R18+殺人の過激描写が話題のトリアー新作に評論家ら「笑える作品」
2019年5月25日 14:30

[映画.com ニュース] 鬼才ラース・フォン・トリアー監督の新作「ハウス・ジャック・ビルト」の公開を記念し、トリアー監督エアファンミーティングと題したトークイベントが5月24日都内であり、滝本誠氏、柳下毅一郎氏、町山広美氏が編集者の品川亮氏の進行で、今作の見どころを語った。
ヒトラーに関する問題発言でカンヌ国際映画祭追放処分を受けたトリアーの7年ぶりのカンヌカムバック作。架空の米国の町を舞台に、マット・ディロンが演じるシリアルキラーの内なる葛藤と欲望を過激描写の連続で描いたスリラー。
デビュー作からトリアー監督の作品を追っているという柳下氏は、主人公の「芸術には残酷さが必要だ」というセリフを挙げ、「『アンチクライスト』『ニンフォマニアック』で叩かれたので、やってやろうじゃないかと思ったのではないか」と、トリアーがさらに過激な描写に挑んだ理由を分析。鬱(うつ)的な作風で知られるが、「この作品は躁(そう)転している。勝手に喜んでいる感じがあった」「ずっとトリアーのことは好きなので、良い悪いではなく、今回もがんばってるねという仲間意識で見た。笑えるところも多い」との感想。さらに、殺人の欲求に取り付かれた主人公の描写については「実際とは違うけど、意外とちゃんと調べてやってるなと思った。有名なネタはしっかり取り込んでいる」と評した。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」で主演し、トリアーからハラスメントを受けたと主張するビョークのTシャツを着用して出席した町山氏は、「男は生まれただけで犯罪者扱いされる」という劇中での言葉を紹介し「『俺、絶対謝らないんだ』というのを感じる」とコメント。今作は「笑って、面白く見れた」といい、「マット・ディロン、こんなに白目がきれいなシリアルキラーは初めて。(トリアーの)コンプレックスなのか、イケメンは無罪みたいな思いがあるのかも」と独自の視点で語り、「キム・ギドクの『嘆きのピエタ』を思い出すシーンがある。ギドクも女優に訴えられているし、お互い影響受けているのを感じた」と話した。
アート、音楽に造詣の深い滝本氏は、今作鑑賞前の予備知識として「トーキング・ヘッズの『サイコキラー』を思い出す。(殺人は)明るくて、やっちゃえ、楽しいじゃんという感じ。何度かお聞きになって上映に挑むといいかもしれません」とアドバイス。また、原題の「The House That Jack Built」に触れ、「(邦題は)配給会社がTheとthatを抜いた。それは豪勢なペントハウスと屋根の部分。しかし、(抜いたことで)3階建ての廃墟的な雰囲気が出てよろしい」と、理想の家を建てたくても建てられない主人公の心情を表すようだと指摘した。
そのほか、この日のイベントでは、今作に引用された元ネタ、トリアー監督の複雑な生い立ち、カンヌでの問題発言の真意、そして柳下氏がトリアー監督の未完成作を紹介するなど、さまざまなテーマで登壇者たちが語り合った。
「ハウス・ジャック・ビルト」は、6月14日から東京・新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
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