深田晃司監督「よこがお」で意識したのは「落差」 “犬化”した筒井真理子の解釈は?
2020年11月7日 18:23
不条理な現実に巻き込まれたひとりの善良な女性の絶望と希望を描いたサスペンス。主人公・市子役を筒井が演じるほか、市川実日子、池松壮亮、吹越満らが脇を固めている。MCを務めた安藤紘平氏の「物語の始まり方が“筒井さんありき”」という言葉を受けた深田監督は、「『淵に立つ』で初めて仕事をさせていただいて、再び『がっつりやりたい』と思っていたんです。監督としては有難いことに、脚本が出来上がる前にオファーを引き受けていただき、自由に書くことができました。筒井さんに演じてもらうことがわかっていたので、演技のレンジをかなり広げることができましたし、結構無茶させているんです」と明かした。
「犬と化した市子」という印象的なシーンについて、筒井は「実際やってみると、かなりハードワーク」と述懐。深田監督は「四足歩行のギネス記録を持っている方にトレーニングしてもらっています。その方でさえ体への負担が大きかった」と補足していた。同シーンの解釈については「夢のシーンなので解釈は自由というのが大前提。自分なりの解釈としては、市子は人間としての社会的な属性がどんどんと剥ぎ取られていく。人間は社会的な存在であると同時に、半分は動物。前半部分で“動物のようになっている”というイメージを残しておきたかった」と意図を説明していた。
台本にユリの花を描き、その散り具合によって、市子の疲弊度を把握していた筒井。クライマックスにおけるサイドミラーの“顔”について問われると「撮影直前、台本をバーッと読み返してから、本番に臨んでいました。市子として経過してきた時間を、頭の中でぎゅっと凝縮させていたんです」と告白。「監督と会話をしながらすり合わせていったのが、市子の持っている人間らしい弱さ、ずるさをどれだけ投影するかというもの。あまり多くすると、お客さんが感情移入できないんじゃないかなと考えていましたが……深田さんの作品なので、そちらの道を選んだんです」と語っていた。
「市子の印象が異なる過去と現在が入り混じった構成。演出は大変だったのでは?」という意見に対して、深田監督は「筒井さんと作り上げたものではありますが、監督としてコントロールした部分もあります」と説明。「『もしかしたら双子なのでは?』と思わせるほど、15~20分くらいは、お客さんが混乱しながら見るような落差を意識しています。ただし『大女優のように全く違う人物になる』という絵空事にはならないように注意していました。あくまで過去からの地続き。どこかで無理をしていて、空回りをしている。キャッチコピーの『ささやかな復讐』が表すように、他愛もない、意味のない復讐なんです。お客さんは混乱する程度に(印象が)異なるんですが、きちんとつながっている。そういうさじ加減になるといいなと思っていました」と話していた。
第33回東京国際映画祭は、11月9日まで開催。
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