「Malu 夢路」エドモンド・ヨウ監督が語る 水原希子&永瀬正敏が出演
2020年11月9日 04:00

ホンとランは母の死をきっかけに再会するが、その死は各自に重くのしかかり、子ども時代のような仲良しに戻れない。ある日、かつて暮らした海辺の街を訪ねたホンは1本の電話をもらい、マレーシアから日本へ飛ぶ。姉妹の現在と過去を点描風につなぎ、徐々に物語が立ち現れる一作で、母の死を引きずるホンと、そこから逃れるように幸福を求めたランの人生が、関わった人々の証言や幻想を交えて描かれる。マレーシアの女優陣を水原希子、永瀬正敏がサポートし、音楽に細野晴臣をしたがえたエドモンド・ヨウの最新作。14日間の検疫期間を終えて、東京の土を踏んだ監督に話を聞いた。(取材・文/赤塚成人)
ヨウ監督:「破裂するドリアンの記憶」(14)は政治や社会に不満が強かった時期の作品であり、「アケラット-ロヒンギャの祈り」(17/ TIFF最優秀監督賞を受賞)では当時世界を揺るがした難民問題を扱いましたが、今回は心の問題を描きたいと思いました。
ヨウ監督:姉のホンは家族と円満な関係を結びたかったのに、気付いたときにはすでに遅くて、自らが否定してきた過去にずっと囚われています。一方、妹のランは若い世代のマレー人の象徴でもあるのですが、過去を切り捨てて日本へ移住してしまう。こうした、各人が抱える心理の根源を示すタームとして“Malu”を選びました。
ヨウ監督:私は常に、人物が変化することで生まれる関係性の力学を見せようとしてきました。最初、ホンは冷淡で妹のランは無口ですが、ランは日本に来て生き生きと輝き、ホンは罪悪感や恥辱の意識を募らせていく。ふたりの相反する感情を際立たせました。
ヨウ監督:正直かなり影響を受けています。撮影監督のコン(・パーフラック)さんもベルイマンが好きで、一緒に早稲田で学んでいたときに論文を書いていたくらいです(笑)。

ヨウ監督:構成については10代の頃、作家になりたいと思っていたことと関係があるのかもしれません。ひとつの話でも実験的、挑戦的に異なる事柄を加えるのが好みです。
ヨウ監督:最初は15分ワンテイクの予定でしたが、残念なことに中程で切っています。過去と現在、現実と夢が交錯するショットは、ギリシャのテオ・アンゲロプロス監督の影響を受けているかもしれません。このシーンは民泊の賃貸アパートを借りて撮影したのですが、レールを引いて360度撮影できるようにして、セットは動かさずカメラだけを動かしました。カメラが回り込むにつれ、スタッフはセットの影に隠れて、映り込まないようにしていました。
ヨウ監督:マレーシアでも中国でも、日本のように住宅街に墓地があるというのはまずあり得ない。中華圏では、墓地が傍にあると生命活動の邪魔になる、悪霊がいて怖いと感じるのが一般的です。そうした意識の違いをランの言葉としてジュンに語らせました。
ヨウ監督:そうですね。映画の中盤で、母親は「死んでも離れることはない」と言います。このセリフに象徴される希望をラストに込めました。
メイジュン・タンは古い知り合いで、「ドリアン」にも出演しています。当時からプロデューサー志望で、本作で念願の初プロデュースを果たしていますが、演技も達者なのでホン役を演じてもらいました。セオリン・セオも「ドリアン」のオーディションに来てくれた人で、当時は年齢が若すぎて役に合いませんでしたが、メイジュンがセオリンの名を挙げて、昔オーディションしたことを思い出し、彼女にお願いしました。
ヨウ監督:希子さんは一度見たら忘れられない存在感がある女優です。彼女が登場するとスクリーンが華やぐことから出演をお願いしました。永瀬さんは凄く多彩な演技ができる方で、多くの海外作品にも出演しているので憧れがありました。あの役は悪人か善人か意外性を持たせなければならない。これはもう彼しかいないと思いました。
ヨウ監督:日本側でプロデューサーである飯田(雅裕)さんが、細野さんのドキュメンタリー「NO SMOKING ノースモーキング」(19)も担当しており、相談したら「聞いてみようか」と言われ、レジェンドですが白羽の矢を立てました。細野さんの音楽が素敵で、完成したいまも曲が聴きたくなって、たまに見直したりしています。
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