自然を愛する夫婦が挑む“究極の農場”づくり 「ビッグ・リトル・ファーム」監督に聞く
2020年3月13日 14:00
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[映画.com ニュース] 自然を愛する夫婦が“究極のオーガニック農場”をつくるまでの過程を追ったドキュメンタリー映画「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」。3月14日からの公開を前に、妻とともに農場づくりに励み、本作のメガホンをとったジョン・チェスター監督に話を聞いた。
チェスター監督は映画製作者、テレビ番組の監督として25年の経歴を持つ。野生生物番組の製作者として世界中を旅したことがきっかけで、生態系の複雑な相互作用に興味を持つようになり、2010年に妻モリーとともに「アプリコット・レーン・ファーム」と名付けた農場を始めることになった。
殺処分寸前で保護した愛犬トッドの鳴き声が原因で、ロサンゼルスのアパートを追い出されたチェスター夫婦。やがて、2人は“本当に体に良い食べ物”を育てるため、トッドを連れ、郊外へと移り住む。しかし、そこに広がっていたのは200エーカー(東京ドーム約17個分)もの荒れ果てた農地だった。
本編では、害虫、山火事、干ばつと、大自然の厳しさに翻ろうされながらも、命のサイクルを学び、愛しい動物や植物たちとともに“究極に美しい農場”をつくりあげていくさまを収めている。
チェスター監督が自身の体験を映画にしようと決意したのは、農場を始めて5年が経ってからだという。「野生生物やさまざまな虫など、生物の多様性が戻ってバランスがとれてきたのを見て、映画にしようと思ったんだ。最初から映画にするつもりではなかったけれど、目の前で展開するいろんな物語を5年の間にとらえていた。こういうストーリーは誰も見たことないから、映画にしようと思ったんだ。妻のモリーは、僕が農業と映画を両立できるか気になったみたいだけれど、僕たちがやっていることは特別だから、何かの形で記録したほうがいいって2人とも思っていたんだ」。
撮影はほとんど毎日行っているそうで、「1秒も途切れることがなくというわけではなく、トラックにカメラを積んで、何かが起こったらそれを撮るようにしているよ。最初に映画用にまとめたら4時間もあったけれど、なんとか短くした。今回入りきらなかった面白いドラマもあるから、どういう形かはまだわからないけれど、いつか発表できたらいいな」と今後に含みをもたせる。現在も撮影は続いているといい、「ねずみが鳥の箱に入っちゃった話とか、鶏が牧草地から逃げてしまった話を撮っているんだ」と、新たなトラブルが次の映像素材になりそうだ。
決まった休みがない農場での生活に、「週に1回くらいは、ずっとこれを続けていかないといけないのかなって思うこともある。続けているのは、病気みたいなものかな(笑)」と冗談めかしつつ、本音を吐露したチェスター監督。それでも続けてきた理由は、経験者にしかわからない魅力があるからだ。
「もう春は嫌だなと思っているときに夏がきて、夏は嫌だと思っているうちに秋がきて……。季節が変化することで新しい問題も起きるけれど、少しほっとしたりもするんだ。常にある変化が僕たちを動かしてくれる」
劇中でも、季節の変化によって農場の見え方が大きく変わるのがわかる。ちなみに、農場の仕事が一番大変なのは「春」なんだそう。「種のある果物が育ちだすし、牧草の栄養価が高いから羊が生まれるシーズンにもしているし、雑草も生えてくる。いろんなことが起こるから、とても大変なんだ」。
インタビューの最後、「良い農家から食べ物を買うほうが楽だよ」というチェスター監督に、農業を始めようとしている人へのアドバイスを求めると、笑みを浮かべながら以下のように答えてくれた。
「ライフスタイルとして農業を楽しめる人は、やったほうがいい。毎日自然の中で暮らすことにワクワクして、チャレンジしたいという人は特にね。僕は最初から楽しめたんだ。今48歳で、39歳のときに農場を始める決断をした。こういう年齢だから、人生の選択肢がほかにあることもわかっているけれど、土に触れる、自然のなかで生きるということがユニークなチャンスだと思ったんだ」。
「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」は3月14日からシネスイッチ銀座、新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMAほか、全国順次公開。
フォトギャラリー
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