【独占取材】池松壮亮、コロナ禍で中国映画「1921」撮影に参加! 激動の2020年を振り返る
2020年12月30日 11:00
俳優の池松壮亮が、中国映画「1921(原題)」に出演していることがわかった。緊急事態宣言が発令され、自宅で過ごしていた頃にオファーを受けたという。30歳になった今年、チャン・リュル監督がメガホンをとる中国映画「柳川」、韓国のキャスト、スタッフとともにオール韓国ロケを敢行した石井裕也監督作「アジアの天使」とアジアでの活動が目立ってきた池松が、コロナ禍で中国へ渡り撮影に臨んだ真意を映画.comに語った。
“中国共産党100周年”を記念して製作された「1921(原題)」は、中国共産党成立前後の物語が中心に描かれる予定だが、具体的なストーリーは発表されていない。チェン・カイコー監督作「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」で詩人・白楽天を演じたホアン・シュアン、チャン・イーモウ監督作「金陵十三釵(原題)」(日本未公開)やNetflixオリジナルドラマ「鳳凰の飛翔」のニー・ニー、「三国志 司馬懿 軍師連盟」のジーン・オウ、大ヒットシリーズ「唐人街探案(原題)」のリウ・ハオランといった中華圏のスターが結集しているが、全貌は明らかになっておらず、池松の役どころも現時点で発表されていない。
「オファーをいただいたのが日本で緊急事態宣言が発令されて、家で自粛をしていた時期でした。8月~9月で、上海で撮影とのことで、あまりにもタイムリーだったので驚きました。聞けばどうしても来年公開しなければならない理由がこの映画にはありました。内容についてはまだお話出来ないので伏せますが、コロナによって世界がさらなる鎖国に追いやられ、分断と隔離、自国ファーストと孤立、もう脱グローバルに向かうしかないのかと議論されている最中でした。だからこそ今だと思えました。いつだって空はひとつで、映画をもってこの困難に立ち向かわなければならないと思いました。人間がグローバルを諦めることは不可能だと思います。目指すべきは、競争ではなく協力です。僕自身、これまで沢山の中国映画から影響を受けてきました。ワクチンやら歴史やら何やらで争わなければならないのならば、映画を持って手を繋ぎにいこうと思いました。トップクラスと言われる素晴らしいクルーに混ざって、沢山心の刺激と栄養を頂きました。完成を楽しみに待ちたいと同時に、日本の配給、配信会社が買ってくれることを願っています(笑)」
これまでの日常が、日常ではなくなる日々が、こんなにも長引くことになるとは誰も想像つかなかったはず。韓国で石井組の撮影をし、中国でも撮影を終えたいま、池松にとってどのような1年になったのだろうか。
「困難な一年でした。あと2~3年はこの状況が続くとも思います。悲しいことがありました。別れが多い一年でした。嬉しいこともありました。素晴らしい出会いがありました。困難を受け止めて、立ち止まざるをえない状況に置かれ、問答した結果、沢山の気づきがありました。忘れかけていた大事なことを思い出す時間にもなりました。過去と現在と未来を見渡すことが出来ました。これからも続けていきたいと思います」
2020年を「失われた1年」とするか否かは、それぞれの過ごし方によるものが大きいのではないだろうか。池松がこの1年、自らの目で見て、感じた光景について聞いてみた。
「失われていたのはむしろこれまでではないでしょうか。そのことがウイルスによって浮かび上がった、浮かび上がってくれたという方が正しいと思います。人類が目指してきた未来に、限界が来たんだと思います。いずれにせよ私たちが直面している敵はウイルスではなく、自分たち自身のうちなる憎しみ、強欲、無知であったことを世界が気づき始めていると思います。私たちは今、少しずつ大切なことに気づき始めているところなんだと思います。失ったものは勿論あります。人それぞれ、環境によって失ったものは様々です。その中でまだまだ辛く苦しい状況で長い間戦い続けている医療関係者の方々には頭が上がりません。間違いなく誰よりも現代のヒーローだと思います。ですから何とか、ひとりではなくみんなで協力して生き延びて、数年後振り返った時には、失われた1年ではなく、大いなる悟りの年にしなければならないと思います。その為にはここからあらゆることを見直し、修正していかなければなりません。決して、立ち止まり自粛を強いられただけの1年にしてはならないと思います。でなければ必ずこの先、更なる脅威に自分たちが立ち向かわなければならないことは目に見えています」
打撃を受けなかった業界はないなかで、映画業界も大きな打撃を受け、全国の映画館は休業を余儀なくされた。それでも良質な映画は生まれ、配信プラットフォームも多くの新作を発表した。池松にとっていま、映画館はどのような存在になっているのか……。
「僕は映画館が大好きです。空間としても映画を見つめる場所としても大好きです。ある意味、英知の恩恵を受けていると思います。人々の楽しむ場所として、思考する場所として、想いを馳せる場所として、素晴らしい環境だと思います。だからこそ競争に巻き込まれ、作品性ではなく、どんな映画をかければより多くの人が見に来てお金を稼ぐことが出来るかを第一に考えなければいけなくなりました。制作現場と同じです。映画を心から愛していた人はいなくなり、新しい顧客を次から次へと探さなければならなくなりました。その結果映画が壊れた。より良い映画が生まれる環境がどんどん失われていきました。子供向け、ティーン向け、主婦向けの娯楽映画が量産され、その他は映画館にかけられなくなっていきました」
「そこで配信という新たな救い手が出てきました。アメリカの状況を見ているとよく分かりますが、マーベルのような映画しか映画館の存続を支えられなくなった結果、Netflixがより多様な作品性を死守する場となりました。配信とは、ある意味映画が生き残るための進化です。ですから僕は配信に対してネガティブな感情はそもそもありませんでした。ミニシアターという呼び方すら僕は嫌いなのですが、民主主義を押し進めてきたこの多様性の時代に、映画館という場所が多様性を受け止められる場所ではなくなってきたことは、映画をやっている人間からすると辛く悲しいことです。ですが僕たちがこれから映画館に出来る唯一のことは、劇場映画であれ配信映画であれ、良い映画を作って見たいと思ってもらうこと、その上でこの映画は大きなスクリーンで、映画館で見たかったなと思ってもらうこと。それしかないと思っています」
「いずれにせよあらゆるピンチは好機でもあります。言われたように、本当に良質な映画というのは歴史上不遇の時代に生まれます。その痛みから、分かち合い共感できる物語がそこに生まれるからです。きっと映画は少しずつ良くなっていくと思います。他人任せではなく、自ら変革を望んでこれからもやっていきたいと思っています」
では、池松は21年を迎えるに当たって何を見据え、どこに向かっていこうとしているのか。意図的に取り組もうとしていること、克服しようとしていること、向き合うとしていることを聞いてみると……。
「何にせよ新しい一年が始まります。暗いトンネルから出口に向かって歩んでいく時です。たゆまずに、時には助け合いながら、自らの足で一歩一歩歩んでゆくしかないと思っています。具体的にはどういう1年になるのか分かりません。一年前、想像もしていなかったことがこの一年で沢山起こりました。新しいビジョンを突き進むことは、過去を断ち切ることでは決してありません。過去の学びを教訓にして、これからの未来を見据え、目の前にフォーカスしていくつもりです。決まっている作品にアップデートした自分自身で力を注いできたいと思っています。とてもワクワクしています。少なくとも今は、この世界にはまだ闘うに足る価値、生きるべき価値があるんだと言うこと。面白いのはこれからだと語るべきが、自分たち映画がやらなければいけないことだと思っています。そのことに取り組むために、日々を過ごしていくつもりです」
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