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「現代アートを描く映画は、アートと資本主義を語る一つの手法」 オスカーノミネート作「皮膚を売った男」監督が語る、 作品のテーマとチュニジアの映画事情

2021年11月12日 17:00

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カウテール・ベン・ハニア監督
カウテール・ベン・ハニア監督
(C)Philippe Quaisse UniFrance

内戦の続くシリアから脱出した難民自身がアート作品になる――第93回アカデミー国際長編映画賞ノミネート作で、チュニジアのカウテール・ベン・ハニア監督が、「もしも生身の人間が芸術作品となり、売買の対象になったら」という設定のもと、移民・難民問題をめぐる偽善や現代アートに関する知的欺瞞を風刺し、理不尽な世界の在りようをユーモラスに描いた「皮膚を売った男」が公開された。ベン・ハニア監督にオンラインで話を聞いた。

画像2(C) 2020 - TANIT FILMS - CINETELEFILMS - TWENTY TWENTY VISION - KWASSA FILMS - LAIKA FILM & TELEVISION - METAFORA PRODUCTIONS - FILM I VAST - ISTIQLAL FILMS - A.R.T - VOO & BE TV
――カンヌでパルムドールを獲った「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(17)という映画もありましたし、アイ・ウェイウェイをはじめ難民を題材に作品を発表するアーティストも数多くいます。今回現代アートをテーマにした理由を教えてください。

私にとっての映画は、自分の興味のあるテーマを掘り下げていく手段です。現代アートの世界は非常に面白く、マーケットについて探求したいという同期です。とても刺激的な世界で、大金も動く世界なので。私自身も映画監督として、ある意味アーティストで、作品を作る為にも資金が必要です。現代アートを描く映画は、アートと資本主義を語る一つの手法であると思ったのです。

もうひとつは、アーティストの描き方を刷新したい、という思いがありました。今まで、いろんなアーティストを描いた作品を見てきましたが、どれも、芸術家はみじめで社会の片隅にいる存在として描かれるものが多かったのです。しかし、今活躍するアーティストとしては、ジェフ・クーンズダミアン・ハーストらがいます。彼らは、起業家的な側面もあり、メランコリックでロマンチストではないのです。今のアートのリアル、かなりの大金の動きと、金銭的なリスクのある世界だということを描きたかったのです。アートと資本主義と権力の力学を描きたかったのです。

画像4(C) 2020 - TANIT FILMS - CINETELEFILMS - TWENTY TWENTY VISION - KWASSA FILMS - LAIKA FILM & TELEVISION - METAFORA PRODUCTIONS - FILM I VAST - ISTIQLAL FILMS - A.R.T - VOO & BE TV
――この映画はベルギーの現代アーティスト、ヴィム・デルボアの作品から着想を得たそうですね。デルボア本人とこの作品について、制作前に何かしらのコミュニケーションはされたのでしょうか? 彼からのアドバイスやリクエスト、感想などの言葉があれば教えてください。

デルボア氏とは製作前にはそれほどコミュニケーションは取れませんでした。そもそも彼の作品から着想を得ての映画ですから、まずは脚本を書かせてくださいと、許可を取りに行きました。答えはイエスだったのですが、ややいぶかし気でした。映画を作っても構わないが、僕の名前と関連付けないでくれ、という条件を出されました。ところが、映画でアーティストを演じる俳優のケーン・デ・ボーウが、デルボア氏に役作りのために撮影の数日前に面会し、そこで打ち解けて、保険屋の役でカメオ出演してくれることになったのです。そして、完成した映画をとても気に入ってくれ、何時間も感想を語ってくれました。

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――第77回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門で、男優賞を受賞した主演のヤヤ・マへイニを起用した理由、彼のキャリアを教えてください。

彼は実生活では弁護士なのです。過去に学生映画に出演したことはあるそうなのですが。今回実際のシリア人に演じてほしいと思っていたのですが、堅固なスターシステムがあり、映画に出演するのは皆、アラブ圏全域に知られている俳優ばかりなのです。ですから私の思い描くキャラクターにぴったりの人材がいなかったのです。それで、オーディションを開催しました。最終的にヤヤ・マへイニさんを起用した理由は、多種多様な演技ができるから。コメディからダークユーモア、悲劇、ロマンチックな場面まで演じられます。この映画はベネチア映画祭でプレミア上映されましたが、皆が彼に夢中になり、賞を獲得しました。私は逸材を発見し、誇らしい気持ちです。

――あなたの作品が日本で公開されるのは今作が初となります。チュニジアで映画を学ばれたそうですが、チュニジア映画界では女性監督も多く輩出、活躍されているのでしょうか?

チュニジアではたくさんの女性監督が活躍しています。私の世代だけではなく、1970年代から数多くの女性監督がおり、私は彼女たちから非常に多くのことをインスパイアされています。割合的には、フランスやハリウッドを凌駕する男女比だと思います。今、世界で女性監督が活躍するのはとてもうれしいこと。インターネットでチュニジアの女性監督と検索すると、数多くの名前が挙がってくると思います。

画像3(C) 2020 - TANIT FILMS - CINETELEFILMS - TWENTY TWENTY VISION - KWASSA FILMS - LAIKA FILM & TELEVISION - METAFORA PRODUCTIONS - FILM I VAST - ISTIQLAL FILMS - A.R.T - VOO & BE TV
――本作のオスカーノミネートを受け、チュニジアでの反応はどのようなものでしたか?

私としては、大げさですがワールドカップの決戦に出たかのような気分でした。チュニジアにとって初のオスカーノミネート作ですから、それを誇らしく思ってくれました。今のチュニジアは経済的にも社会的にも決して正常な状況ではないので、こういった朗報をとても喜んでくれたのだと思います。

――チュニジアと同じく北アフリカに位置するモロッコの監督から、モロッコでは自国やエジプト映画の人気は高いもののハリウッド作品を上映するシネコンが増えているという話を聞きました。チュニジアの映画事情を簡単に教えてください。このようなアート系映画を専門とする劇場もあるのでしょうか。

チュニジアの映画ですが、面白いことに近隣他国とは反対の状況かもしれません。あまり映画館は多くはないのですが、ハリウッドなど世界的な大作やヒット作は海賊版や不正アクセスで見られてしまうので、それらの作品を見るために、皆わざわざ映画館に出向きません。不正アクセスのできない、チュニジア映画を見に来るのです。そのほうが映画館も儲かるので、どこも頑張っています。アートハウス系の映画館もあり、インディーズ作品を上映します。チュニジアでは、伝統的にシネマクラブのような文化があるので、皆で集って映画館に行き、映画を見た後に感想を言い合ったり、議論を楽しむのです。

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