【「殺人鬼から逃げる夜」キャストインタビュー】チン・ギジュ&ウィ・ハジュン、全身全霊で挑んだ“一夜の追走劇”

2021年9月23日 18:00


チン・ギジュ(左)&ウィ・ハジュン(右)
チン・ギジュ(左)&ウィ・ハジュン(右)

サイコな殺人鬼から逃げまくる。逃げても、逃げても、追いかけられ、予想だにしないサプライズが待ち受ける「殺人鬼から逃げる夜」が、9月24日に公開を迎える。「全く新しい『逃走サイレントスリラー』誕生!」というあおり文句に相応しい“たった一夜の追走劇”の魅力を、監督&キャストのインタビューを通じて紐解いていく。

同作は、聴覚障がいを持つ女性が連続殺人事件の現場を目撃し、殺人鬼に追われるさまを描いた韓国発のスリラー。耳の聞こえないギョンミはある日、連続殺人事件に遭遇。唯一の目撃者となった彼女は、理由なく殺人に手を染める犯人の標的となる。ギョンミは必死に逃れようとするが、彼女には追っ手の足音は聞こえず、助けを求める言葉は届かない。頼みの綱は、自身の知恵と視力、脚力のみ。そんな彼女に、大胆で頭が切れるサイコパスのドシクがじりじりと迫っていた。

主人公のギョンミを演じたのは、チン・ギジュ。韓国の大手企業「サムスングループ」を辞めて報道記者となり、さらに俳優へと転身した異色の経歴を持つ人物で、映画では「リトル・フォレスト 春夏秋冬」で知られている。「殺人鬼から逃げる夜」の見どころのひとつが、そんな彼女が“ひたすら走る”光景だ。巨大な地下駐車場、入り組んだ構造の一軒家、らせん状に続く坂道、猛スピードの車が走る道路、混雑した繁華街……どんな苦境に陥っても「絶対に死にたくない」と願うギョンミの姿に、思わずエールを送ってしまうほどだ。

社会的ステータスのある会社員にしか見えない人物から、「殺したい。絶対殺してやる」という衝動に駆られた殺人鬼まで、いくつもの“顔”も持ちあわせるドシクを演じたのは、最注目のライジングスター、ウィ・ハジュン。公開時に韓国ホラー歴代2位の大ヒットを記録した「コンジアム」で第39回青龍映画賞新人男優賞を獲得している逸材だ。

インタビュー前編では、監督を務めたクォン・オスン監督が「殺人鬼から逃げる夜」誕生の経緯を説明してくれた。今回は、チン・ギジュウィ・ハジュンに、過酷な撮影を振り返ってもらいつつ、互いへの思いを打ち明けてもらった。


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――まずは出演の決め手を教えて頂けますか?

チン・ギジュ:出演を決めたのはギョンミのキャラクターが好きだったこと。そして、危機と向き合うギョンミの姿勢、選択、感情、その全てが尊敬できると思ったからです。

ウィ・ハジュン:出演のきっかけは、本作が俳優としてのチャレンジ精神を刺激してくれたからです。演技を始めた頃からドシクのような強烈な殺人鬼をいつか演じてみたいと思っていたので、難役であることはわかっていましたが、それでも挑戦しました。

――脚本を読んだ際の感想を教えてください。

チン・ギジュ:印象的だったのは、出来事の展開がギョンミの視点でディテールにわたって生き生きと書かれていて、よりシナリオに没頭できたことです。また、音の効果的な使い方にオリジナリティを感じ、面白いと思いました。

ウィ・ハジュン:初めてシナリオを読んだ時、大きな緊張感があり、監督が映画を通して伝えようとしているメッセージが何であるか、はっきりと感じ取れました。二重人格で人々を欺き、騙し、殺人計画を実行するドシクの姿は恐ろしくて鳥肌が立ち、強烈な印象を受けました。

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――チン・ギジュさんは、サムスングループの社員から報道記者、そこからモデルを経て、俳優へと転身されています。そもそも何故俳優業に興味を持ったのでしょうか? また、これまでの経歴が「俳優業」に活かされていることもありましたら、教えてください。

チン・ギジュ:元々俳優業に憧れはあったのですが、ずっと勉強をし続けていて現実的には遠い職業でした。現実的になれる職業とは思っていなかったんです。ただ“本当にやりたいこと”を考えた時、(役者の世界に)飛び込もうと決めました。どこに役立っているか具体ではわかりませんが、記者の役なら実際の経験があるので、その仕事について知っているという自信はあります。

――クランクイン前、手話の学校に2カ月通ったとお聞きしております。本作は、単に「手話を使う」というだけではなく、手話で演技をしなければいけません。その点において、意識されたこと、苦労されたことはありますか?

チン・ギジュ:英語を話せない人が、英語を習って、英語で演技をする――そのような感覚でした。初めて習う言語が手話だったことで特別だった点は“視線”です。手話を初めて習うと、相手の手話を読もうとして、視線が相手の目ではなく手に向いてしまいがちなんです。そのため視線が下がってしまうのですが、その視線を相手の目の高さに上げるのに時間がかなり必要で苦労しました。

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――ウィ・ハジュンさんは「コンジアム」での演技も非常に印象に残っています。俳優業を志した経緯、また「演技」の面白みについて、お考えがあれば教えてください。

ウィ・ハジュン:最初は舞台で観客の歓声を浴びたくてパフォーマンスグループを夢見ていました。ですが、演技を習い始めてから、演劇やミュージカルを経験し、演技に対して魅力を感じるようになりました。同期に比べて出遅れているのが悔しくて、うまくなりたいという意地も生まれました。そんな意地が演技に対する大きな情熱へと変わり、今に至っています。演技の面白みは、演技に正解がないことです。そして、あまりにも難しい役を演じる時は面白みを感じるよりも、困難と悩みを抱えて生きることになります。努力の結果、作品が出来上がった時に感じるやりがい、やり遂げたという喜びが、演技の一番大きな魅力だと思います。

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――それぞれのキャラクターを演じる上で心掛けたことや、意識されたこと、そして役作りにおいて、参考にされたモノがありましたら教えてください。

チン・ギジュ:ジャンルはスリラーですが、「聞こえない」という点を過度に表現したくはありませんでした。そこは自然体であるべきだと考え、何も推測せずに役作りをしようと思いました。私がろう者の先生に会って感じたことを映画でも同じように感じて表現しようと努力したんです。その状態でスリラーの世界に放り込まれただけだということを、演じている時は忘れないようにしました。他の役作りの時と大きく違う事はありませんでした。ただ、もしかして私がろう者についてあまり知らないという理由で偏見を持ってはいないか、その点をよく確認をして、勉強しました。少し特別な点があったとすれば、私が最近、よく使っている言葉(手話)を見つけて覚えておけば、アドリブでの演技が可能だったこと。新しい言葉で演技をしなければならない点だけが特別でした。

ウィ・ハジュン:正直なところ、ドシクという人物を100%理解するのは、一般的な思考では不可能でした。しかし、演じる者として彼を理解するために「ドシクだけが持っている何らかのトラウマや心の痛み」「なぜこのような人間になってしまったのか」などについて考え、自分なりの妥当性を探ろうとしました。演じながら最も難しかったのは、相手に危害を加えたうえ、苦しむ相手の姿を見て楽しむという行為でした。そのような演技は心理的に最も辛くて苦しいものでした。「シャイニング」のジャック・ニコルソンさん、そして「チェイサー」のハ・ジョンウさん、「悪魔を見た」のチェ・ミンシクさんの演技を参考にしながら、その中で僕だけのカラーを作っていこうと努力しました。

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――では、クォン・オスン監督について、お聞かせください。監督の印象、役作り、撮影時において、記憶に残っているアドバイスはありましたか?

チン・ギジュ:監督が自ら書かれたシナリオなので、より信頼できました。監督の第一印象は「とても奥ゆかしくて飾らない人だな」。私を信頼してくださっていることが感じられ、その信頼に応える作品を作らなければならないと思ったのを覚えています。現場では長編映画初監督というのが信じられないほど落ち着いていて、板に付いていらっしゃいました。私がもともとスリラーのジャンルが苦手なのをご存じで、親しめるようにアドバイスもしてくださいました。スリラー映画の作品を薦めてくださったり、プレッシャーを感じないようにしてくれたんです。

ウィ・ハジュン:まずシナリオが興味深く、監督に初めて会って話をした時、この作品に精魂込めていらっしゃることが感じられました。また、作品への確固たる思いが伝わり、ぜひ一緒に撮りたいと思うようになったんです。実際、一緒に映画作りをする中で、考えや性格の面で僕と似ているところがたくさんあると感じました。ドシクという人物についても、ディテールにわたってうまく演出してくださったので、きっといい作品を完成させてくれるだろうと信頼していました。

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――チン・ギジュさんとは、「戦友」とも言えるほどの関係性が築いたそうですが、共演シーンで特に思い出に残っているものはございますか?

ウィ・ハジュン:一番思い出に残っているのは、映画の後半、ギョンミが切実な思いで声を絞り出し、手話を交えてドシクに話すシーンです。ここは本作のハイライトでもあり、ギョンミが話に集中できるように、そしてドシクがその話を聞いているように見せることが重要でした。目の前で演じているチン・ギジュさんを見て、気持ちが動揺するほど胸が熱くなりました。彼女の演技が見事で、僕の大好きなシーンです。

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――チン・ギジュさんはいかがでしょうか?

チン・ギジュウィ・ハジュンさんとは、世間話をしたり、冗談を言ったり、親しい同僚として過ごしました。思い出に残っているのは、ギョンミが家の窓から飛び降り、ドシクに頭を掴まれるシーンです。感情の流れから、思いきり力を入れてお互いを引っ張るのですが、私はワイヤーを付けているせいで、そしてウィ・ハジュンさんは窓枠があるせいで、体の痛みがどんどん酷くなる一方だったんです。しかし、私がウィ・ハジュンさんの痛みを心配して感情を緩めようとすると、むしろ彼は自分の体をかえりみず、もっと力を入れてくる。そんな姿を見てからは、他の心配事は抱えず、ギョンミの感情だけを考えることができました。2人の価値観が同じだったため、撮影の間は、ずっと息が合っていたと思います。

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