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柄本佑、三宅唱監督「きみの鳥はうたえる」は「ご褒美みたいな映画。自慢作になった」

2018年8月31日 13:15

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主人公の“僕”を演じた柄本佑
主人公の“僕”を演じた柄本佑

[映画.com ニュース]41歳で自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志氏の同名小説を、「Playback」の三宅唱監督が、物語の舞台を東京から函館へ移して映画化した「きみの鳥はうたえる」が、9月1日公開される。柄本佑染谷将太石橋静河という若手実力派によるアンサンブルで、刹那なひと夏の恋と友情を美しく奏でる青春映画だ。主人公の“僕”を演じた柄本に話を聞いた。

函館郊外の書店で働く“僕”と、一緒に暮らす失業中の静雄、“僕”の同僚である佐知子。いつしか恋人の関係になった“僕”と佐知子は、静雄と共に夜通し酒を飲み、踊り、笑い合う幸福な日々を送る。しかし、終わりゆく夏とともに、3人の関係にも次第に変化が訪れる。

同じ劇場で映画を見ていた染谷に紹介されたのが、三宅監督との最初の出会いだそう。その後、改めて今作出演の話につながった。「『Playback』『THE COCKPIT』も見ていましたし、空気感や気が合うんです。話しやすくて、とても優しく正直な方なので、三宅監督のもとに人が集まるのはとてもよくわかります」とその独自の作風で注目を集める若手監督の人となりを明かす。

完成した作品は「漠然と、自然というか、山とか海とか、そういうものがちりばめられて、やわらかい時間が流れている感じ」と表現。一度撮影が延期となり、その間に三宅監督によって脚本が改稿された。「原作に忠実な脚本も好きでしたが、そこからまた1年時間が経って、もっといい形でベストの中のベストというような、すごく厚みのある本になった」と賞賛する。

「原作を三宅監督が咀嚼して血肉になった、三宅流恋愛映画だと思いました。こんないい本の映画にかかわれるのは、本当に幸せ。原作の中で戯れている3人の時間と輝き、瞬間の青春がこの作品の肝だと思うので。三宅監督と俺と、石橋さんと、染ちゃんとの出会い、そんな時間も脚本の中に含まれていたんじゃないかな」

画像2(C)HAKODATE CINEMA IRIS

どんな人間にも優しく寄り添うようでいて、無責任にとらえどころのない、若き自由人を体現するような“僕”。そんな“僕”という人物像を、どのように作り上げていったのだろうか。「三宅監督と、“僕”ってなんだろうと話をしながら探していく作業でした。ただ、正解はないので、俺が思う“僕”の声を三宅さんに聞いてもらい、撮影していく中で、お互い共通認識として進んでいきました。机上のものが三次元になるときにどうなるか、“僕”が動き出すまでを待つ時間がありました。16年くらいこの仕事やってきましたが、そのご褒美のような映画。幸せな現場で、自慢作になりました」

今春公開された主演作「素敵なダイナマイトスキャンダル」が高く評価され、待機作のポルトガルとの合作「ポルトの恋人たち 時の記憶」では一人二役に挑んでいる。日本を代表する俳優一家のサラブレッドでもあるが、プレッシャーを感じることはあるかと問うと、「プレッシャーは特にないですね」と飄々と答える。その一方で「ただ、18歳頃から、やたら、親父に似てると言われだして。そこに戸惑った時期はありました。そりゃ、似ますよね。家族だし。見るものも、面白いと感じるもの近いですし。そんな当たり前のことを言われるのが嫌な、ちょい反抗期みたいな時期はありました」とも明かす。

「親父の仕事への姿勢を見て、学んだことはたくさんあります。自分の仕事を見られて一番緊張するのって、やっぱり親。嫌だけど、どこかで見てもらいたい気持ちもある。俺や時生にとっては父親というより師匠のような関係が近いのかも。兄弟というより、姉貴も含めて戦友です。魚屋の息子が店を継いで、魚の目利きができなくてどうするんだという話。とにかく、いいものを見て、どれがいいものなのか、そうでないのか、自分のなかの尺度を確立したい。たくさんの良い俳優をできるだけスクリーンで見たいと思っています」と真摯に話した。

きみの鳥はうたえる」は、9月1日から、新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。

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