精神科医・星野概念が解説!A24新作「WAVES」は「自著よりも心に効く」
2020年3月19日 18:00
[映画.com ニュース] 「ムーンライト」「レディ・バード」「ミッドサマー」など次々と話題作を発表する新進気鋭のスタジオA24の最新作「WAVES ウェイブス」のトークイベントが3月18日、都内で行われ、精神科医の星野概念氏が登壇。1月に鑑賞して以来、本作に抱いていたあふれる思いを熱弁した。
ある夜を境に幸せな日常を失ったタイラー(ケルビン・ハリソン・Jr.)とエミリー(テイラー・ラッセル)兄妹の姿を通し、青春の挫折、恋愛、親子問題、家族の絆といった普遍的なテーマを描く。
星野氏は「ジョーカー」「パラサイト 半地下の家族」などのタイトルを挙げて「どれも胸にくる映画ではあるんですけど、少し納得いかない部分もあって。絶望で終わっている気がして、それでも生きている自分たちは、どうしたらいいんだ…と苦しくなってしまったんです。精神科医という仕事柄、人に寄り添う仕事なので、見た人たちがどんな感想を頭で描くのか想像する癖があるんですが、前述した映画の感想を想像しても、なかなかハッピーな世界が描けなかったんです」と告白。
そんなときに出合ったのが本作だといい、「タイラーがとある事件を起こしてしまい、その後家族の歯車が合わなくなって、どうにも拭うことができない重さをみんな心に抱えながら家族は生きていくことになって、あそこで映画が終わっていたら、どうなってしまうんだろうと思いました」と2部構成の前半部分について触れる。
続けて、「ただそこで終るのではなく、この作品はタイラーの妹のエミリーがルークと出会い少しずつ心を開いていき、そして家族の関係も和らいでいくというのが、簡単には解決しないけれども年月をかけて光が差していく様が丁寧に綴られていたのが素晴らしかったです。希望が感じられました」と後半パートへの思いを語る。
最後に、「誰もが生きていく中でつらい時期もあるでしょう。でも、その先に小さな光や希望があるかもしれないと思うのです。本作を見て、そんなことをものすごく感じ、僕自身も明るくなれました」と改めて感想を伝えると、「小さな光、小さな希望も、個人にとっては大きな光、大きな希望です! 自分の著作よりもこの映画を読んだ方が、心に効く」と笑いながら、力強い言葉で締めくくった。
前日の3月17日にもイベントが行われ、文筆家の長谷川町蔵氏、映画ライターの立田敦子氏が登壇。31もの楽曲が使用され、音楽面でも注目される本作について、長谷川氏は「もはやライブに行っているかのような感覚。これは体験する映画だと思います」と魅力を語っていた。
「WAVES ウェイブス」は4月10日から全国公開。