皮膚を売った男

劇場公開日:

皮膚を売った男

解説

チュニジアの女性監督カウテール・ベン・ハニアが、「もしも生身の人間が芸術作品となり、売買の対象になったら」という設定のもと、移民・難民問題をめぐる偽善や現代アートに関する知的欺瞞を風刺し、理不尽な世界の在りようをユーモアたっぷりに描いた人間ドラマ。内戦の続くシリアから脱出し、難民となったサムは、現代アートの巨匠から驚くべき提案を受ける。それは、サム自身がアート作品になるというものだった。大金と自由を手に入れる代わりに背中にタトゥーを施し、「アート作品」なったサムは、高額で取引される身となる。売買され国境を越えたサムは、やがて恋人に会いに行くのだが……。第77回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門男優賞受賞。第93回アカデミー国際長編映画賞ノミネート。

2020年製作/104分/G/チュニジア・フランス・ベルギー・スウェーデン・ドイツ・カタール・サウジアラビア合作
原題:L'Homme qui a vendu sa peau
配給:クロックワークス
劇場公開日:2021年11月12日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第93回 アカデミー賞(2021年)

ノミネート

国際長編映画賞  
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(C) 2020 - TANIT FILMS - CINETELEFILMS - TWENTY TWENTY VISION - KWASSA FILMS - LAIKA FILM & TELEVISION - METAFORA PRODUCTIONS - FILM I VAST - ISTIQLAL FILMS - A.R.T - VOO & BE TV

映画レビュー

4.0実在の「美術品」エピソードと難民問題で人間とアートの自由を問う

2021年11月12日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 御伽噺のような設定だが、人体に彫ったタトゥーを美術品として売買するエピソードはほぼ実話で、ヴィム・デルボアという現代アーティストの作品「TIM」に着想を得ている。
 デルボアはティム・ステイラーという男性の背中に作品としてタトゥーを施し、展示会場では観客側に背を向けて彼を座らせていた。「TIM」はドイツのコレクターに落札された。ちなみに、デルボアは保険会社の社員役で本作にカメオ出演している。
 シリア難民の人権問題にこの奇想天外なアートを絡めて、独特の切り口で人間の自由について問いかけてくる映画。

 ちょっとした発言のため官憲に追われ難民となったものの、恋人に会うため高名なアーティストの作品のカンヴァスとなり、「美術品」となることで移動の自由を手にしたサム。ところが恋人と連絡はついたものの諸事情によりすれ違い続け、サムは目的を果たせないまま、作品として扱われながら流浪してゆく。
 割と淡々と話が進んでゆくが、サム本人の意向を全く顧みない人権団体とのやり取りなど、皮肉めいたおかしさを感じるシーンもある。直接関係のない第三者が、当事者の個々の事情を汲まずにプロパガンダのネタ扱いするのはよくあることだ。
 他にも作品である背中に吹き出物が出来てしまったり、薄口のユーモアがちょいちょい挟まれる。人権の問題をしっかり織り込みながらも、語り口はライトだ。
 ところがラストはペースが一転して、短時間での急展開。うまくまとまり過ぎでは?いややっぱ現実はエグいな、からのええええ?!感情の高低差とスピード感に、一本取られた気分になる。

 アートを題材にしているだけあって、色合いや構図の美しい場面が多い。様々な美術品が額縁のように作品を彩っていて眼福だ。
 サムを演じたヤヤ・マヘイニは、演技経験は学生時代だけで本職は弁護士だそうだ。でも全く違和感のない演技だし、何といっても作品のカンヴァスとなる肉体が自然で美しい。ベネチア国際映画祭で受賞したのも納得の、役にはまった存在感だ。
 恋人のアビール役のディア・リアンは薄い色の瞳が印象的な美人。そしてモニカ・ベルッチはカッコよさに迫力がある。重ねた年齢に相応しい、こなれた美しさ。

 美術品としてモノ扱いされた方がむしろ自由という、シリアの国内情勢に自然と思いを馳せる。アート作品のあり方と人権問題、ふたつのことを考えさせてくれる作品。上手いです。

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ニコ

4.5人体にアートを刻まれた男がたどる運命

2022年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

監督が実際に美術展で見たタトゥーの作品がモチーフになったそうですが、「人体にアートを刻まれた男がたどる運命」というワンアイディアで、こんなに波瀾万丈なストーリーを作れるのかと感動しました。もの凄いハイコンセプトな作品です。チュニジアの女性監督、カウテール・ベン・ハニアの作品で、日本では彼女の映画が公開されるのは初めてです。モニカ・ベルッチが重要な役どころで出演しているのも驚き。2021年のアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされましたが、それも当然のクオリティーです。オスカー受賞して欲しかった。

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駒井尚文|映画.com編集長

4.0現代の寓話を超えたところにあるもの

2021年11月25日
PCから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
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共感した! 4件)
牛津厚信

4.0難民問題に現代アートを絡めてみたら

2021年11月10日
iPhoneアプリから投稿

楽しい

難しい

シリア内戦の影響で祖国を追われ、恋人との関係も絶たれた男は、ヨーロッパ在住ビザを手にして、各地を渡り歩く。こう書けば実にハッピーな話なのだが、彼が手に入れたのは何と、背中に刻印されたタトゥのビザ。男の美しい広背筋に惚れ込んだアーティストが挑んだ究極の現代アートが、一旦は男にかりそめの自由をもたらすのだが。。。。。

しかし、買い手やキュレーターの意図によって動かされ、そもそも見せ物でしかないことにうんざりした男は、やがて、引き離された恋人と本当の自由を手に入れるために、とんでもない行動に打って出る。

シリア難民の現実をそのまま映すのではなく、軽々と国境を越えられるアートと越えられない生身の人間とをうまく対比させた挙句、想定外の結末まで用意した、これは難民問題を扱ったこのジャンルの画期的作品。何しろ、先が読めないストーリーはエンタメ的な楽しみすらある。

主演のヤヤ・マヘイニはシリア人の俳優で脚本家でもある。怒りと共にカメラを見据える眼差しは強烈で、姿勢によって変わる背中の表情と共に、しばらく忘れられない存在になりそうだ。

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清藤秀人

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