嵐莉菜、俳優デビューにして初主演作「マイスモールランド」は「一生の宝物」
2022年4月11日 20:49
在日クルド人の少女が、自身の居場所に葛藤する姿を描いた「マイスモールランド」の完成披露試写会が4月11日、都内で行われ、主演を務めた嵐莉菜、共演する奥平大兼(「MOTHER マザー」)、是枝裕和監督率いる映像制作者集団「分福」の若手監督で、本作が商業映画デビューとなった川和田恵真が出席した。
クルド人の家族とともに故郷を逃れ、幼い頃から日本で育った17歳のサーリャ(嵐)は、大学進学資金を貯めるためアルバイトを始めるが、ある日、難民申請が不認定となり、一家が在留資格を失ったことで、彼女の日常も一変してしまう。2022年・第72回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門に出品され、アムネスティ国際映画賞スペシャルメンションを贈られた。
本作で俳優デビューにして、初主演を飾った嵐は「この役を絶対に演じたいという願いがかない、うれしかったが、演技の先輩が多い現場で、私が足を引っ張ってしまうのではと不安もあった」と告白。それでも「たくさんの方々に支えていただき、完成した作品。私にとっては一生の宝物」と感無量の面持ちだった。
思い出深い瞬間として、クライマックスで涙するシーンを挙げ、「カットがかかった瞬間、監督が号泣してくれて。自分の演技が感情を動かすことができたと思えて、やって良かったと思えた。忘れられない体験で、これからも努力し続けようと思えた」としみじみ。自身も5カ国のマルチルーツを持ち、「オリンピックやワールドカップのときには、周りから『どこを応援するの?』と聞かれることも。私は日本を応援しちゃいけないのかなと思った」と振り返り、こうした体験が川和田監督による脚本に反映されたことも明かされた。
奥平はサーリャがバイト先で出会う高校生・聡太を演じ、「(キャリアが)映画で始まった身という意識もあり、すごく意気込んじゃったりしたんですが、でも、やっぱりすごく楽しかった」と確かな手応え。「嵐さんは不安や緊張もあったと思いますが、それを周りに見せず、堂々と演技していた。年下の嵐さんのほうから話しかけてくれて、それも助かった」と感謝を示すと、嵐は「業界用語も全然わからなかったので、気軽に聞ける存在で本当に心強かった。最後まで演技ができたのは、奥平さんのおかげ」と全幅の信頼を寄せていた。
企画立ち上げから、在日クルド人への取材を2年以上行ったという川和田監督は「近くで起きているのに、知らないことばかり」と振り返り、「知っていくことの積み重ねで、社会が変わっていくと信じている。無関心を関心に変えていきたい」と本作に込めた思いを語っていた。
「マイスモールランド」は、5月6日に新宿ピカデリーほか全国で公開される。藤井隆、池脇千鶴、平泉成、韓英恵、サヘル・ローズらが出演。バンド「ROTH BART BARON」(ロットバルトバロン)が、初の映画主題歌を手がけている。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。