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妹が兄に抱く恋心 矢崎仁司監督「三月のライオン」デジタルリマスター版が2月26日公開

2021年1月28日 22:00

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「三月のライオン」ポスター
「三月のライオン」ポスター
(C) Film bandets

ストロベリーショートケイクス」「風たちの午後」の矢崎仁司監督が1992年に手がけた長編第2作「三月のライオン」が、デジタルリマスター版で2月26日からリバイバル公開される。このほど新たな予告編と、矢崎監督のコメントが公開された。

兄に対する妹の恋心を繊細で詩的な映像表現で描き、映画評論家トニー・レインズに「ジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』以来の、近親相姦を描いた秀作」と絶賛された本作は、1991年のベルリン国際映画祭出品を皮切りに、メルボルン、バンクーバー、ロンドン、ロッテルダム、ヨーテボリ、ヘルシンキなど世界各国の映画祭で話題を呼び、92年にはベルギー王室主催ルイス・ブニュエル黄金時代」賞を受賞し、日本でも熱い支持を集めた。

兄に思いを寄せ、いつか彼の恋人になりたいと願う妹。ある日、兄が記憶喪失になる。妹は兄に、自分は恋人だと偽って病院から連れ出し、取り壊し間近のアパートで一緒に暮らし始める。

2021年2月26日、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、アップリンク京都ほか全国順次公開公開。

▼矢崎監督コメント
「映画館の暗闇を愛で満たすもの」矢崎仁司
すべての始まりは、パブリック・イメージ・リミテッド、PILのライブでした。
あの頃、日本映画に不満だった僕は、何かを壊したい衝動でいっぱいでした。あの夏、「This is not a love song」と歌うジョン・ライドンの声が心に刺さったまま、僕は「三月のライオン」のシナリオを書き始めました。恥ずかしいけれど第一稿のタイトルは「This is not a love story」でした。今まで観てきたラブ・ストーリーを壊そうと思いました。でもシナリオは一向に書けませんでした。
二年後の夏、僕は「風たちの午後」を持ってエジンバラ映画祭に行きました。そこでデレク・ジャーマンに出会いました。彼の映画は衝撃でした。僕の映画は、ある愛のカタチをスクリーンに閉じ込めて、灯りを消してみんなに観せるというもので、それが映画だと思っていました。デレクの映画は、彼の映画が上映される映画館の暗闇が愛でムンムンしていました。映写室からスクリーンまでの、バラバラな感情の履歴たちが、愛でむせかえる暗闇で僕は、こういう映画を作りたいと強く思いました。映画は愛のカタチを描くものじゃなくて、映画館の暗闇を愛で満たすものだ、とデレクに教えてもらった気がしました。
この二つの夏の体験がなければ「三月のライオン」は生まれなかったと思います。7年後、尊敬するルイス・ブニュエル監督の名前がついた賞を頂きました。その時一番嬉しかったことは、その賞の前年の受賞者がデレク・ジャーマンだったことでした。
あれから30年という歳月が流れ、愛や絆や言葉が感染拡散する世界の暗闇に、「三月のライオン」をもう一度映そうと、デジタルリマスター版を製作してくださったスタッフのみなさんに感謝します。僕も初心に帰り、「NOT」と問いつづけて新しい映画の可能性に挑み続けたいと思います。映画は、理解しなくていい、感じて欲しいという思いは今も変わりません。

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