師弟対決!? 「マークスマン」と「クライ・マッチョ」、“現代の西部劇”2作品の共通点
2022年1月15日 10:00

リーアム・ニーソンが最強の元狙撃兵に扮し、凶悪な麻薬カルテルと全面抗争を繰り広げる「マークスマン」(公開中)。本作のメガホンをとったロバート・ローレンツ監督は、「ミスティック・リバー」「硫黄島からの手紙」「グラン・トリノ」などの作品で助監督やプロデューサーを務めた経験を持つ、クリント・イーストウッドの唯一の直系弟子。1月14日からはイーストウッドの最新作「クライ・マッチョ」が公開し、“師弟対決”としても注目したい両作品の共通点を紹介する。

「マークスマン」の主人公ジム(ニーソン)は、メキシコとの国境付近で牧場を営み暮らしていたが、麻薬カルテルに追われてアメリカへ越境してきた11歳のミゲルを助けることになる。一方、「クライ・マッチョ」の主人公マイク(イーストウッド)は、恩義がある元雇い主から14歳の息子ラフォをメキシコから連れ戻してくれと犯罪スレスレの仕事を依頼される。ジムはシカゴまで、マイクはテキサスまで少年を送り届ける過程が描かれるロードムービーになっている。

「マークスマン」のジムはかつて海兵隊に所属した腕利きの狙撃兵だったが、愛妻に先立たれ人里離れた荒野で牧場を独り経営している。「クライ・マッチョ」のマイクは優秀なカウボーイとしてロデオ競技で活躍していたが、落馬事故によって人生が暗転し、家族も交通事故で失って孤独な独り暮らしを送っている。

「マークスマン」のジムは細々と経営してきた牧場の借金がかさみ、牧場が競売にかけられる日が目前に迫っている。「クライ・マッチョ」のマイクは家族を失った後、酒に溺れて人生は暗転し家が抵当に入ってしまう。
「マークスマン」ではジムの愛犬“ジャクソン”が悪徳警官に向かって見事な働きをする場面がある。「クライ・マッチョ」でも少年ラフォには“マッチョ”と名付けられた闘鶏の相棒がおり、連れ戻そうとする追っ手から2人を救う活躍をする。

両作品ともハイウェイでパトカーに止められるシーンがあり、「マークスマン」では悪徳警官によって麻薬カルテルに居場所を教えられ、「クライ・マッチョ」では麻薬捜査としてトランクの荷物チェックをされたり、車のシートにナイフを入れられたりと散々な目に遭う。また、旅の途中で衣料品店に立ち寄って着替えを調達し、2人で焚火にあたりながら語り合うなど共通するシーンが多い。

「マークスマン」のジムは、麻薬カルテルとの銃撃戦の中でミゲルに「生きる道は自分で選べ」と、自らを裏切らず“正しい道”を選択することの大切さを教える。「クライ・マッチョ」では、ラフォが家族の愛を知らないがゆえに父親の元へ行くのを躊躇した時、マイクは「自分の事は自分で決めろ。困ったらいつでも俺の所に来い」と、強い意志こそ本当の強さであることを伝える。
両作品共に“現代の西部劇”ともいうべき作品であり、主人公ジムとマイクは少年を成長させるだけでなく、旅路を通じて自分自身の心の持ちようにも変化が訪れる。「グラン・トリノ」に象徴されるクリント・イーストウッドの流儀は、ロバート・ロレンツの「マークスマン」にも確かに受け継がれている。
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