【「幸福の黄色いハンカチ」評論】究極のネタバレ映画 それでも何度となく観てしまうロードムービーの代表作
2021年1月8日 16:00

見出し通り、日本映画史に残る究極のネタバレ映画である。「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」というタイトルに始まり、ポスターにいたっては何をかいわんや……、これだけで一目瞭然。無数の黄色いハンカチがはためくなか、主人公・島勇作に扮した高倉健さんが佇んでいるのだから。それでも、否、だからこそ多くの国民は今作を愛し、飽きることなく何度でも観るのだろう。
1977年10月1日に封切られた今作は、任侠映画のスターだった健さんを主演に迎え、刑期を終えて出所した男が、偶然出会った若いカップルに後押しされて妻のもとへ戻る姿を描いた、言わずと知れた感動作だ。健さん、倍賞千恵子のほか、銀幕デビューとなった武田鉄矢、桃井かおり、渥美清さんという豪華なアンサンブルキャストも大きな話題を呼び、第1回日本アカデミー賞をはじめ、その年の映画賞を総なめにしている。
「君よ憤怒の河を渉れ」「八甲田山」、そして今作に出演したことで、10年以上にわたり出演を続けてきた任侠映画のイメージから脱却することに成功した健さん。出所直後の勇作が、食堂で女性店員に注いでもらったグラスのビールを両手で包み込むように持って飲み干し、醤油ラーメンとかつ丼を頬張るシーンにまつわる逸話は、あまりにも有名だ。
本編で使用されているのはラーメンをすするくだりだけだが、山田監督からは一発でOKが出たという。出所後に初めて口にする冷えたビールと、湯気の立ち上るラーメンの意味するところを健さんが明確に理解していたからこそ、この撮影のために2日間何も食べずに現場に臨むことが出来たのだろう。
勇作と旅を共にするのは、失恋して自暴自棄になり退職金で購入した新車(真っ赤なファミリア)で北海道を旅する鉄也(武田)と、同様に失恋旅行で訪れた網走で鉄也にナンパされた朱美(桃井)。阿寒湖、陸別、帯広、新得と旅を続けるなか、光江(倍賞)が待つクライマックスをより効果的なものとするため、その道中は極力、黄色いものが映り込まないように配慮したという山田監督の演出の妙を味わいながら、今一度鑑賞するのも一興だ。
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