福島原発の真実に迫る「Fukushima50」、主演の佐藤浩市が力説「絶対に忘れてはいけない」
2019年4月17日 19:00
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[映画.com ニュース]2011年の東日本大震災で津波に襲われメルトダウンを起こした福島第一原発の作業員たちの真実に迫る映画「Fukushima 50」のクランクアップ会見が4月17日、都内のホテルで行われ、主演の佐藤浩市、共演の渡辺謙が出席した。
フクシマフィフティとは、全電源喪失という事態に見舞われながら原発内に残り続けた50人の名もなき作業員たちを欧米のメディアが評し全世界に広まった呼称。佐藤は現場の指揮を執る当直長・伊崎利夫、渡辺は所長の吉田昌郎を演じた。
佐藤は、「人間には忘れなければ生きていけないことと、絶対に忘れてはいけないことがある。この映画は間違いなく後者。我々がメッセンジャーとして、この事象をどう刻むのか、お客さんが映画館を出た時にどういう思いを抱くのかを大事に進めていった」と説明。電源が落ちた中央制御室内での撮影は、「順撮りだったので、日に日に皆の顔が変わっていくのが分かった。そこはやりながら皆で話し合うしかなく、そこには役者の技量を超えた何かがあった」と振り返った。
一方の渡辺は、唯一実名での出演となり「非常にプレッシャーのかかる役だった」という。撮影現場を表敬に訪れた当時の作業員に「実際にはどのように対応したのかなどを根掘り葉掘り聞いて、テレビ会議の後に何回バカヤローと言ったかを正の字で数えていたことなど、テレビなどでは映し出されていないエモーショナルな部分を出した」と話した。
2人は13年「許されざる者」以来の共演で、佐藤は「年はひとつしか違わないが、生きて来て人生が違うのか風格が漂っている。撮影の最初はほとんど電話だけのシーンだったので、1カ月ほどたって顔を見られた時はホッとした。戦友の気持ちで一緒に頑張ってこられた」と感謝。対する渡辺は、これまで吉田所長役でドラマのオファーがあったことを明かした上で「我々の仕事はエンタテインメントなので、人間ドラマをどう描けるかと悩み踏み出せないまま8年がたってしまった。それを伊崎を中心に現場で闘った男たちを描く、その伊崎を浩市くんが演じることで映画として成立すると納得できた。全幅の信頼を寄せ、それを頼りに吉田を演じた」と称えた。
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公開は2020年を予定。震災後、被災者へのメッセージを集めた短編映画「GET UP」の製作に協力した佐藤は「まだ8年か、もう8年かは人それぞれで皆違う。まだ振り返ることができない人も、生まれていても幼少で記憶にない方もいる。是か非ではなく、そういう人たちにも何かを感じてもらいたい。そのことだけを目指してやってきました」と言葉に力を込めた。
渡辺も、宮城・気仙沼に復興支援のためのカフェを建て、被災地を定期的に訪れており「反原発をうたう映画ではない。未来の僕たちの子ども、孫たちの世代に、こういう事象があったんだということを検証し伝える材料にしてほしい。(危機が)まだゼロになっていないことを忘れないでほしい。この作品を世に送り出すまで、きちんと関わっていきます」と決意をにじませた。
会見中、渡辺が時折空気を和ませることはあったが、終始表情を崩すことがなかった2人。佐藤の「正直、これだけ笑顔の少ない会見は初めて。妙な緊張感があった」という言葉に、2人の「Fukushima50」に対する思いの強さが表れていた。
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