世代を代表する作品に―北村匠海×山田裕貴×鈴木伸之×磯村勇斗×吉沢亮が「東京リベンジャーズ」にかけた覚悟
2021年4月14日 07:00
「みんなが、この作品に何かを賭けてくれていることを随所で感じて。お互いがそれに応えるように芝居で刺激し合うような現場でした。同世代が一堂に会して、僕たちの先輩方と同じ道ではないとは思うけど、大きなバトンをこの作品で繋いでいけたらなという思いです。そして、また次世代にあの映画を越えようって思ってもらえるくらいの“どデカいもの”になったら良いなと」
北村匠海は、主演作「東京リベンジャーズ」への熱い思いを吐露する。言葉の端々から、「世代を代表する作品にしたい」という並々ならぬ気概が伝わってくる。そんな北村とともに“大きなバトン”を握るのは、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮という、若手トップクラスの俳優たちだ。
1月14日、映画.comは都内某所の川沿いで行われた撮影現場を訪れた。本記事では現場の様子をレポートするとともに、北村、山田、鈴木、磯村、吉沢らキャスト陣のインタビューを紹介する。
「映画 賭ケグルイ」「ぐらんぶる」の英勉監督がメガホンをとり、シリーズ累計発行部数1000万部を突破した和久井健氏の人気コミックを映画化する「東京リベンジャーズ」。どん底の生活を送るダメフリーター・花垣タケミチ(通称タケミチ/北村)はある日、かつて交際していた人生唯一の彼女・橘ヒナタ(今田)と弟・ナオト(杉野)が、事故に巻きこまれ命を落としたことを知る。翌日、何者かに命を狙われたタケミチが死を覚悟した瞬間、ヤンキーだった高校時代にタイムリープ。ヒナタを救い、逃げ続けてきた人生を変えるため、タケミチは事故の原因があると思われる最凶の不良組織「東京卍曾」に潜入する。
喧嘩は弱いが、現在を変えるために「絶対に逃げない」という強いハートで相手に向かっていくタケミチを演じた北村。かねて原作を愛読しており、「タケミチを演じるなら僕がやりたい!」という思いがあったそうで、「タケミチは喧嘩ではなく気持ちだけで、人の心を動かす人なので、自分もそんな座長でいようと心がけました」と意気込む。
そんなタケミチがタイムリープを経て出会うのは、「東京卍曾」の総長・佐野万次郎(マイキー)と副総長・龍宮寺堅(ドラケン)だ。吉沢が最強の戦闘能力で不良たちを束ねるカリスマ・マイキーを圧倒的なオーラで演じ、山田は金の辮髪と龍の刺青を持ち、マイキーが絶対的な信頼を寄せるドラケンに扮する。原作ファンの期待に応える、いや超えたといっても過言ではないキャスティングが実現しているのだ。
漫画作品が実写化されるときに、原作ファンが最も注目するポイント――それは、人気キャラクターたちのキャスティングとビジュアル。本作も例に漏れず、発表の際には原作に忠実なこだわり抜かれたビジュアルに大きな反響が寄せられた。
金髪リーゼントに挑戦した北村は、「髪型に関しては、原作にできるだけ寄せられるようにリーゼントが作りやすいカットにしました。リーゼントというよりツンツンヘアっぽいような。体作りなどはとにかく動ける体を維持することを意識しました」と語る。共演陣も、「現場で匠海に会った時、『あ、こいつタケミチだ!』となるくらい、匠海の役へのアプローチと外見がまんまタケミチでした」(磯村)、「ビジュアルやいで立ちが似ているところはもちろんですが、タケミチの過去を何とかしたいという実直で純粋な様子が匠海くんとものすごくリンクするなと感じました」(鈴木)と口をそろえるほどのハマりぶりだった。
小柄で童顔ながら、喧嘩では負けなしで最強、不良たちに「この人についていきたい」と思わせる魅力を秘めたマイキー役の吉沢は、長めの金髪を束ねたヘアスタイル。「友情や背負っているもの、原作のなかでも大切に描かれている人間としての魅力を丁寧に演じようと意識しました。また、原作のマイキーのキャラクター性が実写になった時に、あまりに漫画的な表現にならないように落としどころを探りながら演じました」と述懐する。
山田は、ドラケンのトレードマークでもある金の辮髪、こめかみの龍の刺青、ピアスなどを完全再現。より原作のビジュアルに近付けるため、ブーツのなかにソールを入れて身長を15センチ上げ、ほぼ爪先立ちのような状態でありながらも、アクションも完璧にこなした。「見てもらったらわかる通り、やれることは全部やりつくしました」と自信をのぞかせ、「まとう雰囲気」を大事にしたという山田。「僕がアニメに寄せて声を作ると嘘っぽく聞こえるのが嫌で、自分のドラケンには嘘があってはならないので、想像ですが心から出る嘘の無い声に気を付けました」と、ビジュアルから声に至るまで、徹底した役づくりを心掛けた。
磯村は、タケミチの親友・千堂敦(アッくん)役。タケミチのタイムリープの影響を受けて変貌し、過去と現在で様々な顔を見せるため、演技の幅が問われる難しい役どころだ。「学生の時は赤髪リーゼントにし、少し顔つきもふっくらさせました。逆に、大人になった時は減量し黒髪へと変えたところがこだわった部分です」と語る通り、ビジュアルにも変化をつけた。
タケミチの天敵・清水将貴(キヨマサ)に扮した鈴木は、自身も「なんてひどいやつなんだ!」という印象だったと明かすほど、これまでになく凶暴かつ卑劣な役で新境地を開いた。「本当に卑劣なキャラクターなので、振り切って演じないとかえって作品をダメにしてしまうと思っていました。なので、撮影中は一切の良心を捨ててタケミチと対峙することを意識していました」と振り返る。
映画.comが参加した撮影の舞台は、川沿いの高架下。1月の早朝、川の向こうからは、冷たい風が運ばれてきて、吐く息を白く染める。“不良たちのたまり場”という設定の現場で、まず目に飛びこんできたのは、学生服をまとい、リーゼントや編みこみなど様々なスタイルで集まってきた30~40人の不良キャストたち。彼らが座りこんだ階段の手すりには、チラシがベタベタと貼られ、周囲には看板や赤色コーンが捨て去られていたり、「暴走天使」というグラフィティアートが描かれていたりと、細かく作りこまれた美術が、殺伐とした雰囲気を醸し出している。
階段の先には、バットを手に立ちはだかるキヨマサと、制服を血で赤く染め、傷だらけの状態で倒れているタケミチ。北村には、片目がつぶれているかのようなメークが施されている。ここは不良同士を戦わせ、ギャラリーが勝敗にお金をかける「喧嘩賭博」が行われている場。かつてはキヨマサの圧倒的な暴力のもとに屈し、“奴隷”と化していたタケミチだったが、現在を変えるため、二度と逃げないことを誓い、タイマンを申し込む。タケミチの自分自身への、負け続けてきた人生への“リベンジ”が始まる重要なパートだ。
この日に撮影が行われたのは、対峙するタケミチとキヨマサの前に、マイキーとドラケンが登場するシーン。階段の上からドラケンが声をかけると、これまでタイマンを見守ってきた不良たちの空気が変わり、一斉に頭を下げて左右に割れる。ドラケン、そして背後からマイキーが、できあがった道の間を静かに進み、「東京卍曾」のトップに君臨するふたりの、絶対王者としてのカリスマ性を感じさせる。ふたりのセリフはほとんどないが、まとう空気だけで周囲を威圧し、「只者ではない」と悟らせる姿は、まさにマイキーとドラケンそのものだ。
撮影はスムーズに進められ、続いてドラケンがキヨマサをバットでけん制し、マイキーがハイキックを繰り出す動きの多いシーンへ。山田が、鈴木やアクション監督とともに、バットを振る角度やタイミング、カメラとの位置関係などを細かく確認し、流れるように動きが作られていく。ひとつ間違えると大ケガにつながりかねないとあって、キャストたちの横顔は真剣そのものだ。
また、この場を支配する緊張感を最大限に高めようと、北村&山田&鈴木&吉沢がセリフのタイミングを打ち合わせている様子も見られた。ときに和やかな笑い声をあげながらも、お互いに交わす眼差しからは、1つ1つのシーンに注ぐ熱量が存分に伝わってくる。カメラに映らない位置で、他のアクションシーンの練習なのか、キックの動きを入念にチェックしている北村の姿もあった。
撮影現場でキャスト同士が積極的に提案やアイデアを口に出し、コミュニケーションをとる姿を見て、やはり頭に浮かんでくるのは、北村の「みんなが、この作品になにかを賭けてくれていることを随所で感じて。お互いがそれに応えるように芝居で刺激し合うような現場でした」という言葉だ。他のキャストたちは、どのような思いだったのだろうか。
磯村「それぞれがいろいろな形で俳優というフィルターを通し戦ってきて集結した感じが、アベンジャーズのようにも見え、現場で共演するのが楽しみでした。各々色の違う武器を持っているので、一同が集結するシーンでは刺激のある現場だったと感じました」
鈴木「共演するキャストの方々を聞いたときは声を上げるほど驚きました。全員で同じ方向を向いて良い作品を作り上げていこうという空気感は本当に素晴らしかったですし、同世代が集まったからこそ生まれたものなのかなとも思いました」
なかでも、プライベートでも仲が良いという北村と磯村、山田と吉沢が、それぞれ親友役を演じているという点も見逃せない。お互いへの思いや、キャラクター同士の関係についても教えてもらった。
北村「タケミチにとってのヒーローはアッくんで、アッくんにとってのヒーローはタケミチで。未来がどう動こうが、揺るがないふたりの絆がたくさん描かれています。磯村くんとは3年前に共演してから、タケミチやアッくんに似た友情で繋がっていると思っていて。芝居だけじゃなくいろんな分野の話、今現在や展望、それこそくだらない話もたくさんしてきました。磯村くんが、『(タケミチ役が)匠海だから』と、アッくん役を引き受けていたと聞いて、本当に嬉しいです」
磯村「アッくんはいつもつるんでいるメンバー・溝高5人衆のなかでもアニキ的存在なので、特にタケミチのことは常に気にかけて愛おしい存在だったと思います。匠海とは特にコミュケーションを取らなかったのですが、大人になったふたりが再会するシーンでは、台本関係なしに、お互い同じタイミングで涙が出そうになってしまったことがありました。そのとき、もうタケミチとの関係は大丈夫だと実感しました」
タケミチ&アッくんに劣らない、他者が入りこむ余地のないほど強い絆で結ばれているのが、マイキー&ドラケンだ。
山田「僕と亮は、芝居のなかでセッションをするから、事前に話し合ったり、相談する必要がなかった。これは劇中でのマイキーとドラケンも同じだと思う。裏話としては、企画段階ぐらいの時に、『山田くんにドラケンをやって欲しい』という電話を亮からもらっていました」
吉沢「マイキーにとってドラケンは『東卍』のメンバーのなかでも一番信頼している、無くてはならない人物だと思います。山田くんのことは友人としても役者としても信頼しているので自然と良い関係性が出たと思います」
本作は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2度の中断を経て、当初45日の予定だった撮影期間は309日に及んだ。しかし、キャスト陣の覚悟は、そんな困難で揺らぐほどのものではなかった。北村は「現場の熱量と我々役者陣の思いがかなり強かったので、1年間誰も途切れることがなかったと思います。どんな時間が経ってもすぐタケミチに戻れました」と、言葉に熱をこめる。
同世代のキャスト全員が、特別な思い入れと熱をもって作り上げた作品。そんなチームワークと「時代を作りたい」という野心は、大切なものを背負った不良たちが全力でぶつかり合い、テッペンを目指す物語と見事に響き合っている。
「東京リベンジャーズ」は、7月9日に公開。
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