【コラム/細野真宏の試写室日記】「ミラベルと魔法だらけの家」は字幕版と吹替版でイメージが大きく変わる?理由を解説
2021年11月25日 13:00
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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
2017年の「モアナと伝説の海」以来となる待望の“ディズニー・ミュージカルアニメーション映画”が、4年ぶりにスクリーンに登場します。
それは、今週末11月26日(金)公開の「ミラベルと魔法だらけの家」。
ちょうど公開に合わせる形で「アナと雪の女王」と、地上波初放送の「アナと雪の女王2」が「金曜ロードショー」で連続放送されたので認知度もアップしたと思います。
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振り返ってみれば、「モアナと伝説の海」の時も同様で、公開直前の2017年3月4日(土)に「アナと雪の女王」が地上波初放送されていました。
「アナと雪の女王」は興行収入254.7億円という文字通りのメガヒットを記録した作品なので、“ディズニー・ミュージカルアニメーション映画”の代表的な作品でしょう。
そのため、「アナ雪」のような“ディズニー・ミュージカルアニメーション映画”と打ち出すのが、最も効果的なイメージを作れると言えます。
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とは言え、「モアナと伝説の海」公開時には、懸念材料がありました。それは、南太平洋の島々からインスピレーションを受けた作品だったということ。そのため、キャラクターデザインが、それまでのディズニー作品とは少し異なり、日本で受け入れられるのかは未知数でした。
ただ、“ディズニー・ミュージカルアニメーション映画”としては間違いなく出来が良く、日本でも興行収入51.6億円という大ヒットを記録しました。
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まさにその流れを汲む作品なので、「ミラベルと魔法だらけの家」にも期待がかかるところですが、私は3点ほど懸念材料があると思っています。
まずは、南米コロンビアの奥地がベースとなっているので、キャラクターデザインが「アナ雪」のような王道的ではない点です。
ただ、これについては、「モアナと伝説の海」や、メキシコからインスピレーションを受けた「リメンバー・ミー」のような大ヒット作の前例があるので、ディズニー作品の多様性は広く受け入れられていると思われます。
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次の懸案点は、本来は大きなPR要素となる“ミュージカルアニメーション映画”である点です。
もちろん、言うまでもなく、ミュージカルシーン自体はとても出来が良いと思います。
ただ、本作の大きな特徴に「不思議な家に暮らすマドガリル家」を描いていることがあるため、主要な登場人物が意外と多いのです。
具体的には、主人公のミラベル、ミラベルの祖母(アルマ)、ミラベルの両親(フリエッタとアグスティン)、ミラベルの長姉(イサベラ)、ミラベルの次姉(ルイーサ)、ミラベルの叔父(ブルーノ)、ミラベルの叔父と伯母(フェリックスとペパ)、ミラベルのいとこ(ドロレスとカミロとアントニオ)。主要なキャラクターだけでもこれだけいるのです。
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しかも、ミラベル以外は魔法が使えるので、それぞれのキャラクターにおける「魔法の能力」も把握する必要があるのです。
そのため、通常のディズニーアニメーション作品よりも情報が多くなっている面があります。
そして、それを“ミュージカル映画”として成立させる必要があり、本作では、序盤でミラベルの歌に合わせてパッパッと紹介されています。
その結果、「字幕版」で見ると、「字幕を追い」ながら「キャラクター」と「魔法の能力」と「相関関係」を覚える、という状況になり、やや難易度が高くなるかと思います。
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私は最初に「字幕版」で見たのですが、まさにこの準備が出来ていなく、作品の中に上手く入り込めませんでした。
その点、「吹替版」では、日本語の歌を聞きながら「キャラクター」と「魔法の能力」と「相関関係」を確認するだけでよく、この段階でようやく作品の世界観に入り込むことができました。
このように本作は、登場人物がやや多めであったり、それぞれに違った魔法の能力があったりするため、情報整理がしやすい「吹替版」が適している面があるのです!
しかも「吹替版」は、バックグラウンドミュージックとして流れる際の歌のついては、吹替をせず、字幕で原曲を上手く入れてくれていますし、情報整理がしやすく良く出来ていると思います。
特に「吹替版」では、ミラベルの長姉(イサベラ)役の平野綾は、さすがベテラン声優という感じで、歌も非常に良かったです。
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最後の懸念点は、題材の設定がかなり攻めている点です。
それは、これまでのヒロインは、基本的に魔法が使えるような特別な能力を持っている存在でした。しかし、本作では「ヒロイン以外の家族全員が魔法を使える」という“逆設定”になっています。
そして、より「普通感」を出そうと、ミラベルのキャラクターデザインが割と地味な感じになっているのです。
そのため、仮に映画がヒットしても、「ミラベル」というキャラクターの人気が非常に高くなるのか、というと、正直そこまでは読みにくいイメージです。
このように考えると、本作は、かなり「題材の設定で攻めている作品」だと言えるでしょう。
この“逆設定”をどのように面白い物語へと仕上げることができるのか。
その難題にチャレンジしたのは、2016年に口コミで大きく伸ばし興行収入76.8億円記録の「ズートピア」でメガホンをとったバイロン・ハワードとジャレッド・ブッシュのコンビ。
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「ズートピア」は、「人間が存在しない“動物だけが暮らす世界”」という擬人化された動物の世界を描き出し、楽園ズートピアで夢を追う主人公ジュディらの成長物語として出来が非常に良かった作品でした。
果たして、この「ズートピア」の監督コンビは今回の“逆設定”の物語をどこまで活かすことに成功したのでしょうか?
さすがは「ズートピア」の監督コンビ、という結果なのか、「ズートピア」の監督コンビでも“逆設定”を活かしきるのは難しかったか、という判断なのかは、個人によって分かれるところだと思われます。
そのため、まずはみなさんがスクリーンで判断してみてください。
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ちなみに、本作では短編映画「ツリーから離れて」が冒頭で併映されます。こちらはセリフがない分、動物の動きのメリハリが「さすがはディズニー」といった感じで、ディズニーらしさが満載の作品になっていました。
“傷の位置”に注目すると時間の経過を見落とさずに済むかと思います。
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