【「世界で一番美しい少年」評論】「ベニスに死す」のタジオ少年は、その後どんな人生を送っているのか?
2021年12月10日 23:00

この映画を見る前に、まずはルキノ・ビスコンティ監督の「ベニスに死す」をご覧になることを強くおすすめします。もちろん「過去に『ベニスに死す』は見ているよ」って人はそのまま鑑賞してください。
「ベニスに死す」における美少年「タジオ」は、とにかく見る者すべてに鮮烈な印象を残します。ひょろりと背の高いルックス、ブロンドの髪、ボーダーの水着、切れ長の眼差し、男女問わずにアピールし、一挙手一投足から目が離せなくなる存在と言っていいでしょう。「元祖アイドル」みたいな存在ですね。タジオくん、本名はビョルン・アンドレセンといいます。
「世界で一番美しい少年」の元の英語表現は「The Most Beautiful Boy in the World」。「ベニスに死す」公開当時、このキャッチフレーズとともにビョルン少年が一世を風靡した様子は、まさにこの映画の冒頭に描かれている通り。
まず、ビスコンティ監督のオーディション映像が貴重です。タジオが「普通の美少年」だと物語が成立しないので、ビスコンティは「飛び切りの美少年」を求めてヨーロッパ中を行脚します。その行程の中で、ついに見つけたのがスウェーデンのビョルン少年であることを、一連のオーディション映像が見事に物語っています。
そして、カンヌ映画祭でお披露目された「ベニスに死す」が、熱狂的な人気を得たというフッテージも貴重です。映画を見た人々の一連のリアクションを、今作で初めて目の当たりにしましたが、「当時はそんなに盛り上がったのか」と感慨もひとしお。
もっと驚いたのは、ビョルン少年が日本にやってきて芸能活動していたという事実です。これはまったく知りませんでした。1970年代前半の出来事でした。ある意味「伝説のスーパースター」ですが、「一発屋」的なニュアンスも帯びていましたね。そして、美少年であるが故に、性的に搾取されてしまう……。
性的搾取の部分は、この映画ではあんまり語られません。なので、やや突っ込み不足だなあと思いましたが、この映画に出演することについて、監督はビョルン・アンドレセンを3年かけて説得したということですから、彼の意向も汲んでの作品内容なのでしょう。
それにしても、内容は十分に刺激的で、驚きに溢れていて、日本人には身近に感じられる「あの人は今」案件です。すべての年代の映画ファンにおすすめできる、実に面白い一本。
(C)Mantaray Film AB, Sveriges Television AB, ZDF/ARTE, Jonas Gardell Produktion, 2021
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