【第58回金馬奨】「瀑布」が最多4冠、香港民主化運動を記録した「時代革命」の栄冠に拍手喝さい
2021年12月7日 18:00
台湾のアカデミー賞とも称される「金馬奨(第58回)」の授賞式が11月27日、台北市・国父紀念館で開催され、チョン・モンホン監督(「ひとつの太陽」)の最新作「瀑布」が、最優秀作品賞(長編映画)、最優秀主演女優賞、最優秀脚本賞、最優秀オリジナル映画音楽(サントラ)賞の最多4部門を受賞。また、香港の民主化運動に迫った「時代革命」(キウィ・チョウ監督)が最優秀ドキュメンタリー賞を獲得した。
台湾最大の映画賞「金馬奨」は、2010年代より、中国本土からの作品が積極的に出品され、多くの中華圏の映画人が集まっていた。だが、18年・第55回の授賞式にて、ある出来事が起きた。最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したのは「私たちの青春、台湾」。同作は、14年に台湾で起きた学生たちによる社会運動「ひまわり運動」のリーダーと、中国人留学生の人気ブロガーの活動を通し、台湾民主化の歩みを記録したドキュメンタリーだ。監督のフー・ユーは、授賞式のスピーチにて“台湾独立”について言及。これに中国本土が強く反発。19年以降、本土から「金馬奨」への参加は、実質不可能となっている。
とはいうものの、台湾映画界は「ひとつの太陽」「大仏+」といった秀作を続々と発表し続けたため、本土勢の脱退は「金馬奨」にさほど影響を与えていないようだ。チョン・モンホン監督が手掛けた「瀑布」はコロナ禍を背景とした作品。78回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門に出品され、第26回釜山国際映画祭、第22回東京フィルメックスでも上映。第94回アカデミー賞の台湾代表に選出されるなど、各国で話題を呼んでいる。
第34回東京国際映画祭「アジアの未来」部門でワールドプレミア上映となった「アメリカン・ガール」(ロアン・フォンイー監督)は、新人監督賞、新人俳優賞、撮影賞、観客賞、FIPRESCI(国際映画批評家連盟)を獲得。金馬奨上映後は“今年最も注目すべき台湾映画の1本”として、多くの映画ファン、映画評論家から絶賛を受けている。
台湾の名優チャン・チェンは、エドワード・ヤン監督作「クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」でデビューした後、「金馬奨」主演男優賞に3度ノミネートされたが、これまで受賞はならず。今回は新作「The Soul 繋がれる魂」の役作りにおいて、3カ月間で12キロの減量、頭を丸刈りにして役者魂をみせ、念願の初受賞となった。
そして、今回の「金馬奨」で最も注目されたのが「時代革命」の快挙だ。19年、犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の反対運動以降の香港を映し出した同作は、第74回カンヌ国際映画祭でサプライズ上映、第22回東京フィルメックスでは上映直前までタイトルを明かさない形で披露された。「金馬奨」授賞式では、タイトルが読み上げられた瞬間、会場に大きな拍手が沸き起こっていた。
19年以後、中国本土では「金馬奨」への参加不可という措置だけでなく、同賞に関する報道が一切できなかった。だが、今回の授賞式からは、報道が可能に。中国のポータルサイト、映画専門サイトは、授賞式の中継を見ながら、リアルタイムで受賞結果を発表。中国最大のSNS「微博(WEIBO:ウェイボー)」では「#金馬奨」がトレンド入りを果たした。ところが「時代革命」の受賞が発表された約10分後、事態は急転。トレンドからワードが消えただけでなく、大多数の媒体も「金馬奨」に関する投稿を削除していた。来年以降、中国本土と「金馬奨」の関係性はどうなっていくのだろうか――その行く末に注目が集まっている。
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