劇場公開日 2020年7月10日

WAVES ウェイブス : 特集

2020年6月29日更新

“一生に一度の傑作”
31の曲が一つの物語を紡ぐ、ミュージカルを超えたプレイリスト・ムービー
躍動するサウンド、息をのむ美しい映像、心揺さぶられるストーリー この135分は、映画史を塗り替える――

画像1

「ムーンライト」「ミッドサマー」など、話題作を続々と世に放つ気鋭のスタジオ「A24」。芸術性と娯楽性を高い次元で両立し、見る者の“言葉にはできない感情”を繊細に刺激する作風で知られている。

世界中の映画ファンが待ち望むA24の新作が、7月10日に日本公開を迎える。タイトルは「WAVES ウェイブス」。ジャンルは“プレイリスト・ムービー”だ。31の音楽が躍動し、ひとつの物語を紡ぐ。メロディや歌詞がドラマとシンクロし、登場人物の心の声を観客に伝える。

ある海外メディアは“一生に一度の傑作”と呼んだ。私たちの切なる願いは、この記事を読むあなたが、この映画を“感じる”ことである。


【予告編】今を生きよう 傷ついた今日も癒えない明日も、愛の波が洗い流す

誰かの痛みに寄り添うことは、きっと、とても素敵なことだと思う
「A24」の新作は、音楽と色彩と革新性に満ちた“兄妹の物語”

画像2

主人公は、ある夜を境に幸せな日常を失った兄と妹。描かれるのは、傷ついた若者たちが、再び愛を信じて生きる希望の物語だ。


・音楽と色彩を浴びる、想像を超えた新しい映画体験

グラミー賞受賞の豪華アーティストたちによる、今を映し出す31の楽曲。それらが混ざり合い、ひとつのストーリーを紡いでいく。

映画のいたるところで音楽が鳴り響き、登場人物の感情に寄り添う。あるシーンでは歌詞がセリフのように彼らの心の声を伝える。ミュージカルとは一線を画す、“プレイリスト・ムービー”が誕生した。

画像3

なかでもフランク・オーシャンの楽曲が妹の物語と、カニエ・ウエストの楽曲が兄の物語とリンクし、輝く。マジックアワーの海岸線、宿命的に空にかかる虹などのモチーフが画面をエモーショナルに彩る。躍動する音楽、息を飲むほどの美しい色彩が見る者の頭上から降り注ぎ、感情を何倍にも膨れ上がらせていく。

そうして、劇場に入る前には想像もしていなかった、全く新しい映画体験がもたらされるのだ。

メガホンをとったのは、“猜疑心”と“ふたつの家族”をテーマにした心理スリラー「イット・カムズ・アット・ナイト」の俊英トレイ・エドワード・シュルツ監督、31歳。今回の製作手法はユニークで興味深い。物語に合わせた楽曲を選定するのではなく、楽曲から得たインスピレーションをもとに脚本を執筆しているのだ。

本作の主役とも呼べる“音楽”。「ナイン・インチ・ネイルズ」のリーダーとしてグラミー賞に輝き、映画「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー賞作曲賞も受賞している、トレント・レズナーがオリジナル・スコアを手掛けている点も見逃せない。ちなみにレズナーは、ディズニー/ピクサーの新作「ソウルフル・ワールド」にも参加している。

画像4

・幸福な日常を失った兄妹の“希望と再生の物語” 感動と悲哀と希望が波打つ135分

フロリダの高校生タイラーは、成績優秀でレスリング部のスター選手。美しい恋人もいる。厳格な父親との間に距離を感じながらも、裕福な家庭で何不自由のない生活を送っていた。しかし肩の負傷が発覚し、医師から試合に出ることを禁じられる。

さらに追い打ちをかけるかのような出来事……。狂い始めた人生の歯車に翻弄され、タイラーは堕ちていく。そして、決定的な悲劇が起こる。

画像5

1年後、兄の悲劇により心を閉ざしていた妹エミリーの前に、同級生のルーク(演じるルーカス・ヘッジズがとにかく良い!)が現れる。彼はエミリーのすべての事情を知りつつ、好意を寄せていた。2人は傷ついた心をいたわるように、やがて恋に落ちていく。

青春の挫折。恋人と出会いと別れ。哀切と希望と再生。誰かの靴を履いてみること。心の奥底に沈殿している感情を優しく掘り起こし、それらに“名前”をつけてくれるような物語。

自身の胸に眠る“10代のころの自分”が、こちらを見つめ返してくるように感じ、ちくりと胸の疼きを覚える。こんなに大切な感情が、自分に宿っていたんだ――。そうした思いが、135分間、駆けめぐる。

画像6

・最注目スタジオ「A24」渾身の新作

その品質は、トロント国際映画祭でも絶賛を浴びている。同映画祭上映時には、史上最長のスタンディングオベーションを巻き起こした。各メディアも称賛の嵐で、米Varietyは「一生に一度の傑作!」、THE RINGERは「今年、最もまばゆい体験」と激賞した。

A24は設立から8年間(わずか8年!)で、数々の作品を世に放ってきた。「エクス・マキナ」「ルーム」「ロブスター」「スイス・アーミー・マン」「ムーンライト」「20センチュリー・ウーマン」「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」「レディ・バード」「ヘレディタリー 継承」「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」など……。

日本でも大きな話題を呼んでいる「ミッドサマー」も、同スタジオが手掛けている。作家性が強い良質な作品をつくることにおいて、ハリウッドの先頭を走るA24の最新作。この映画から、あなたの人生は大きく色を変えるだろう。

画像7

永遠に魂に刻まれる一作 映画館でしか味わえない“体感”が宿っている
いくつものキス、抱き合う2人、恋人たちのイヤホン、世界一遅いエレベーター

画像8

呼吸を忘れるほどの感傷と、明日への希望。映画.com編集部のスタッフが実際に鑑賞したレビューを、以下に記していく。


[エモーション] 魂を共振させ、胸を焦がすシーンが音楽とともに積み重なる

あらゆるシーンが網膜に焼き付いて離れない。それほどにエモーショナルだった。

トワイライトの海岸、波間に抱き合う2人。沖の方で誰かがシーツをそっと揺すっているみたいに小さく波が寄せ、そして引いていく。静寂が包む。2人は額を合わせ、唇を重ねる。

画像9

スプリンクラーが水を撒く芝生で戯れる男女。マナティの泳ぐ川でのキス。恋人たちのイヤホン。並木道と自転車とホット・パンツ。頬をなでる湿った海風。虹。とりたての運転免許。買ったばかりのピカピカの新車。バックミラーにぶら下がるけばけばしいアクセサリー。デートとInstagram。死にゆく老人。世界一遅いエレベーター。2つ並んで寄り添う歯ブラシ。

瑞々しいイメージが積み重なり、魂を揺さぶって仕方ない。“物語に抱きしめられる”感覚が続き、余韻がすさまじい。エンドロールが終わっても、すぐには座席から立ち上がれなかった。

画像10

[イノベーション] 監督の才気煥発 他に類を見ない、洗練された映像世界

カメラワークをはじめ、画作りは非常に独特だ。シュルツ監督のセンスがさく裂し、映像を見る喜びを丹念に教えてくれる。

ある決定的な事件を境に、画面のアスペクト比が変化したことが印象深い。コーヒーカップのようにぐるぐる回り、キャラクターの表情をつぶさに見せていくカメラワークも面白い。

画像11

さらに主人公がデート中、デート相手のInstagramをチェックしながらトークしたり、iPhoneのメッセンジャーで込み入った別れ話をしたり。2000年代生まれのティーンエージャーのリアル、その一端を知ることができた。

A24とテレンス・マリックのもとで学んだ、31歳の若きシュルツ監督の手腕によって、“色と音楽と物語”という基本要素がここまで新しいものに昇華されるとは。どの作品とも似ていない、鮮烈かつ洗練された映像世界に浸ることができた。

画像12

[インパクト] 予想だにしない衝撃―― 永遠に色褪せない、かけがえのない一作

冒頭7分間で、多くの映画ファンがノックアウトされるに違いない。句読点をうたない文章のような猛烈な勢い。“普通であること”を拒むかのようなカメラワーク。クラブのど真ん中に放り込まれたかのような音圧。起き抜けの全身も即座に目覚めさせてくれるような、刺激的な時間だ。

そして、主人公は前半と後半でチェンジする。そこには潤沢なサプライズが含まれており、上述の[エモーション][イノベーション]と相まって、映画の無限の可能性をひしひしと感じさせてくれる。

あらゆる角度から感情を揺さぶられ、作品が持つ豊かさは語りつくすことなど到底できないほどだ。映画館で体感できた暁には、その体験は、永遠に色あせることはないだろう。

画像13

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画評論

「WAVES ウェイブス」の作品トップへ