松田龍平、演じる瀬川晶司五段を目の前にしての撮影は「刺激的でした」
2018年8月18日 17:35
[映画.com ニュース] 史上初めて奨励会退会から編入試験に合格しプロ棋士となった将棋の瀬川晶司五段の半生を映画化した「泣き虫しょったんの奇跡」の公開記念トークショーが8月18日、都内で行われた。
奨励会にいた経験のある豊田利晃監督が8年ほど前に原作と出合い、「素晴らしい原作で胸に迫るものがあった。なんとかこぎ着けて作ることができた」と、監督20周年の節目に完成させた念願の企画。瀬川五段を演じた松田龍平も、「青い春」以来の豊田作品の主演で「いつか将棋の映画を撮るんじゃないかと思っていて、その時は絶対に出たかった」と相思相愛を強調した。
将棋は初心者だったため、映画の将棋監修も務めた瀬川五段の指導を受け、「原作にも瀬川さんの人柄が表れていて、お会いした時に距離感が近いような気がした。正直な人という印象でした」と述懐。瀬川五段は撮影現場にも足繁く通ったため、「演じる本人が現場に来るのは特別な撮影で、刺激的でした。本人から影響を受けられたのは良かった」と満足げに話した。
だが、撮影の思い出を聞かれると「そんなに覚えていない。自分のことばかり考えていたから、周りが見えなかったかも」と苦笑い。ただ、「瀬川さんは初めの頃は、居心地が悪そうだった。何でもない段差につまずきそうになっていた」と明かし、瀬川五段を「そんなところを見られていたんだ」と閉口させた。
さらに、奨励会退会が決まった瀬川の心象を表すための泥の沼に落ちていくシーンでは、豊田監督が「スタジオにセットを組んで、一発で決めなければいかなかったのに松田龍平がもう1回やりたいと言ったので、現場は大慌てだった。でも、2回目の方が絶妙だった」と暴露。松田は、「泥が美容のジェルみたいで、肌がツルツルになった。それで、もう1回できることになったのでうれしかった」とこともなげに振り返り、笑いを誘った。
そして、「本当に面白い映画になっている。対局は座りっ放しで動きはないけれど、そこにドラマがある変わった世界が魅力。将棋を知らない人にも見てもらいたいし、個人的には瀬川さんという魅力的な人がいることを知ってほしい」とアピール。豊田監督も、「将棋を知らない20代の女性にも分かる映画にしたくて、そうなったと思う。とっつきにくい敷居の高さを乗り越えて、映画館に来てほしい」と訴えていた。
「泣き虫しょったんの奇跡」は、9月7日から全国で公開される。