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ディオールが監修、フランスの服飾文化を新世代に継承する「オートクチュール」主演ナタリー・バイに聞く

2022年3月26日 11:00

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ナタリー・バイ
ナタリー・バイ
(C)MITSUHIRO YOSHIDA/COLOR FIELD

フランスのラグジュアリーブランド「ディオール」のアトリエを舞台に、世代も境遇も異なる2人の女性の人生が交差する様子を描いた映画「オートクチュール」が公開された。

ディオール専属クチュリエール監修のもと、幻のドレスや貴重なスケッチ画などが登場する本作で、引退を心に決め、美を生み出す繊細な技術を、とある事件で知り合った若い女性に伝えるベテランのお針子を演じた主演のナタリー・バイが、作品や昨今のフランス映画について語った。

画像2(C)2019 - LES FILMS DU 24 - LES PRODUCTIONS DU RENARD - LES PRODUCTIONS JOUROR
――オートクチュールというフランスの服飾文化を新しい世代に継承する物語であると同時に、あなたのようなベテラン女優とフランス(語圏)映画界の若い世代が交差する映画でもあります。フランス映画界の女優として若い世代に伝えていきたいことをお聞かせください。

様々なフィールドでこういった伝承は行われていると思います。親は物事の価値を子供へ伝え、教師は知識を生徒へ伝えています。もし若い俳優たちが質問を持って私のところにやってきたら、彼らにアドバイスをすることはごく自然なことだと思っています。

――プロフェッショナルな専門技術職として多くの女性が、ドレスづくりに携わっていることをこの作品から学びました。あなたが演じた役柄のモデルにあたるような人がいて、役作りの上で、取材などされましたか?

特別にモデルとなった人物はいません。エステルは脚本でとても深く描かれていたので、私はそれを正確に、かつもっとも真摯に演じただけなのです。でも、一般的にはオートクチュールの世界では、クリスチャン・ディオールのような男性であろうと、ココ・シャネルのような女性であろうと、工房でドレスの製造に携わっている多くの女性に囲まれているのです。その中には男性もいますが、確かに大部分は“小さな手”と呼ばれる女性たちですね。

画像3(C)2019 - LES FILMS DU 24 - LES PRODUCTIONS DU RENARD - LES PRODUCTIONS JOUROR
――世界的に知られる高級ブランド、ディオールの協力の下で作られた作品です。あなたにとってこのメゾンは親しみ深いものでしょうか。もしプライベートでも愛用されているようでしたら、その魅力を教えてください。

ディオールは、クリスチャン・ディオールという象徴的な名前を持つ、非常に大きなファッション・ハウスです。彼は非常に才能のある人物で、彼の創るラインは世界中で愛されていました。私も何度か、ガラや特別な夜にメゾン・ディオールのドレスを着る機会がありました。私たち女優は、このような著名なブランドのクチュールのクリエイションを、特別な機会に身にまとえる特権があります。

――今作は監督も女性、母と娘の関係も描く女性映画でした。若手女性監督が躍進し、このように女性の活躍や物語が主題になる作品が増えました。あなたの世代から見て感じることをお聞かせください。

女性監督が進出するのは素晴らしいと思います。長い間、男性監督が多かったですから。少しずつ女性が台頭し、今では男性が撮った映画、女性が撮った映画という区別がつかなくなりました。私としては、どんな人が企画をもちかけてくるのかが基準となるわけではありません。

ある映画に自分を投資することを選択させる要素、それはまず脚本の質であり、そして監督となる人が作った過去の作品がこれから自分に提供される映像世界に的確に導いてくれるのです。演出において、男であるか女であるかは、もはや問題になりません。必要なのは、良い男性の監督であり、良い女性の監督なのです!

画像5(C)2019 - LES FILMS DU 24 - LES PRODUCTIONS DU RENARD - LES PRODUCTIONS JOUROR
――パリの高級メゾンの内幕を描く一方で、郊外の団地の生活を映し、下町の若者が使うようなスラングなども頻出し、パリとの地域性の違いやフランス語の多様性も感じられる作品でした。心温まる普遍的な女性たちの物語のほかに、我々外国人には、どのような点を注目してみてほしいですか?

美しいものやファッションに関心の高い日本の観客の皆さまにとって、大手ブランドのバックステージを見ることは、貴重な機会だと思います。私はこの映画を準備する際に、裏方として働く彼女たちに会うために工房を訪れ、非日常的な世界とそこで働く女性たちに出会いました。この経験は主人公を理解する上で私を大いに豊かにしてくれました。

また、監督のシルビー・オハヨンは、このラグジュアリーな世界とはかけ離れた環境、つまり彼女自身の出身地であるパリ郊外の環境について語っています。監督として成功を収めた彼女は、もう郊外には住んでいませんが、この2つの世界を、リナ・クードリという風格ある女優が演じた見習いお針子の目を通して、同じ映画の中で見せていったのは面白いと思いました。

私が演じるエステルもまた、労働者階級の出身で、少しずつ出世してきた人物です。そして、大きなメゾンで働くようになっても、自分の原点を忘れているわけではないのです。こうやって自分の道を旅してきた人たちは素晴らしいのです。

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