【「バック・トゥ・ザ・フューチャー」評論】35年を経た今でも容易には越えられない、エンタメの“ワールドレコード”

2020年11月15日 06:00


公開から35年!
公開から35年!

タイムトラベル映画の金字塔にして最強の青春コメディ、そして奇妙なバディムービーでもある「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(以下「BTTF」)が35周年を迎えた。「BTTF」はは主人公のマーティとドクが1985年から30年前に行くお話で、続編の「Part2」は1985年から30年後に行くお話だから、われわれはもはや「BTTF」基準でかなりの未来に暮らしていることになる。

しかし、だ。世界の映画ファンを魅了した「BTTF」の面白さは、2020年の今も(ほぼ)100%有効なのである。マイケル・J・フォックスが演じたマーティの陽性なお気楽さも、複雑な伏線を回収してクライマックスを盛り上げる職人技も、タイムマシンのデロリアンが時空を超えた後に二筋の炎が残されるビジュアルのカッコよさも、興奮を掻き立てるアラン・シルヴェストリの音楽もいささかも古びていない。

つまり監督のロバート・ゼメキスと脚本家のボブ・ゲイルが押し上げたエンタメのハードルは、今でも容易には越えられないワールドレコードなのである。今年の6月にはコロナ禍の最中に「BTTF」三部作が地上波でテレビ放送されたので、若い世代で初めてその凄さに触れたという人も多かったはずだ。

ただ、時代の流れとともに、完璧と思われた第一作にもいくつか問題点が指摘されるようになった。一例を挙げると「白人のマーティが黒人ミュージシャンであるチャック・ベリーに彼のヒット曲「ジョニー・B・グッド」を教えるというネタは文化の盗用ではないか?」といった批判である。

個人的には、当時は問題にならなかった指摘だからといって、今も無視していいとは思わない。ただ、そういった批判を踏まえて観直しても、エモーショナルな映画体験が損なわれたりはしない。小ネタ満載の作品ながら、核にあるのは魅力的なキャラクターとストーリーである証拠だと思っている。

ちなみ「BTTF」一作目の35年前に日本で公開されていたのは、黒澤明の「羅生門」やデ・シーカの「自転車泥棒」といった歴史遺産的な古典たちで、「BTTF」までの35年間に、いかに映画表現が発展したのかがわかる。そしてさらに35年を経た今、「BTTF」と同じレベルのドラスティックな変化が映画界に起きたと言えるだろうか? そんなことを確認するためにも、35周年をきっかけに見直してみてはいかがだろうか。

(村山章)

Amazonで今すぐ購入

DVD・ブルーレイ

Powered by価格.com

関連ニュース

映画ニュースアクセスランキング

本日

  1. 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」出演俳優たちが印税請求

    1

    「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」出演俳優たちが印税請求

    2024年4月24日 11:00
  2. 渋谷凪咲、ホラーで映画初主演! 「ミンナのウタ」のDNAを引き継ぐ清水崇監督作「あのコはだぁれ?」7月19日公開

    2

    渋谷凪咲、ホラーで映画初主演! 「ミンナのウタ」のDNAを引き継ぐ清水崇監督作「あのコはだぁれ?」7月19日公開

    2024年4月24日 04:00
  3. 「傲慢と善良」藤ヶ谷太輔&奈緒が主演! 辻村深月のベストセラーを映画化 監督は萩原健太郎

    3

    「傲慢と善良」藤ヶ谷太輔&奈緒が主演! 辻村深月のベストセラーを映画化 監督は萩原健太郎

    2024年4月24日 07:00
  4. 大友克洋「MEMORIES」初DCP化、4月26日からホワイトシネクイントでリバイバル上映開始

    4

    大友克洋「MEMORIES」初DCP化、4月26日からホワイトシネクイントでリバイバル上映開始

    2024年4月24日 09:00
  5. 田中圭、山下智久と9年ぶりの共演!「ブルーモーメント」に主人公の幼なじみ役でサプライズ登場

    5

    田中圭、山下智久と9年ぶりの共演!「ブルーモーメント」に主人公の幼なじみ役でサプライズ登場

    2024年4月24日 22:02

今週