キューブリックに魅せられた男
劇場公開日:2019年11月1日
解説
「バリー・リンドン」への出演をきっかけにスタンリー・キューブリック監督の専属アシスタントになった俳優レオン・ビターリにスポットを当てたドキュメンタリー。「2001年宇宙の旅」と「時計じかけのオレンジ」を見て衝撃を受け、キューブリック監督の信奉者となった若手英国俳優レオン・ビターリ。オーディションで役を勝ち取った「バリー・リンドン」への出演を経てキューブリックに絶対的な忠誠を誓った彼は、有望視されていた俳優業からスタッフ側に転身し、「シャイニング」からキューブリック組に参加する。早くも監督の信頼を得たレオンは個人的なアシスタントに取り立てられ、身の回りのありとあらゆる細かい用事や仕事を任されるように。24時間365日、無限とも思える雑事に追われるレオンは、次第に肉体的、精神的に追い詰められていく。その過酷な日々を、ライアン・オニール、R・リー・アーメイ、マシュー・モディーンらキューブリック監督作の出演者をはじめとする映画人たちの証言とともに描き出す。
2017年製作/94分/G/アメリカ
原題:Filmworker
配給:オープンセサミ
スタッフ・キャスト
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この映画を観るまで彼の存在を誰も知らないだろう。
キューブリック映画を支えてきた助監督の存在を。
またこの映画、構成が素晴らしくて、
ますレオンがスタンリーに憧れるところから描き、
その後、彼によって狂わされた人生、
最後には、レオンのような人間が何百万といるという事実を知ることになる。
エンドロールの大勢の人はレオンそのもの。
本当に衝撃的だった・・・。
こういう生き方をしてみたいな、でもこんな生き方してはいけないなと
舐めたことを思ってしまった。
というかレオンのような人は、もうそんな考え毛頭なくて、
キューブリックに出会ったときから衝動的に動いてるんだろうな。
エンドロールも秀逸でしたな…。
映画業界で働くすべての人に響くんじゃないでしょうか。
2020年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
ー「バリー・リンドン」への出演をきっかけにスタンリー・キューブリック監督の専属アシスタントになった若手英国俳優レオン・ビターリのスタンリー愛に溢れた壮絶な生き方を描いたドキュメンタリー作品。ー
・作中語られる、本人や彼の子供たちの証言が凄い。14-16時間労働の日々。ほぼ休みなし。
1時期は体重が30キロにまで落ちたという。
子供たちと接する時間も限られ、時には玄関マットの上で2時間だけ眠ることも・・。
・だが、それ以上にレオンのスタンリーを敬愛する姿に魅入られる。映画会社との交渉。子役の人選(「シャイニング」のあの双子や、ダニー・ロイドも・・)にも関わる。
・「アイズ・ワイド・シャット」では、役者として劇中で演技しながら、スタンリーの右腕として、裏方で働くレオン。
・スタンリーの死後もその死を悼みつつ過酷な日々を懐かしそうに語るレオンの姿。そして、今や彼は、スタンリーの作品維持、発展には(4K作品製作)欠かせない人物になっている・・。
<それにしても、スタンリー・キューブリック監督は神経質で完璧主義でその気難しさばかりが巷間では話されてきたが、今作と「スタンリーが愛した男」を観ると、実は彼が、強力な磁石のように人を引き付ける魅力的な人物であったことが良く分かる。
そして、又、彼が映画製作に如何に命を懸けて取り組んでいたという事も。
その姿を間近で観た、レオンが当然のごとく、スタンリーに引きつけられていったことが良く分かるドキュメンタリー作品である。>
2020年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
イギリスの俳優、ヴィターリは「バリー・リンドン」に出演、キューブリックの演出に心酔し、俳優を辞めてキューブリックの助手となる。
キャスティング、子役の世話、プリントチェックなど、映画作り全般のアシスタントを、1日24時間、1週間7日間、亡くなるまで徹底的に仕えた。
多分、神様に仕えていたんだろうなぁ。
2020年2月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
前日に『愛された男』に感動して、もうこれは観ずにはいられない思いになっての鑑賞。エミリオは退職願が受理されたんだけど、こちらのレオン・ビターリ氏は監督が亡くなるまで働き通し、1日24時間、週7日という過酷な労働をやり遂げたのです。いや、完全に労働基準法違反ですがな・・・ダニー少年なんて1時間20分しか働かせてないというのに・・・
『シャイニング』のダニーをオーディションによってスカウトしたのもレオン。とにかく編集のみならず、キャスティングまで全てを任されるようになってからは、もう彼が直属の部下といった感じだったことがうかがえる。そもそも、俳優としてのオファーも断り、影の仕事であるアシスタントを選んだのか・・・映画作りの面白さ、スタンリーを神だと悟ったからに違いない。
キューブリック作品のフィルムもかなり使用され、レオン自身のフィルムも挿入され、2本のうち1本を選べと言われるなら、こちらを選ぶのが正解でしょう。作品の裏話だけじゃなく、フィルムメーカーとしてのスタッフがどのように対処していたとか、キューブリックの天才ぶりとスタッフの忠誠心の賜物だったことが描かれ、レオンの心の支えとなっていたこともわかるのだ。裏方に徹する仕事ぶりは彼の死後も続き、きちんと保管して後世に伝えることの重要さまでも訴えてくる。さらに、管理する仕事じゃ食っていけないから息子に経済的援助までしてもらうといった、それこそ人生を賭けてキューブリックを支えている心意気が気に入った。エンドロールの最後も「全てのフィルムメーカーに捧ぐ」といった感じでドーンとロゴがアップになるところが素敵でしたよ。