【パリ発コラム】50周年とともにさまざまな行事で振り返る、フランス5月革命
2018年4月22日 09:00
[映画.com ニュース]昨年カンヌ映画祭でワールドプレミアを迎え、その後フランスで公開されたミシェル・アザナビシウスの「Le Redoutable(原題)」が、1968年の「フランス5月革命」から50周年を迎えた今年、日本でも公開される予定だ。本作は「中国女」を製作するジャン=リュック・ゴダールと彼のミューズ、アンヌ・ビアゼムスキーのラブストーリーに焦点が当てられているが、その背景にあるのが68年にパリで起こったいわゆる5月革命(フランス語では革命に当たる単語はなく、たんにMai68と称される)だ。当時の大学体制に反対した学生たちの反乱が労働者を含む大規模な抗議運動に発展し、カルチェ・ラタンを中心に政府の治安部隊と激しい闘争を繰り返したものの、およそ2カ月でド・ゴール大統領に鎮圧されて幕を落とした。
映画はふたりがデモに加わって行進したり、ゴダールが大学の集会で毒舌を展開しすぎて野次を浴びる場面などを、ウィットに富んだコミカルなタッチで描写している。
実際、50周年の今年は多くの関連行事がパリで開催される。3月23日から始まったポンピドゥー・センターでおこなわれている、国際ドキュメンタリー映画祭「CINEMA DU REEL」では、ノスタルジーやイデオロギーの観点だけでなく、さまざまな角度から5月革命を見直すため、約30本にのぼる貴重な長編、短編が特集される他、討論会もあり、さらに日本の学生運動に目配せした小川紳介特集第1弾が紹介される。この第2弾は4月一杯、ジュ・ド・ポーム美術館に場所を移して引き継がれ、大規模なレトロスペクティブとなる。
7つのチャンネルを持つラジオ・フランスでも複数のプログラムが組まれるとともに、文献をメインにした予約制の展覧会を開催中。それだけではない。4月から5月にかけてはポンピドゥー・センターでも展覧会が開かれ、シネマテークでは、今年50回目を迎えるカンヌ映画祭監督週間部門の第1回目作品の再上映がある一方、5月からは映画監督であり活動家としても知られたクリス・マルケルのレトロスペクティブが始まる。
フランス国立図書館フランソワ・ミッテラン館では、5月革命のイコンを紹介する写真展を開催予定。全体のプログラムは公式サイト(http://soixantehuit.fr)に掲載されている。
もともと学生たちの闘争から始まった5月革命は、「結局何も変えられなかった」として、関わった人々に大きな敗北感をもたらし、苦い思い出となった。当事者のなかには、親になってからその経験を子供に明かしたがらなかった人もいると聞く。だが一方で、その伝説は風化することなく語り継がれ、むしろ時代の移り変わりとともにその影響が見直されるようになってきた。
今、果たして社会はよくなっているのか、と疑問を感じる人々が増えている世の中だからこそ、我々はあの「熱さ」を、あらためて必要としているのかもしれない。(佐藤久理子)
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