32歳で命を絶った“非正規歌人”の歌集「滑走路」が映画化! 主演は水川あさみ
2020年3月25日 06:00
17歳の秋、俵万智のサイン会に参加したことをきっかけに短歌を始めた萩原氏。いじめや非正規雇用など、自らの経験をテーマに短歌を発表し続け、第31回朝日歌壇賞をはじめ、多くの短歌大会において入賞を果たしたが、17年6月8日に32歳の若さで亡くなった。「滑走路」は、初歌集であり遺作となった作品。新聞やテレビでも次々と取り上げられ、初版500部、自費出版がメインの歌集において、累計8刷、3万500部と異例のヒットを記録。萩原氏が亡くなる1カ月前、編集部に提出された歌集のあとがきには「短歌はぼくのこころの叫びを受け止めてくれる器であったことは、間違いない」と記されている。
脚本を手掛けたのは、ドラマ「やめるときも、すこやかなるときも」が話題となり、劇場アニメ「ジョゼと虎と魚たち」(今夏公開)も控える桑村さや香。「マチネの終わりに」をはじめとした西谷弘監督作品、「シン・ゴジラ」など数多くの作品で名助監督として活躍する大庭功睦がメガホンをとっている。若き俊英がタッグを組んで生まれたオリジナルストーリーは、非正規、いじめ、過労、キャリア、自死、家族の問題に悩まされる若者たちが、不安や葛藤を抱えながらも、希望を求めて生きる姿を描き出している。
厚生労働省で働く若手官僚・鷹野は、激務の中で仕事への理想も失い無力な自分に思い悩んでいた。ある日、陳情に来たNPO 団体から非正規雇用が原因で自死したとされる人々のリストを持ち込まれ、追及を受けてしまう。やがて、そのリストの中から自分と同じ25歳で自死した青年に関心を抱いた鷹野は、死の理由を調べ始める。
30代後半に差し掛かり、将来への不安を抱える切り絵作家・翠を演じる水川は「萩原さんの短歌は読む人の心にそっと寄り添いながらも包み込み、心に響くエールをくれるなと思いました。映画では、それぞれの人生が交差し行き交いながら葛藤し決断し立ち止まり、前に進む姿は誰しもの背中を押してくれる作品になったのではないかと思っています」と説明。鷹野役の浅香、学級委員長役の寄川は「多くの人がなにかと生きづらさをどこかで覚えるこの時代に、ささやかな希望を見出せる、止まり木の様な作品だと思いました」(浅香)、「大切なものを守ること、それを貫くことで自分が辛い状況になっていく。そこから逃れたいけれど、人を傷つけたくない。前を向いて歩いていくんだ。この一つ一つの思いを大切に演じ、そして僕自身葛藤もしました」(寄川)と語っている。
現在、撮影を終え、編集作業を行っている「滑走路」。大庭監督は「桑村さんとの脚本作り、また、撮影の現場において常に心がけていたのは、萩原さんの『繊細な感受性、優しい眼差し』を失わないことです」と述懐。、原作者・萩原氏の両親と弟・萩原健也氏は「慎一郎が空を飛ぶための翼になると願った三十一文字が、皆様の心に届きますように祈っております」(両親)、「兄は文学史に名を刻んでゆくと僕は確信しています。映画となる今こそ、萩原慎一郎の真骨頂を見せる時です」(健也氏)とコメントを寄せている。
「滑走路」は、今秋に全国公開。
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