のん、「ここしかないんだ」と語る女優業への決意 大九明子監督は「不要不急ではない」映画製作への思いを吐露
2020年11月9日 22:33
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女優・のんが主演し、林遣都と初共演を果たした映画「私をくいとめて」が、第33回東京国際映画祭の観客賞を受賞した。第30回の同映画祭で観客賞を獲得した「勝手にふるえてろ」に続き、大九明子監督と芥川賞作家・綿矢りさ氏が再タッグを組み、2度目の栄誉。11月9日、東京・EXシアター六本木で行われた会見に、のんと大九監督が登壇した。
今年新設された「TOKYOプレミア2020」32作品の中から、観客の投票で決定する観客賞。その栄誉に輝いた「私をくいとめて」は、おひとりさまライフを満喫する31歳の女性・黒田みつ子(のん)が、“脳内の相談役”とともに年下男子・多田くん(林)との恋に挑む“崖っぷちロマンス”だ。受賞の知らせを聞いた時は「大興奮」だったというのんが、映画や女優業への思いを明かした。
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「私は本当に女優のお仕事が大好きで、ここに一生いたいと思っているんです。10代の時に、『私は女優をやっていなかったら、何をやっていたんだろう?』とふと考えたら、何も思い浮かばなくて……。実家にいる妹に電話して聞いてみたら、『そのへんで野たれ死んでいると思う』と言われて(笑)、『この道があって良かった』と、すごい腑に落ちてしまいました。女優の仕事は私の生きる術だと思いました。それまでも(仕事が)大好きで、ここで生きていきたいと思っていたんですが、『ここしかないんだ』と気持ちが固まりました。映像の作品づくり全般は、本当にたくさんの人が集まって、それぞれの技術や脳みそをもって、その中に私も役者として一員に加わって、皆でひとつの画面を作り上げていく。1点集中で、たくさんの人の思考が同じところに向かっていく感覚がたまらない現場です」
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大九監督は、「年齢不詳な感じがあり、チャーミングでありながら、皆さんの会社のどこかの部署でもひっそり働いていそうな魅力がある、のんさんがいいなと思いました。隣にいて、こんなことを言うのは照れちゃいますけど(笑)」と、のんに賛辞をおくる。「特に『この世界の片隅に』の表現力を見て、ご一緒したいという欲望がすごく高まりました」と振り返った。
コロナ禍により、フィジカルな上映と、オンラインでの配信を並立させながら運営された、今年の東京国際映画祭。4月にクランクアップ予定だった本作も、約2カ月の撮影中断を余儀なくされた。大九監督は「東京都の緊急事態宣言の下、“不要不急”という言葉が飛び交いましたが、映画は不要でも不休でもないと信じたいので、これからも各制作者が細心の注意を払いながら、作り続けていくべきだと思います」と訴える。
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今年の公式上映作品における女性監督作品の割合は、16.7%(138本中23本)だった。撮影現場で男性スタッフから「この組は女性が多いな」と言われる度に、「地球のバランスで言ったらまだまだです」と言い続けていたという大九監督。自身が「今回は女性の監督にお願いしたいと思って……」という形でオファーされることが多かったと述懐し、「もちろん性別、国、育ちなどが環境を与えて、監督にものを作らせていると思うので、そういうお声掛けを頂くことは間違いではないと思っていました。それどころか、女であるというだけで、個性のひとつのように言われるなんて有利だなと思っていました。でも、その考えも数年で終わり、段々腹が立ってきました。私は女の人生しか送っていないから、女としてのものしか作れないかもしれないけど、『それ、男の監督に言いますか?』という言葉が、常套句ですが、浮かぶようになりました」と胸中を吐露する。
しかし、大九監督が女性ゆえの不公平さを味わった時に、自身を導いてくれたのは、全て女性だったという。「商業映画1本目(『恋するマドリ』)を撮らせてくれた、松田広子さんというプロデューサーも女性です。私はこれからも、女性の後輩にはうんと優しく、たまには厳しく照らしていける、そんな大人になりたいなと思います」と、決意をみなぎらせた。
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