「犬ヶ島」ウェス・アンダーソン監督が共感する“日本の美”と「エヴァ」での発見
2018年5月25日 21:30
[映画.com ニュース] 独自の世界観とストーリーテリングで世界を魅了してきたウェス・アンダーソン監督が、日本を舞台にした長編ストップモーションアニメ「犬ヶ島」を引っさげ、13年ぶりに来日。かねて黒澤明監督をはじめ日本の巨匠たちからの影響を公言してきたアンダーソン監督が、自身の作品づくりに共通する“日本の美”の魅力を語った。
舞台は20年後の日本、架空都市ウニ県メガ崎市。小林市長は、大流行する“ドッグ病”対策としてすべての犬をゴミの島“犬ヶ島”に隔離する。12歳の少年・小林アタリは、愛犬スポッツを探すためたったひとりで犬ヶ島に降り立った。そこで出会ったチーフ、レックス、キング、ボス、デュークという勇敢で心優しい5匹の犬たちと、スポッツを探す旅に出る。その頃、メガ崎では、ドッグ病の治療薬を開発していた渡辺教授を代表とする“親犬派”と、市長が先陣を切る“反犬派”の対立が深まっていく。
「日本のありとあらゆる好きなことを網羅して、ひとつの物語に落とし込もうとしたんだ」。事実、登場人物や都市名のネーミングにはじまり、スシやサムライといった海外でも広く知られるモチーフ、さらにはロボット犬といった、日本らしさを感じる要素がところせましと詰め込まれている。「なかには、もっともな理由はないけど入れたものもある。たとえば、相撲の場面。あの場面って、物語の展開には全く関係ないんだ(笑)。でも、どうしてもパペットをつくって動かしてみたかった。たった3秒の取組だとしてもね」。その執念は、日本人も見たことのない日本を色鮮やかに描き出した。
さらに、“動”と“静”の演出も日本の作品からインスピレーションを得た。「(葛飾)北斎や(歌川)広重の浮世絵は、まるで動いているかのように見える作品がある。たとえば、たくさんの線が並んでいるだけで雨が降っているように見えるのはふしぎだよね。あの感じを表現したくて、細い糸やフィラメントを使ってみたんだ」。一方で、静的な表現は庵野英明監督のテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の影響があると明かす。「第1話のエレベーターの長いシーンは、絵には動きがなく音だけが変化していたんだ。静寂のおかげでとても力強い場面になっていた」。そのことから、「動きを静止させることによって、緊張感を与えられる」と気づき、その発見は犬の表情をクローズアップしたカットに活かされたという。
細部まで綿密につくりあげられた、情報量が豊富なビジュアルに加え、テンポの速いダイアローグが観客を一気に物語の世界へと引き込んでいく。念頭にあったのはハワード・ホークス監督のスクリューボールコメディ「ヒズ・ガール・フライデー」だというが、ペースの速いセリフ回しにこだわるようになったのは、長編2作目「天才マックスの世界」のときからだとか。「なぜそんなことをしたのかわからないんだけど、ストップウォッチを持って『「もっと速く! いまのセリフ2秒縮めて! もう1回!!』って感じで撮影したんだ(笑)」と振り返る。すると、同席していた野村訓市(小林市長の声優でコンサルタントも務めた)が、「今回も同じことを言っていたよ。あと2秒速くって(笑)」と、本作での裏話を明かされ照れ笑いを見せる。
来日記念の舞台挨拶では、日本を舞台にした物語を創作するにあたり、「クロサワ(黒澤)さんならどうするだろうか?」と共同脚本家たちと自問してきたことを明かしたアンダーソン監督。なぜそこまで日本に魅了されたのか? 「ピュアにまとめるとふたつに集約される」と答えてくれた。
「まずは、日本の映画。日本の映画という答えだと、日本の生活すべてといっているようなものかもしれない。とにかく、ぼくと日本とのつながりはすべて映画が出発点なんだ。そして、日本の美には秩序と均衡、緻密さがあって、そういったものから感情をひきだしていると思う。それは、僕の映画づくりのアプローチにすごく似ているから共感できるんだ」
「犬ヶ島」は現在公開中。
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