大阪・西成で撮影、行政からの修正指示受けた「解放区」が10月18日公開
2019年6月19日 18:00
[映画.com ニュース] 2014年の第27回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門で上映された太田真吾監督作「解放区」が10月18日、テアトル新宿で公開される。
日本最大の“ドヤ街”を有すると言われる大阪・西成区の飛田新地、あいりんセンター、三角公園などでロケを敢行し、そこに息づく人々の「生きる姿」を映したフェイクドキュメンタリー作。
本作は、2014年に大阪アジアン映画祭での上映を目指し、地元住民やNPO、大阪市からの後援を受け製作されたが、当時、大阪市は釜ヶ崎(あいりん地区)の再開発を中心とした西成特区構想を進めており、映画の描写が「相応しくない」と映画完成後、大阪市より内容修正指示を受けた。しかし、太田監督は修正を拒否し、大阪アジアン映画祭での上映も中止。話し合いの結果、最終的に太田監督は助成金を返還。その後は自主制作映画として東京国際映画祭などで上映され、5年の月日を経て劇場公開が決定した。
阪本順治監督は、「ここ何年もの間に観た劇映画の印象がすべて吹っ飛ぶぐらい、衝撃を受けました。社会性を持ちながら、劇映画本来の醍醐味がここにあります。俳優の存在力、カッティング、自在に動くカメラ、音や音楽など、低予算にも関わらず条件の厳しさはまったく感じさせず、いまの映画業界に愚痴ばかり言っている私は、ですから、ひどく落ち込みました。そして遠い昔、勝新太郎さんが私に言った『サカモト、映画はね、裏切りとすれ違いで成り立ってるんだよ』という言葉を思い出しました。加えて、『フィクションはノンフィクションのように、ノンフィクションはフィクションのように、作るべし』とよく先達が言っていましたが、そのどちらでもありどちらでもないありかたに驚きました。あらためて、撮影隊=芸術を受け入れる度量の深さをあの町に感じ、それでいて『解放区』はその題名のとおり、決してあの地域のみに特化した作品ではなく、この国に住む私たちの脆弱な精神性(排除や偏見や憎悪)にも関わる物語として、あらゆる場所へ越境して行くべき作品です。2020年、2025年のバカ騒ぎに向けて、日本の繁栄を最底辺から支えてきた人間たちと、その営みを覆い隠して、なんのための国づくりなのか。自戒も含め、まずは映画人が観るべき映画。主人公の自業自得は、あまりに痛快。傑作!」と熱い激励コメントを寄せている。
小さな映像制作会社で働きながらドキュメンタリー作家になる事を夢見るスヤマ。未だその途中にありながらも、夢を語り理解を示してくれる恋人もいる。ある日、取材現場での先輩の姿勢に憤りを爆発させ仕事での居場所を無くした彼は、自らの新たな居場所を探すかのように、かつて希望を見失った少年を撮影したことのある釜ヶ崎へ向かう。しかし、1人で問題に向き合えないスヤマは、東京で取材した引きこもりの青年を呼びつけたり、行きずりの女性に愛を語ったりと切実さに欠ける取材を続ける。やがて、自らの甘さがもたらした結果から、スヤマは一歩また一歩と道を踏み外してしまう。
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