巨匠に忠誠を誓った男は“自身の姿”に何を感じた?「キューブリックに魅せられた男」監督が明かす
2019年10月30日 13:00

[映画.com ニュース] 没後20年を迎えた巨匠スタンリー・キューブリックに迫るドキュメンタリー「キューブリックに魅せられた男」を手掛けたトニー・ジエラ監督がこのほど、インタビューに応じた。同作でスポットが当てられるのは、キューブリック監督に絶対的な忠誠を誓った俳優レオン・ビタリ。「(本作は)映画業界のみならず、あらゆる分野にも共通する献身の物語、そして情熱と奉仕の物語」と話すジエラ監督が、カンヌ国際映画祭上映時の様子を絡め、ビタリが抱いた思いを明かした。
「バリー・リンドン」の出演をきっかけに、キューブリック監督の“個人的なアシスタント”となったビタリ。無限ともいえるキューブリック監督の雑事を“24時間365日体制”でこなすハードな日々――その光景を、ライアン・オニール、R・リー・アーメイ、マシュー・モディーンといった多彩な映画人たちの証言とともに映し出す。ジエラ監督は、ビタリへの出演オファー時を振り返り「(彼は)ショックを受けていたよ」と打ち明ける。
ジエラ監督「自分の話に語るほどのものがあると思っていなかったみたいだ。それにいつもキューブリックの話はしていたけれど、自分自身について話すことに馴れていなかった。キューブリックや(イングマール・)ベルイマンや黒澤(明)みたいな偉大な監督の傍にいる人なら、きっと誰でも『自分のことなんて何を語ればいいんだろう』と感じていると思うんだ。でもそこがこの物語のポイントなんだ。偉大な人物の陰にいる人の声を聞いてみたいと思う人はほとんどいなかっただろうからね」

完成した作品について「(ビタリは)満足していたし、ハッピーだったみたいだけれど、何というか少しショックを受けているようにも見えた」とのこと。「あれほどの人物の為に仕事をしていると、日々の仕事に忙殺されて、細々としたことなどいちいち覚えていられない。そしてきっと誰もが自分の存在なんて気にもかけていないと思っていたから、映画を見て『自分もこれだけのことをやってきたんだな』と感慨深かったようだ」
第70回カンヌ国際映画祭クラシック部門公式セレクション作品として上映されると、5分以上にわたるスタンディングオベーションが巻き起こることに。ビタリ監督は、当時の光景を思い返し「レオンは涙ぐんでいた。そして何より一緒に見ていた子どもたち(2人の娘と息子)が初めて自分の父親がやってきたことを理解した、そんな瞬間だった。彼らも涙ぐんでいたし、本当に感動的だったよ。『キューブリックに魅せられた男』の本編にはないけれど、本当のラスト・シーンに思えたよ」と語った。
同作には、「シャイニング」のダニー・ロイド(ダニー・トランス役)が出演している。「レオンはダニーにとって(『シャイニング』の撮影で)初めて会った人で、空港で別れた最後の人物。ふたりは本当の家族のようだったらしい。ダニーはもう俳優の仕事はしていないけれど、レオンについての映画だからということで出演を快諾してくれたんだ」と参加に至った理由を告白。2人は「シャイニング」の撮影以降、1度も会ってはいなかったようで「レオン自身『キューブリックに魅せられた男』に登場したダニーのすっかり大人になった姿にショックを受けていたよ。今は中西部のどこかで化学の教授をしていて、おもしろいことに『シャイニング』については語りたくないらしい。学生たちには教室で『シャイニング』の話をすることを禁止しているらしいよ(笑)」と述べていた。

日本では、本作に加えて、専属ドライバーだったエミリオ・ダレッサンドロにフォーカスを当てた「キューブリックに愛された男」(アレックス・インファセッリ監督)がカップリング上映方式で公開される。ビタリとダレッサンドロは、それぞれの作品で互いのことについて言及していないが「単に語れるほど2人で協力して何かをしたことがないだけなんだ」「2人の間にわだかまりのようなものはないよ」とジエラ監督は説明する。
ジエラ監督「キューブリックは誰に対しても膨大な仕事を頼むから、それぞれ手一杯になって、世界に自分ひとりきりしかいないみたいに感じてしまうんだと思う。これはこの2人に限らず、キューブリックの傍で仕事をしていた人に共通している。30年間ずっと同じオフィスに閉じこもってひたすら仕事をこなしているから、他の人の存在に気付かないという感じかな。それにキューブリックのその性格をどのように説明すればいいか難しいんだけど、人に何かを頼みたいときに例えば『エミリオはやりたくないらしい。だから君に頼む』みたいなことを言うこともあったようだ。またそれぞれ仕事の受け持ち範囲も違う。エミリオは運転手であり、また銀行口座のアクセスも任されている。一方レオンは俳優との連絡やクリエイティブな面を受け持っていた、というように、仕事で重なる部分がなかっただけ」
ジエラ監督は、キューブリック監督の遺作となった「アイズ ワイド シャット」に関する新作「SK13」を準備している。現在編集中のため、多くのことは話せないようだが、「キューブリックに魅せられた男」と比べると「かなりコントラバーシャルな内容になる」ようだ。
ジエラ監督「キューブリックの最期にまつわる話とか、トム・クルーズとニコール・キッドマンが映画を台無しにしたとか、トムのサイエントロジーが映画に何か影響を及ぼしたとか、いろんな噂があったから、そういった意味では物議を醸す内容になると思うよ」
「キューブリックに愛された男」「キューブリックに魅せられた男」は、11月1日から東京・ヒューマントラスト有楽町ほか全国順次公開。
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