内田裕也、亡き妻・樹木希林さんに「ありがとう」 京都の地で感謝にじませる
2018年10月14日 18:00
[映画.com ニュース] ロックンローラー・内田裕也を追ったドキュメンタリー「転がる魂・内田裕也 ザ・ノンフィクション」が10月14日、京都国際映画祭2018で上映され、内田と監督を務めた崔洋一がよしもと祇園花月での舞台挨拶に出席した。
内田の日常や、最後の力を振り絞りながらロックフェスに取り組んだ1年間に密着し、波乱と矛盾に満ちた人生を振り返っていく。今年7~8月にフジテレビ系「ザ・ノンフィクション」で放送された内容に手を加え、特別版としてスクリーンで上映された。
場内を「裕也ー!」「ロックンロール!」という熱狂的な歓声、万雷の拍手が包み込むなか登場した内田は、「今日、監督と照れながら拝見し、日本では珍しいドキュメンタリーだと、手前味噌ですが感心いたしました」と満足げ。「古い友人がいろいろ出てきて、僕はあまりメジャーに成功したことがなかったので、感無量で見させてもらいました」と語り、「今後のロックンロールライフに、とても大きなパワーになって繋がると確信しています」と言葉に力を込めた。
さらにナレーションは、9月15日に亡くなった妻・樹木希林さんが務めている。崔監督は「希林さんが撮り終わった時に、『私の最後のナレーションよ』と言ってくださった。機嫌よくスタジオを出ていかれたのが、非常に強く印象に残っています」と涙ぐみ、内田は「一緒にスクリーンに出てくれて嬉しかった。ありがとう」と感謝を示していた。
内田が主演と共同脚本を務めた「十階のモスキート」(1983)で監督デビューし、40年来の親交がある崔監督。「一昨年の『ニューイヤーズワールドロックフェスティバル』を拝見したとき、ふと『撮るなら今だ。祐也さんがしゃべることを全部撮ってみよう』と思った」そうで、「矛盾に満ちたことや、怒り、喜びが脈々と波打っている。でも、それが内田裕也だ。なんとか口説いて撮らせてもらった」と製作経緯を振り返った。
当初のタイトルは「内田裕也の遺言」だった。崔監督は「1人のロックミュージシャンの軌跡を超えるような、例えば昭和や平成という時代の証言として、その言葉を残したいという気持ちが強かった」と話し、「タイトルは『遺言でいきたい』と伝えたんですが、最初は『うん』という感じだったのが、そのうち『遺言というタイトルはやめろ』と。そこで思いついたのは『ローリング・ソウル』。転がる魂。最も相応しいタイトルになったっと思います」と説明。そして「希林さんいわく、『“世界の矛盾”を言葉にしろといったら、それは内田裕也さんです』。こんな名言はない」と引き合いに出し、「(内田の自己矛盾は)簡単に言うと進化なんです。日本の芸能の理屈に常に刃を向けつつ、同時に芸能の世界を愛し続ける希有なロックミュージシャン。それが、この作品の核になっています」と感慨深げに述べた。
また、京都国際映画祭には5回連続で参加し、皆勤賞の内田。「最初の頃は戸惑いましたけど、やっているうちに愛着が沸いてきた。さすが京都、文化の街だと再認識しました」といい、「いつも、とても楽しみにしています」と明かす。この日も「声が出にくい状態」だったが、懸命に喉に力を入れトークを繰り広げ、「1杯(酒を)飲んだら治ると思う」と言い放ち客席を喜ばせた。
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