【ネタバレ注意】町山智浩が「アス」を徹底解説!本当に恐ろしいのは…
2019年9月17日 19:00

[映画.com ニュース] 「ゲット・アウト」が全米で大ヒットし、日本でも一躍脚光を浴びたジョーダン・ピール監督の最新作「アス」(公開中)のトークイベントが9月16日、都内で行われ、映画評論家の町山智浩氏が登壇。アメリカでピール監督やキャストらにインタビューを行ったという町山氏が、本作に込められたメッセージなどを解説した。
※編集部注:本記事には「アス」のネタバレが含まれています。作品を未見の方はご注意ください。
本作は、主人公家族のもとに自分たちの分身=ドッペルゲンガーが現れるというストーリー。見かけは微妙に異なり、性格は別人のように描かれているが、町山氏は「ジョーダン・ピールはDNAが同じでも育ちによって全然違う人になるんだよ、ということを言いたかったんです」と話す。
その例として、ルーニーズの「I GOT 5 ON IT」が流れる車中でのシーンを挙げると、「あそこにギャップが表現されています。あの時、アデレード(ルピタ・ニョンゴ)がフィンガースナップをするでしょ。あれ、音とリズムが合っていないと思いませんでしたか? 実は彼女が子どもの頃地下で育ったクローンであることを、音楽的な環境がまるでなく、リズム感が育てられていないということから表しているんですよ」と細部の演出に触れる。
本作に込められたメッセージについては「あくまでもジョーダン・ピールは貧しい人の側に立って作っている。貧しい人たちをほったらかしにしている罪を罰せられるという話なんです。だから、神の裁きが下るぞというエレミヤ書11章11節が出てくる」と分析。「ただ、最後に黒人の歌手ミニー・リパートンの『レ・フルール』という曲がかかる。あれはアメリカでフラワームーブメントが起こった、ヒッピー時代のムードや思想を歌ったもので『花を誰もが持っているべきよ』という歌詞なんですね。花は優しさの表現です。つまり、本作で優しさを忘れるとこういうことになっちゃうよ、と言いたいがためにあの曲を最後に流しているんですね」と音楽の効果についても語った。
たっぷり解説を行った後、「アメリカに住んでいるんですけど、実際にああいう人たちがドアを叩いたりすることがある。子どもが道端にいたりするわけですよ。その時にどう対応するかって話ですよね」と明かした町山氏。「お金を分けたりするのは基本ですけど、もし入ってこようとしたら、自分たちの生活を守るために彼らを拒否するだろう。誰でもそうすると思います。だから誰でもモンスターなんです。恐るべきは“アス(わたしたち)”なんです」と締めくくった。
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