中村悠一に聞く、新たなヴィラン「モービウス」の魅力　キャプテン・アメリカとの差はどうつけた？

2022年4月1日 13:30

マーベルの新たなるヴィランを描く「モービウス」が、4月1日から日米同時公開された。オスカー俳優ジャレッド・レトが演じる主人公マイケル・モービウスの日本語吹き替え版声優は、中村悠一が担当。原作コミックではスパイダーマンの宿敵として登場し、いまだ謎の多いモービウスというキャラクターについて、中村に話を聞いた。

天才医師マイケル・モービウス（レト）は、幼い頃から血液の難病を患っていた。同じ病に苦しむ親友のマイロ（マット・スミス）のためにも治療法を見つけ出したいという思いから、コウモリの血清を投与するという危険な治療法を自らに施す。その結果、人間を超越するパワーを手に入れると同時に、抑えきれない血への渇望が目覚めてしまう。

日本語吹き替え版はモービウスを中村が務めるほか、モービウスと同じ病に苦しみ、同じ病棟で兄弟のように育った親友のマイロを杉田智和、モービウスの同僚で優秀な医師マルティーヌ（アドリア・アルホナ）を小林ゆうが務めている。

――本作をご覧になった感想を教えてください。

いろんなドラマが描かれますが、モービウス自身としては、善なのか悪なのか、明確な回答にたどり着いていないんじゃないかなというのが率直な感想です。続編があると明言はされていないですが、これだけでは終わらないだろうと感じたので、モービウスという人間がどう生きていくのか、もっと先が見たくなるストーリーだなと思いました。

――印象深かったシーンはありますか？

モービウスが能力を得てから何をするのかが印象に残りました。ほかのヒーローは敵を倒すために力を手に入れたり、不慮の事故で能力を得たりする人がいますが、モービウスの場合は治療の代償として能力を手に入れます。彼としては、もともと能力を求めていたわけではありません。血の病気を治して、医師の仕事を続けたいという思いがあるので、治療をしてからの行動が正義のためじゃなくて、ただ仕事を再開するというのがほかのヒーローと違って興味深かったです。世の悪を憎んでいるというわけでもなく、医者として人命を救うというところに帰結しているので、面白いキャラクターだなと思います。

――中村さんはMCU作品「アベンジャーズ」シリーズにて、キャプテン・アメリカ／スティーブ・ロジャースの日本語吹き替え版声優も務めていました。同じマーベル作品のキャラクターですが、どんな差をつけて演じましたか？

キャプテン・アメリカの場合は自分のなかの正義と強い信念があって、そこに向かって動いています。人間的な迷いもありますが、思ったより迷わない。なので、アイアンマンと方針の違いでぶつかることもあるけれど、自分の信念を曲げずにアベンジャーズを去る描写もありました。そういう芯の強さがあるキャラクターです。

モービウスには芯の強さがないというわけではなく、そこまで大きい目標で動いていないと感じました。病気を治して、今まで医者としてやってきたことを遂行したいという思いがあるので、信念の方向性が違います。その熱量や温度感を変化させて、見てくださる方に伝えたいと思っていました。ただ、今回お話をいただいて僕も本当に驚きましたし、「いいんですか？」って確認をとりました（笑）。

――危険な治療を施したことで変貌していく複雑なキャラクターです。どのように理解を深めていきましたか？

シナリオ的にはとてもシンプルなストーリーで、モービウスも親友のマイロも、みんな起きた結果に対して行動をとっています。心情の変化に複雑さはありますが、状況に沿って変化していく部分が大きいです。モービウスが初めて体験していくことを僕も体験していくので、演じるときにはわかりやすかったです。小さい頃から能力があるキャラクターだと、このときの気持ちはどうだったんだろうってなりますが、急に力を得たので、僕もそこでどんな能力があるのか知っていけたらいいと受け身で演じることができました。

――マイロとモービウスの兄弟のような親友という関係性にも注目しています。中村さんには2人のように“親友”と呼べる方はいますか？

……いないです（笑）。大人になるとなかなか親友と呼べるような友人を作るのが難しいですね。特に僕の場合は職場が転々とするので、こう聞かれたときに改めて親友がいないことを突き付けられたようで辛いです（笑）。

交友関係は広い方ですが、例えば仕事で悩みがあっても、誰かに相談をするのではなく、自分で回答を出す以外に道はないと思っています。みんなそれぞれ仕事へのアプローチ、大事にしている部分が違うと思うので。なので、親友と呼べるような、相談をするような方はなかなかいないです。本当だったら「いる」って答えたいですし、今の時代は僕のように親友がいないという方も少なくないと思うので、モービウスとマイロのような関係性には憧れます。

――モービウスを演じたジャレッド・レトの演技はいかがでしたか？

コウモリの血清を打つ前後でモービウスは肉体のコンディションが違いますが、顔色や目つきからもそれが伺える表現力でした。後半のムキムキさは、今の年齢が50歳と聞いて本当に驚きました。役について考えるだけではなく、実際に行動をとって何カ月もかけて役作りを行うプロ意識の高さがすごいです。

――最後に、今後の「モービウス」に期待することを教えてください。

今回の作品も楽しんでもらえると思いますが、マイケル・モービウスのドラマとしてはまだプロローグだと感じています。今後続編や、もしくはほかのキャラクターたちと絡んでいくことが期待できるので、このユニバースのなかでモービウスがどう変貌していくのか楽しみにしたいです。モービウスは能力を得た代償に悩まされているのですが、そこに対して今後どうアプローチしていくのか、その答えも早く知りたいです。