幻の続編が存在した!? ウォン・カーウァイ監督作「欲望の翼」の製作は苦難の連続
2018年2月1日 12:00
[映画.com ニュース] ウォン・カーウァイ監督初期の傑作「欲望の翼」がデジタルリマスター版として、2月3日から東京・渋谷のBunkamuraル・シネマほか全国で公開される。スクリーンでの上映は、実に13年ぶりという貴重な機会だ。モノローグの多用、時系列に沿わない物語、印象的な音楽が光り、カーウァイ監督が独自のスタイルを確立した原点ともいえる作品だが、本作には未だに実現していない続編の構想があった。
レスリー・チャン、カリーナ・ラウ、アンディ・ラウ、マギー・チャン、ジャッキー・チュン、トニー・レオンといった当時「香港映画史上最初で最後」と評されたほどの豪華なスターがキャスティングされた本作は、元々3時間の上映時間を有する大作として企画されていた。全編をパート1&2に分け、同時にクリスマスに公開される予定だったが、カーウァイ監督の理想主義に加え、オールスター・キャスティングであるがゆえに撮影スケジュールの調整が難航し、製作は大幅に遅延していた。
やがてカーウァイ監督は、撮了していたパート1に当たる部分を「欲望の翼」(原題:阿飛正傳)として公開するという決断を下したのだが、初披露となったプレミアでも苦難は続く。上映が開始された時、カーウァイ監督とパトリック・タムは、なんとパート1後半部分の編集を終えておらず、必死になって作業を行っていた。結局は映写機の上映スピードが、2人の編集作業の速度を上回り、プレミアは一時中断。急遽、壇上に上がった司会者が場をつないだことで、ようやく残りの上映をスタートさせることができた。
プレミアの時点で、パート2の部分を含めた予算は完全に底を突いていたが、お披露目された「欲望の翼」は、世界中で大きな話題を呼ぶことになる。第10回香港電影金像奨では最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞ほか全5部門を制覇し、ベルリンを皮切りに、ニューヨーク、トロント、東京、バンクーバー、ナントといった各国の映画祭で絶賛され、カーウァイ監督の名を一躍世界に知らしめた。
その後「花様年華」「2046」へとキャラクターの名前や設定の一部を引き継いだ「欲望の翼」。幻となってしまったパート2は、同作の6年後、1966年を舞台に描かれる予定だった。60年代の香港に生きる若者たちの恋愛模様が、6年の歳月を経て、どのように変化していったのか。その答えは、ジャンルや国境を超えて今なお熱烈に支持されるカーウァイ監督だけが知っている。
「欲望の翼」デジタルリマスター版は、2月3日から東京・渋谷のBunkamuraル・シネマほかで全国順次公開。
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