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出演を1度断念!? ソン・ガンホ「タクシー運転手」に感じた“健康的なプレッシャー”

2018年4月29日 17:00

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「光州事件」に直面するタクシー運転手を熱演
「光州事件」に直面するタクシー運転手を熱演
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[映画.com ニュース] 1980年に韓国で起こった民主化運動「光州事件」を題材にした「タクシー運転手 約束は海を越えて」(公開中)で主人公となるタクシー運転手演じたソン・ガンホ。メガホンをとったチャン・フン監督とは「義兄弟 SECRET REUNION」以来2度目のタッグとなったが、オファーを受けた際、1度は出演を断っていたようだ。

1980年5月18日、軍事独裁政権の復活を警戒した市民らが光州市内で10日間にわたり民主化を訴える大規模なデモなどを行い、空挺部隊が市民への発砲や暴行を行った「光州事件」。「80年の光州民主化運動は韓国現代史における最大の悲劇であるため、この映画の出演オファーをもらった時に大きなプレッシャーを感じたことは事実だ」と振り返ったソン。「“果たしてソン・ガンホという俳優が、このような歴史的事実を表現するに値するか?”“観客をがっかりさせないような良い作品を作れるか”という事がプレッシャーとなり、一度は断った。悪い意味でのプレッシャーではなく、“健康的なプレッシャー”という表現が相応しい」と胸の内を吐露した。

「光州事件」が起こった当時、ソンは中学2年生だった。「ラジオで『暴徒らを鎮圧した』というニュースを聞いた記憶がある。思い返せば情報統制や事実の歪曲によって目や耳をふさがれた時代だったのではないかと思う。あれから長い年月が経ち、忘れられない痛みが持つ本質を知るようになった」と告白。そして、1度は断ったオファーだったが「時間が経つにつれて、映画のことが気にかかるようになった。作品の持つ意味とエネルギーとが私の心を刺激していたのだろう。この映画が持つ情熱を観客と共有したいという切実な願いが募っていった」と決意を固めたようだ。

物語は「光州事件」の実情を世界に伝えるようとするドイツ人記者ピーター(トーマス・クレッチマン)と、彼を光州へと送り届けるタクシー運転手マンソプを軸に描かれる。ソン演じるマンソプは、実在したタクシー運転手の故キム・サボク氏をモデルにしたキャラクターだ。「撮影中は“キム・サボク”という人物について名前以外の情報はなかった。それが本名なのか、どのような人物なのか、ご存命なのかすら分からないという状況で彼を演じた」と明かしつつ「実在の人物であることから慎重さは欠かさなかった。さらに、大衆映画としての美徳を生かしつつ、この人物を演じなければと思っていたので、奥の深い人間味豊かなキャラクターに見えるよう努力をした」と語っている。

映画における“影の主人公”ともいえるのが、マンソプと過酷な運命をともにするオンボロのタクシーだろう。「当時、実際に走っていた車種の“ブリサ”を使用した。今の自動車よりサイズも小さめだった」と説明するソン。多くの撮影が車内で行われたようで「初めは狭くて暑くて不便だらけだったが、慣れてくるといつからか、その場所が心地よく思えてきた。 実際に運転をしたが、特に大変だった点はない。ただ、感情的なシーンは、演技と運転の2つを同時にこなさなければならず、その点については苦労した」と話している。

これまでにも「光州事件」を題材にした作品は、数多く製作されてきた。ソンは本作について「他の映画との一番大きな差は、基本的な人間の常識と道理における話を扱っているという点だと思う。マンソプがドイツ人記者を乗せて光州に向かったのも、職業倫理の側面よりは人としての道理、つまり最も常識的な道理に従ったまでのことだと思う」と分析。「近現代史における悲劇を扱っているが、悲劇的な側面を悲しみだけで表現したり事実のみを描こうとはしなかった。そういうことよりも、この映画を通じて何を伝えたいかという部分について考え、希望の持てる前向きな映画を作ろうと努力した」と作品に込めた並々ならぬ思いを打ち明けた。

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