コロナ禍の上海国際映画祭で日本映画が満席続出 課題は「海外への情報発信」

2020年8月30日 12:30

7月25日~8月2日に開催された第23回上海国際映画祭
7月25日~8月2日に開催された第23回上海国際映画祭

[映画.com ニュース] 7月25日~8月2日に開催された第23回上海国際映画祭。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けながらも、フィジカルな開催にこだわり、今年は57本の日本映画を中国の映画ファンに披露した。その作品選定に関わったのは、映画.comのコラム「どうなってるの? 中国映画市場」の執筆者・徐昊辰(じょ・こうしん)氏。プログラミング・アドバイザーとしての立場から、今回の映画祭を振り返ってもらった。

第23回上海国際映画祭は、当初、6月の開催を予定していたが、4月上旬に延期を発表。主な理由は、国外のコロナ感染拡大によって、海外ゲストの招致が困難だったというもの。「映画祭は上映だけでなく、国際交流への取り組みも重要なポイント。中国映画市場も停止していたため、映画祭を通じて『復活したい』という思いがあった」という。6月中旬には、7月下旬~8月上旬の開催を予定していたが、北京の“新型コロナ第二波”とも言える状況を受け、動きがストップ。しかし、既に「映画業界の限界」も近づいていたため、7月20日の映画館再開を契機に、7月25日からのスピード開催を実現させた。

第23回上海国際映画祭のポスター
第23回上海国際映画祭のポスター

劇場での上映には「映画館への支援」「落ち込む映画業界の活性化」という願いを込めたようだが、世界中の映画祭で取り組まれているオンライン開催は考えなかったのだろうか。実は、そこに中国ならではの特殊な事情が絡んでくる。「オンライン開催の場合は、検閲のルートが異なるので、一からやり直さないといけないんです。それに違法コピーを恐れて、出品NGとなる作品も出てくる。そのような要素が絡み合っているので、オンライン開催は映画祭のイメージとは程遠いんです」という理由もあり、フィジカルな開催という方針を貫いた。

映画祭の様子
映画祭の様子

今回は、108の国と地域から3639作品の応募があり、上映されたのは322本(中国映画:35本)。29館で1146回の上映が行われ、観客数は14万7502人を記録。147回の野外上映も実施し、1万3570人を動員している。なお、コロナ対策に関しては「着席率30%以下」「1スクリーン:1日最大4回の上映まで」に加え、消毒、上映時のマスク着用を徹底し、37度を入場の上限とする検温を行った。チケットは、「アリババ」でのオンライン販売のみ。購入時には詳細な個人情報を入力するため、「感染者の追跡」「転売の防止」にも効果を発揮できる。

映画祭の様子
映画祭の様子

徐氏が担当した日本のほか、ヨーロッパ、韓国、北米など、各国の映画事情に長けているプログラミング・アドバイザーが作品をチョイスするのだが、提案先となるディレクターは“政府の代弁者”の意味合いが強い。「政治的に上映可能か」という判断が加わり、コンペ部門では国の検閲を通過させなくてはならないようだ。今回の選定にあたり、約130本程を鑑賞した徐氏は「日本映画は、毎年50~60本を上映しており、その内40本ほどが新作。話題作、受賞作を中心に選びましたが、上海国際映画祭は興行収入を重視する傾向も。中国でのヒットを念頭にしているんです」と説明する。

コロナ禍は例年の“お祭り感”を消失させていた。海外ゲストの登壇は最後まで叶わず、審査員の招致も困難となり、賞の授与が不可能に(各部門に入選した作品を「公式セレクション」として発表)。ジャ・ジャンクー監督、是枝裕和監督、河瀬直美監督らが参加した「マスタークラス」は行われたが、オープニングセレモニー、レッドカーペット、舞台挨拶、クロージングセレモニーといったイベントがすべて中止。「お祭りの雰囲気がなかったので、メディアも記事にしにくい。あっという間に終わった印象を受けた」という。その一方で、日本映画への反響は、例年通り大きかったようだ。

徐昊辰氏
徐昊辰氏

ワールド・プレミア、もしくはインターナショナル・プレミアが条件となるGALA部門では「コンフィデンスマンJP プリンセス編」「みをつくし料理帖」を上映。両作ともに満席となったが「『コンフィデンスマンJP プリンセス編』は、最も早くチケットが売り切れた作品」と人気の高さを示していた。

徐氏「日本映画のチケットは、ほぼ売り切れでした。特筆すべきは、若年層のファンについてです。旧作映画は、年配層ではなく、若者に人気があります。『楢山節考(1958)』『砂の器』などの松竹映画100周年記念作品、若尾文子主演作『しとやかな獣』『刺青(1966)』4Kデジタルリマスター版を上映したのですが、どの作品も若者たちが絶賛していました。映画祭全体の客層も、30代以下が8割。韓国も同様ですが、若者たちの旧作への興味が尽きないんです」

「コンフィデンスマンJP プリンセス編」
「コンフィデンスマンJP プリンセス編」

日本映画に対する盛況ぶりは、今回に限らず、例年通りの光景だ。「(中国国内での)日本映画への関心は、ハリウッド映画への関心よりも高いと感じています」と話す徐氏だが、「日本映画が、この状況を活用できていない」という懸念も抱いている。「映画祭での上映、舞台挨拶で一時期的に認知度は上がりますが……それは、結局その一瞬だけ。2週間後には忘れ去られている。海外への情報発信は継続的に行っていくべきです」と提言する。

徐氏「例えば、日本公開時の反響でも良いと思います。中国のネットにもそのような情報は出回っていますが、それは中国の“日本映画ファン”が、国外媒体の情報をチェックして発信しているだけ。彼らが発見しない限り、作品への熱はどんどん冷めていく。それは作品にとって非常に勿体ないことです」

しかし、中国での一般公開が決まっていない状況での宣伝・情報発信は、徒労に終わるのではないか。その疑問に、徐氏は持論を述べてみせる。

徐氏「作品のライセンスが決まらなければ、国外への宣伝はしない――この意識を変えていくべきだと思っています。まずは、海外に作品の存在を知らせていくべきではないでしょうか。アピールを継続していけば、バイヤーの目に留まって、そこから契約へと発展する可能性もあります。周知を充分に行えば、一般公開時の成績も向上するはず。ハリウッド映画の場合、日本公開が決まっていなくても、海外からの情報が出回れば、ずっと気になり続けますよね? 公開が決まれば『待ってました!』という感覚を抱くはずです。中国では、1本の日本映画の鑑賞をきっかけに“日本映画全体に興味を示す”パターンが多い。日本映画というジャンルは、中国人にとってまだまだ未知の領域なんです」

(映画.com速報)

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