遠藤新菜&SUMIREがシンガポールで見せた“リアルで自然な関係” 宮崎大祐監督「TOURISM」
2019年7月12日 15:00
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米軍基地の街で暮らすラッパーの少女を描き、国内外で高い評価を得た「大和(カリフォルニア)」の宮崎大祐監督の最新作「TOURISM」が、7月13日に公開される。東京から程近い地方都市でフリーターとして暮らす若いふたりの少女が、初めての海外旅行を経験。将来への不安や期待を抱えながらも居心地の良い“地元”での生活を続けてきたふたりが、多民族国家として知られるシンガポールを訪れ、文化の違いを自然体で軽々と乗り越え、リアルに楽しむ姿をドキュメンタリータッチで追いかけた。メインキャストの遠藤新菜とSUMIRE、宮崎監督に話を聞いた。(取材/編集部、撮影/松蔭浩之)
--若い女性のふたり旅、という設定についてお聞かせください。
宮崎 ひとり旅だとなかなか話がもたなかったり、逆に3人だと関係性が安定してしまって、その中で物語をまわすことはできますが、動きが出ないことも。前作「大和(カリフォルニア)」はある一地点に住む女性ふたりを描きましたが、今回は動き回ることで、ドラマが広がると思いました。また、前作の続きのようなイメージがあったので、引き続き遠藤さんに出演をお願いしました。
--監督ご自身の体験も映画に反映したそうですね。
宮崎 映画では、(遠藤が演じる)ニーナがスマホを失くしてしまいますが、もともとはスコールでスマホが壊れてしまう、という設定を考えていて。以前突然のスコールで全身びしょ濡れになり、路肩で自分の服を絞りながら、スマホなしで次の場所に向かわなくてはいけない経験をしました。ふらっと入った民家でライブが行われていたりしたのも映画に反映されています…。もともと、知らない国で迷子になるのが好きなんです。だからこの映画は自分が海外で実際に体験したことを通じ、迷子になる面白さを表現しているとも言えると思います。
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--外国で映画を撮るという経験はいかがでしたか?
宮崎 シンガポールはとてもセキュリティが厳しい国なので、録音部がおなかが痛いふりをして機材を隠し持ってこっそりふたりの声を録ったりと、ほとんどゲリラ撮影でした。また、外国のスタッフと映画を撮ると、「用意、スタート!」ではなくて、「アーンド、アクション!」とハリウッドっぽい掛け声になるんです。それがやっているうちに楽しくなってしまって、なんだか映画監督っぽいなあ…と浸っちゃったことも(笑)。海外の現場はこれからも経験していきたいです。
--異国情緒溢れるカラフルなシンガポールの景色が特徴的です。色彩へのこだわりを教えてください。
宮崎 実は、最初に大阪アジアン映画祭で上映した時とはかなり色を変えています。アジア映画的なニュアンスがちょっと足りないな、と思っていたら、マカオの友人から、ポルトガルのペドロ・コスタ監督のフィルム時代から仕事をしているカラリストのゴンサロ・フェレイラ氏を紹介されました。彼にカラコレをやっていただいた結果、ある種毒々しいけど、今まで見たことがない独特な色が出て、全く違った印象になり驚きました。均一化する景色という狙いはありましたが、日本とシンガポールのシーンの色を分けないと、特に、西洋の観客には両国が同じ国のように見えてしまうので。そこを彼が強調してくれて、非常に感謝しています。
--遠藤さんにとっては、今作が初の映画主演作になりますね。どのように役に取り組まれましたか?
遠藤 感覚的に、私ひとりだけが主演という気持ちはありません。お話をいただいた時に、できるだけ私がいいな、と思う人を巻き込ませて欲しいとお願いして。あくまで、私とSUMIRE、ふたりのガールズムービーだということが伝わればいいなと思いました。ふたりだったら大丈夫、という気持ちもあって。まるきり素ではないのですが、役作りとしては、ふたりの特徴的な一面を誇張するとこうなる、というイメージで演じました。私のちょっとバカっぽいしゃべりとかを誇張したのがニーナで、(SUMIREが演じる)スーはボーっとしたところを強く出すとか。監督から、気づかないレベルでの演出をしてもらった感じです。
--長年モデルとしてご活躍です。女優の仕事を始めて、心境やお仕事の比重に変化はありましたか?
遠藤 比重はあまり変わらないですね。最終的に思うのは、あまりモデルとか女優とか枠に捉われたくないなと。あとは、なかなか難しいことだとは思うんですけれど、私は自分のやりたいことしかやりたくないんです。やりたくないことをやってきたわけじゃないんですけど、もっと若い頃は本当に自分がしたいことかどうかにあまり考えずにやっていたので。この作品もそうだし、映画に対して、取材も宣伝も胸を張って、自分がいいと思えるような仕事をしたいです。それはモデルの仕事に対しても同様で、自分がかっこいいと思える仕事だけをしたいし、もっと自己中になろうと思いました。自分がやりたいことをやっている若者がいてもいいんじゃないかなと思っています。
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--SUMIREさんも遠藤さんと同様、モデルと女優のお仕事を両立されています。今作への参加についてお聞かせください。
SUMIRE 新菜とは普段も映画のようにナチュラルに一緒にいるので、この作品でも、やっぱり私たちふたりがすごくリアルに自然体に描かれているのがすごくいいなと、改めて思いました。宮崎監督とは初めてのお仕事でしたが、この役になるために…という感じではなく、自分の自然な部分と、スーというキャラクターの半分ずつを混ぜて演じた感じです。女優業はまだまだ学んでいる途中ですけれど、モデルの仕事もずっと続けたいし、あとは絵を描いたりデザインも好きなので、クリエイターとしていろんなことをやっていきたいですね。
--役から離れて、シンガポールの魅力をお聞かせください。
遠藤 私は何度も訪れているのですが、行く度に思うのは、シンガポールといえばこれ!というものがあまりないのが好きです。いろんな食べ物があって、いろんなタイプの英語を話す方がいて、でも国としての歴史が長いわけではない。シンガポールって、こういう国なんだっていう答えが出せなくて。だからこそ、行っても行っても謎が尽きないんです。あと、日中と夜の景色の差がとっても激しいところが好きですね。夜になると突然宇宙みたいになるんです。そういう感覚がとても不思議な国です。
SUMIRE 私は2日間だけの撮影でしたが、いろんな人がいて、知り尽くせないいろんな場所があって、もっと探ってみたいと思いました。いろんな国の人たちがたくさんいて、いろんな色のある国だなという印象です。
--宮崎監督は、女優としてのおふたりをどのように評価されましたか?
宮崎 いつもは映画を撮ってから時間が経つと少し客観的になって、やっぱりこうすればよかったとか、いろいろと思うんですが、この映画に関しては、ナルシストみたいですけど、ああ素晴らしいなあ…と改めて思うことが多くて。何か特殊なことがおきているわけではないのに、にんまりしちゃうような一回きりのシーンやカットがたくさんあります。この方向で続編をやってみたいとも思いますし、ふたりに全然違う役柄を与えて、違うアプローチの演出もしてみたい。おふたりとも、そこにいるだけで魅力的で、それは役者としても人間としてもポテンシャルとしてすごいこと。だから、もっともっと世界の巨匠たちに磨かれて、国宝級になったときに僕に戻ってきてくれたらうれしいです(笑)。
(C)DEEP END PICTURES INC.
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