「マッチョ」から「クライ・マッチョ」へ タイトルに隠されたもう一つのドラマ
2021年12月23日 12:00
クリント・イーストウッド製作、監督、主演の最新作「クライ・マッチョ」のメイキング写真が披露されると共に、原作のタイトル変更にまつわるあるエピソードが明らかになった。
イーストウッドの監督デビューから50年、40作目となる本作は、落ちぶれた元ロデオスターの男が、親の愛を知らない少年とともにメキシコを旅する中で「本当の強さ」の新たな価値観に目覚めていく姿を描いたヒューマンドラマ。
脚本を担当したのは「グラン・トリノ」「運び屋」を手掛けたニック・シェンクと、本作の原作者でもあるN・リチャード・ナッシュ。約40年前、「ゴッドファーザー」で知られる名プロデューサーのアルバート・S・ラディが本作の映画化を考えていたそうで、「原作の小説を読んだら、登場人物たちがあまりにも魅力的で、すっかり夢中になった。読み進めるうちに、この小説のことが頭から離れなくなったんだ。ストーリーは見事だし、登場人物の関係性が生き生きと描かれており、さっそくクリントに話をもちかけた」という。
しかし、当時のイーストウッドは、大ヒットした「ダーティハリー」がシリーズ化されるなど、タフな男を演じ続けており、映画化は「時期尚早」と判断され企画は棚上げとなった。
それから40年、イーストウッドは優れた脚本を忘れてはいなかった。約2年前「脚本を再び検討して、機は熟したと思った。今ならこの役を楽しんで演じられると思ったよ」と、普遍的なテーマが込められた「クライ・マッチョ」は「今こそ撮るべき映画だ」と確信した。
実は、「クライ・マッチョ」のタイトルにはもう一つのドラマが隠されている。1970年代、ハリウッドのスタジオの依頼を受けたナッシュは、「マッチョ」というタイトルで脚本を執筆した。だが、どのスタジオも映画化には消極的だったため、ナッシュはその脚本をノベライズしようと考え、原作者として1万ドル(現在の5万2500ドル)の前金を手にすることにした。1975年に「クライ・マッチョ(CRY MACHO)」が発刊されると、かつてタフだった男が年齢重ねることで見つける“人生の気づき”が共感を呼び、たちまちベストセラーとなる。
小説に対する高い評価に突き動かされるかのように、脚本を受け入れなかった3つのスタジオが映画化権を争奪。最終的に、「マッチョ」は断ったにも関わらず、タイトルのみを変更した「クライ・マッチョ」の権利を獲得したスタジオは大変ご満悦だったという。
40年の時を超えて、イーストウッドが満を持して向き合った本作は、2020年にコロナ禍の中で万全の対策を講じて撮影され、メイキング写真にはマスクを着けたスタッフたちに指示を出すイーストウッドの姿がとらえられている。
「クライ・マッチョ」は2022年1月14日から公開。
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