【ホラー映画コラム】「ジーパーズ・クリーパーズ」公開から20年経った今でも色褪せない、唯一無二の恐怖が味わえる逸品
2021年2月27日 22:00

Twitterのホラー界隈で知らぬ者はいない人間食べ食べカエル氏(@TABECHAUYO)によるホラー映画コラム「人間食べ食べカエル テラー小屋」では、“人喰いツイッタラー”が、ホラー映画専門の動画配信サービス「OSOREZONE」の配信中のオススメ作品を厳選し、その見どころを語り尽くす! 今回は、巨匠フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮を務めたホラー「ジーパーズ・クリーパーズ」をご紹介。
春休みの帰省のため、ダリー(ジャスティン・ロング)とトリッシュ(ジーナ・フィリップス)の姉弟は、車で田舎道を走っていた。そんな時、いきなり後ろから不気味なトラックが現れ、二人の乗る車を煽り始める!二人はパニックに陥るが、やがてトラックは離れて事なきを得る。その後、先ほどのトラックが教会に止まっているのを見つけた二人は、運転手が排水用のパイプに何かを捨てているのを目撃する。興味本位でその中を確かめてみると、目を疑うような恐ろしい光景が広がっていた……!

「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」等を手掛けた大巨匠フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮を務めたホラーである。物語は、田舎に帰省する途中の姉妹が、正体不明のトラックに襲われる「激突!」風の展開から始まる。この時点では、単純にヤバい人に狙われる系の内容かと思うが、トラックが停められた教会の地下を目撃するあたりから、段々と異常性が高まっていく。なんとそこには数え切れないほどの人の死体があった! しかも死体は全て縫い付けられている。それが壁を覆いつくしている。明らかに人間の仕業ではない。そう……犯人は人間ではなかったのだ!!
今更ネタバレもへったくれもないので普通に書いてしまうが、23年に1度蘇り、23日間にわたって人間を喰らい続ける恐るべき怪物クリーパーが、姉妹を煽った運転手の正体である。物語が後半に差し掛かると、サスペンス色の強かった前半から一転して、このクリーパーの大暴れが見どころになる。前半と後半でノリがまるで違う、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」を彷彿とさせるジャンルスイッチ的な展開が本作の持ち味となっている。前半は不穏極まりないサスペンススリラー、後半はモンスターパニックと、一粒で二度おいしい展開が楽しめるのが嬉しい。
そんな本作の一番の見どころは、やはりクリーパーだろう。真っ黒でぬめっている皮膚、大きく裂けた口の中で真っ白に輝く鋭い牙。その姿は正に悪魔だ。帽子を被り、不気味な笑みを浮かべるビジュアルは、一見「エルム街の悪夢」のフレディを思わせるが、この怪物はフレディと違って一切言葉を発さないため、意思の疎通が全く出来ない恐ろしさがある。その一方で、攫った人間の皮を剥ぎ、それを加工して飾り付けるような異常人間的な一面もある。とにかく最後まで底が計り知れないのがクリーパーの魅力だ。また、背中から大きな翼を生やして空を飛ぶのだが、その姿が物凄く格好いい。空から超スピードで滑空し、人をあっという間に攫ってしまう。クリーチャーと怪人の良いところ取りをした描写が素晴らしい。物語が進むにつれクリーパーの活躍度は増え、終盤では警察署を全滅させるほどの暴れっぷりを見せる。前半からは想像もつかない激しい展開に思わずテンションが上がる。怪奇色を維持しながらも、人知を超えた存在の活躍を余すことなく描き切ってくれる。
怪物の描写に相当な力が入れられているが、決して人間サイドがおざなりになっているわけではない。姉妹を始め、脇を固めるキャラまで個性豊かに描き分けがされている。メインの姉弟を演じる、ジャスティン・ロングとジーナ・フィリップスも見事な演技で応える。特にジャスティンの怯え演技は素晴らしい。観ているこちらも不安になるような表情で恐れおののく姿は、クリーパーの恐怖をより一層引き立てる。怪物が魅力的なだけでは成り立たない。それを恐れる人間がいてこそ、一級のホラーとなる。この映画はそれを忘れずに、襲われる側の人間にもしっかりと焦点を当てている。だからラストカットまでずっと怖いのだ。

本作は、観る者の不安を煽る語り口と秀逸な怪物の描写、悪夢的なビジュアルで多くのホラーファンを虜にした。公開されてから20年経った今でも色褪せない、唯一無二の恐怖が味わえる逸品だ。
余談だが、クリーパーはそのユニークな造形が人気を呼び、「ヒューマンキャッチャー」「リターン・オブ・ジーパーズ・クリーパーズ」という2本の続編も作られた。中でも特に「ヒューマンキャッチャー」はお気に入り。1作目と打って変わって序盤からクリーパーのヒューマンハントに全振りしたバトルホラーの傑作なので、あわせてオススメしたい。

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