くまもと復興映画祭、閉幕! 行定勲監督、継続と連帯の重要性を強調
2021年4月19日 10:00
熊本県で開催されていた「えがおPRESENTSくまもと復興映画祭2021」は4月18日、最終日を迎えた。最初の上映となったのは、1986年公開の林海象監督作「夢みるように眠りたい」デジタルリマスター版(2019)。ティーチインのゲストには、主演の佐野史郎が登壇した。
同作は、当時29歳だった佐野の映画デビュー作。佐野演じる私立探偵・魚塚の元に、誘拐された娘を探してほしいという依頼が舞い込むが、調査を続けるなかで魚塚は何かのストーリーを追っているような感覚になる。モノクロ・サイレントの手法で撮影された今作について、「何回も観ているけれど、観るたびに『こういう話しだったのか!』と気づくことがいまだにあります」と、35年前を振り返る。
「林監督にとっても僕にとってもデビュー作でしたが、公開が決まって撮っているわけではなく、ただ撮っていた。まるで魔法にかかったみたいに有名無名問わず集まった人たちが“ただ”撮っている日々、“ただ”この作品の世界を生きたいと思えるような2週間でしたね」。
同映画祭ディレクターの行定勲監督にとっては、上京して最初に映画館で観た映画だという。今作を観たことでその後、林監督の門を叩き助監督としてキャリアをスタート、人生を左右する特別な作品でもある。「サイレントだけれど声が聞こえてくるような、とても美しい作品。画の力、俳優の力、音楽の力……総合芸術を語っている映画だと思う」と、当時を思い出しながら感極まっていた。
続いて「佐々木、イン、マイマイン」「わたしは元気」「街の上で」が上映。なかでも、行定監督が「確実に日本映画を面白くする監督だ」と熱いエールを送るのは、「佐々木、イン、マイマイン」の内山拓也監督だ。
原案は、佐々木を演じた俳優・細川岳の高校時代の同級生とのエピソードをもとに、佐々木との日々を思い起こす青春映画になっているが、内山監督は「単なる思い出ムービーにしない」ことにこだわった。「僕にとっての佐々木、みんなにとっての佐々木がいて、僕のなかでは(故郷)新潟の同級生や、あの頃見ていた場所や空気……、具現化できないことを総称したのが佐々木です」。誰のなかにも佐々木は居るのだと語り、それを表現する脚本ができるまでには約3年の歳月を要した。
「人間は、記憶を美化してしまうものなので、細川には、嫌な記憶、どうしようもない記憶を抽出してもらい、それを僕が脚本に落とし込んでいきました。みんながやりやすい環境をつくること、導線をつくることが監督の役割だと思っているので、撮影前の準備には半年~1年かけ、役者と一緒にすごす時間をとるようにしました」という内山監督の演出方法に、行定監督も「準備期間を大事にするというのは映画でしかできないことでもある」と同調。さらに「この映画は映像的にとても巧みで、特にあのラストシーンは何度観ても名シーン、記憶するシーンになっている」と絶賛する。
「わたしは元気」上映後には渡辺紘文監督と渡辺雄司(音楽監督)、クロージング作品「街の上で」上映後には今泉力哉監督、若葉竜也、中田青渚を迎えてのティーチインが行われ、続くグランドフィナーレではゲストが再登場。映画祭実行委員会名誉会長の大西一史・熊本市長大西一史市長が「この先も、文化の力で映画の力で、熊本の復興を確実なものにしていきたい」と思いを伝え「くまもと復興映画祭2021」は閉幕した。
熊本地震から5年、復興映画祭として5年、行定監督は映画祭の役割について「続けることが重要」だと語る。「熊本地震の復興の途中であり、令和2年の7月豪雨もあり、コロナもある。まだまだ辛い局面に立たされている人たちがいるなかで、ひとりひとりがそれでも生きていこうと、“それでも”が復興のパワーになっていますが、個人が踏ん張るにも限界があります。だから横にいる人と手をつなごう、そうすることで連帯が生まれ、連帯が生まれると何かにぶつかったときに心が強くなれる。その連帯のひとつが、この復興映画祭だと思います」。
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