
特に「ジュラシック・パーク」のレジェンド――エリー・サトラー博士(ローラ・ダーン)、イアン・マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)、アラン・グラント博士(サム・ニール)――の登場は、世代を超えてさまざまなファンを熱狂させたことだろう。
今作撮影時、素敵なエピソードが残っている。エリー役のローラ・ダーンは、レジェンド3人が初めてそろったシーンをこう振り返る。
「サム、ジェフ、私の3人が初めて一緒にシーンを撮った後、コリン(・トレボロウ監督)がモニターに映った私たち3人の写真を、スティーブン・スピルバーグ(『ジュラシック・パーク』監督、いわばシリーズ生みの親)に送ってくれたの。するとスティーブンからメールが来て、私たちが一緒にいるのを見て涙が出たと書かれていたわ。とても特別な出来事だった」
さらにマルコム役のジェフ・ゴールドブラムは、3人の絆について「永遠に根源的な絆で結ばれている」と語る。「撮影中、ローラとサムと再び時間を過ごし、一生懸命に働いたり、一緒に遊んだりしたことは、天からの贈り物だった。私たち3人はいつも一緒に歌っていたよ。まるで夢のようだった!」
そしてもちろん、グラント役のサム・ニールも、感慨深げに“当時”の様子を明かす。「1990年初頭、『ジュラシック・パーク』撮影中にカウアイ島を襲ったハリケーンのために、私たちは死にかけたんだ。私たちの友情は困難で試練に満ちた経験のなかで培われたんだよ。だから今度は再び自然災害のなかに身を置き、以前と同じように3人の絆を深めたんだ」
では、レジェンドたちのカムバックの裏には、どのような話し合いがあったのだろうか? ローラ・ダーンの証言をみてみよう。
ダーン「コリ(・トレボロウ監督)が、私の役(エリー)が作品に戻ってくることをほのめかしていたの。そしてスティーブン・スピルバーグが、エリーが彼女の仲間たちとともにフランチャイズに戻る……というアイデアについてどう思うかと、電話してきたのよ」。
ダーンはそれを聞いて、私たちファンと同じように「とても興奮した」そうだ。
「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」は、およそ30年間続いた本シリーズの完結編とされている。これまでの恐竜映画とは一線を画す作品に仕上がっていると、トレボロウ監督は自信をのぞかせる。
そして、完結編にして最も“斬新な作品”となったとも言える。「ロスト・ワールド ジュラシック・パーク」(1997)を除いて、恐竜のアクションはすべてテーマパークや島など、いわば“管理された場所”で繰り広げられてきた。
しかし今作「新たなる支配者」では、雪深い山奥や観光地であるマルタ島(恐竜チェイスがすさまじい!)など、“広い世界”で躍動する恐竜アクションを観ることができる。このことも、今作が特別である理由のひとつだ。
物語の中核にどっかりと鎮座するバイオシン社。ドロミーティ山脈の広大な谷間にある、謎めいたバイオテクノロジー企業だ。
同社は慈善企業でもある。害虫や病気に強い作物により、世界の飢餓を解決することがミッション。そのため、遺伝子組換え技術を研究・応用している。また世界各地から恐竜を集め、広大な谷間へと運び、安全に研究することも請け負っている。
しかしながら、恐竜たちの遺伝子応用がイナゴを巨大化させてしまい、世界の危機を招くことに。そこでメイジーを連れ去り、彼女の遺伝情報を利用してイナゴを食い止めることが、バイオシン社の目的のひとつとなっていく。
経営者はルイス・ドジスン(キャンベル・スコット)。遺伝子工学者のヘンリー・ウー博士(「ジュラシック・パーク」にも登場していた)と、哲学者であるイアン・マルコム博士も在籍している。オーウェン、クレア、ケイラ、そしてエリー・サトラー博士とアラン・グラント博士は、それぞれの理由でバイオシン社にたどり着き、同社の真相と、地球への激変の影響を解き明かしていくことになる。
バイオシン社の経営者ルイス・ドジスン(キャンベル・スコット)は、今作の悪役ともいえるキャラクターだ。実は初登場ではない。第一作「ジュラシック・パーク」にも登場しており、哀れなデニス・ネドリーと共謀し、恐竜の胚をバーバソル・シェービング・クリームの缶に入れてパークから密輸した。とても短いシーンだったので、覚えていない人も少なくないはずだ。
今作では、「アメイジング・スパイダーマン」などのキャンベル・スコットがドジスン役に。スコットはキャラクターの独自性を「ドジスンは、情報を得るためには手段を選ばない。でも他のほとんどの悪役と同じように、ドジスンは自分が悪役だとは思っていないんだ」と明かす。
「原作本では、ドジスンがただのサイコパスである場面もあるが、ただのサイコパスを演じても面白くはない。深みがあって、行動の裏に面白い意図を持っている社会病質者を演じる方がずっと面白い」
今作の撮影期間は、まさに新型コロナウイルス禍のパンデミックの真っ最中だった。世界中が最も混乱していた2020年11月に最後のシーンが終了。数100人が参加する大規模撮影なだけに、PCR検査を4万回実施するなど、壮絶な感染症対策の末のクランクアップだった。
なかでも特徴的だったのが、およそ4カ月間、キャストは同じホテルに滞在したということ。小規模作品ならともかく「ジュラシック・ワールド」ほどの超大作で実現することは異例と言える。
災いは転じて福となった。ローラ・ダーンは「そのおかげで、私たち全員の間にコミュニティと家族の感覚が生まれた」と言う。「週末にリハーサルを行い、その週の仕事について話し合えたの。そして他の方法では不可能なほど、ストーリーテリングについて深く考えることができた」。
通常の撮影では、キャストは「撮影前に何度か一緒に食事をして、それで終わり」とのこと。しかし今作では、「毎週末一緒に過ごして、ほぼ毎晩夕食をともにし、一緒に体を動かし、ハイキングやサイクリングに出かけ、お互いの家族とも知り合いになった」という。
「一緒に時間を過ごし、安全で快適な環境の中で共同体としての感覚を作り上げることができたのは、最高の贈り物だった」(ダーン)。
「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」のテーマはもちろんひとつではなく多岐にわたるが、中核をなしていたのは「母の愛」だと、キャスト・スタッフたちは語っている。
ブライス・ダラス・ハワードは「恐竜は女性の強さとパワーを理想化したもの」と説明したうえで、「自然界で最も獰猛な動物は、圧倒的に母親でしょう。どの種族であれ、子どもを守る母親ほど獰猛な動物はいないわ。この映画ではそれを見ることができる」と明かす。
コリン・トレボロウ監督も「クレアの娘(メイジー)を守ろうとする気持ちが、この映画の感情の核心」と解説する。
「『世界が滅びる』という生死をかけた大きな非常事態に、母親が自分の子どもを守るために何をするか。それを見ることで、どんなものよりも深い印象を残すことになるでしょう」
イザベラ・サーモンが演じるメイジー・ロックウッドは、オーウェン&クレアと暮らす14歳の少女だ。前作「ジュラシック・ワールド 炎の王国」で初登場し、ベンジャミン・ロックウッド卿の娘の“遺伝子クローン”である、という衝撃の事実が判明した。
サーモン「オーウェンとクレアは、誰かが彼女を科学実験に利用するために連れ去ることを恐れているので、メイジーは外の世界と接触することを許されていないの。外に出ることはできても、家の橋の向こう側には行けない決まり。そして、多くのティーンエイジャーがそうであるように、彼女は何かをしてはいけないと明確に言われても、とにかくそれをしてしまう年頃なの」
メイジーを演じたのは、“ポスト・エマ・ワトソン”とも呼ばれる女優イザベラ・サーモン。前作「炎の王国」が映画初出演だったが、今作では堂々たる存在感を全編で発揮している。
特に共演の多かったクリス・プラットとブライス・ダラス・ハワード(役どころでは両親的ポジション)は、彼女の成熟度と豊かな才能に感銘を受けたという。
プラットは、一家が火を囲んでいるシーンに思いを馳せる。「とても印象に残っている。見ていて驚いたし、彼女がどんな俳優なのかを知ることができた。彼女は撮影当時まだ14歳だったけれど、その瞬間にとても存在感があり、多才で、毎回少しずつ違うテイクをこなしていたんだ」。
ダラス・ハワードはこう付け加える。「私には2人の子供がいて、上の子はメイジーより7カ月ほど年下。けれど、とても奇妙なことに、メイジーは私の同級生みたいに感じるの。彼女のプロ意識、存在感、大人っぽさ、かわいらしさには、ただただ驚かされるばかりだった」。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」などで知られる人気俳優クリス・プラット。ブライス・ダラス・ハワードいわく、彼は「独創的なストーリーテラー」だそうだ。
プラットの何気ない発言やアイデアが、作品に反映されていたようだ。ダラス・ハワードは、「最初の2本の映画で、クリスは非常に多くの具体的なアイデアを出していた」と証言している。
「彼は『象の背中に乗るように、子どもがトリケラトプスの背中に乗るところを見たい』などと言っていたわ。だから、私はそれらをすべて――二作の間にクリスや撮影現場のみんなが口にしたアイデア――を記録しておいたの。そして『ジュラシック・ワールド 炎の王国』が完成した後、その文書をコリン(・トレボロウ監督)に送ったんだけど、『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』の脚本を読んでみると、そのアイデアのいくつかがちりばめられているように思えた」
ちなみに、プラットとダラス・ハワードのコンビネーションは抜群だ。
ダラス・ハワード「私は世界で一番大きな笑い声を持っているし、クリスは地球上で最も面白い人の一人。だから、私たちは素晴らしいパートナーだといつも言っていたわ」
「ジュラシック・パーク」「ジュラシック・ワールド」シリーズが、映画の歴史に与えた影響ははかり知れない。そして映画史のみならず、世界の文化や科学分野にも、決定的な影響を与えている点が、本シリーズが“伝説的”である理由だ。
1993年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督作「ジュラシック・パーク」以降、古生物学はガラリとかわってしまった。「なぜならあの映画は、見たこともない手法で、新しい世代に恐竜をよみがえらせたからです」と、今作の古生物学顧問を務めたスティーブ・ブルサット(エディンバラ大学古生物学・進化学教授)は言う。
「映画を通じて、多くの若者が古生物学を学ぶようになりました。その結果、多くの資金がこの分野に流れ、多くの大学で恐竜講座が開かれ、博物館で恐竜の展示が行われるようになりました。現在もその恩恵を受けています。今、私たちは古生物学の黄金時代にいます。世界中の誰かが、平均週に一種、新種の恐竜を発見しているのです。これはもう10年以上続いています。これを行なっているのはジュラシック・パーク世代の古生物学者たちです」
本シリーズが、世界中の人々を映画の魔法にかけた。プロデューサーのパトリック・クローリーは「映画の世界に入りたいと思う人は、一般的に子どもの頃に見た重要な映画がきっかけでそうなる」と明かす。
事実、「ジュラシック・ワールド」の参加者は、「ジュラシック・パーク」で人生を変えられた人ばかりだったそうだ。
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