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クロエと二人三脚で役を構築!「彼女が目覚めるその日まで」原作者「とにかく力強い女優」

2017年12月15日 15:00

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映画では製作と脚本監修も担当した スザンナ・キャハラン氏
映画では製作と脚本監修も担当した スザンナ・キャハラン氏

[映画.com ニュース] クロエ・グレース・モレッツが主演、シャーリーズ・セロンが製作を務め、発症率が300万人に1人ともいわれる「抗NMDA受容体脳炎」を発症した女性の闘病の日々を描いた「彼女が目覚めるその日まで」が、12月16日に全国公開される。映画.comはこのほど、映画の原作となったベストセラー回顧録「脳に棲む魔物」の著者で、本作の製作も担当したスザンナ・キャハラン氏にインタビューを行い、映画の舞台裏やモレッツ、シャロンとの仕事ぶりに迫った。

17歳でニューヨーク・ポストにインターンシップとして入ったキャハラン氏は、ワシントン大学卒業後同紙に入社し、報道記者として日々の業務に打ち込んでいた。そんな折、2009年・24歳のときに突如として原因不明の病気に陥る。当時は抗NMDA受容体脳炎が広く認知されておらず、キャハラン氏は約7カ月間に及び、パニックや躁鬱(そううつ)状態、幻覚や幻聴、全身のけいれんなどと闘った。

07年に名前が与えられるまで、抗NMDA受容体脳炎は“悪魔つき”や精神の病とされ、映画「エクソシスト」のモデルとなった少年もこの病だったと指摘されている。映画ではモレッツがキャハラン氏本人を演じ、キャハラン氏の想像を絶する壮絶な体験を、全身全霊で表現している。

インタビュー中も笑みを絶やさず、快活な話しぶりが印象的なキャハラン氏は、初めて完成品を見た当時を振り返り、「なんだかちょっと幽体離脱したような感覚になりましたね。いろんな感情がわき上がってきて、時には目を背けたくなるような居心地の悪さを感じたり、あるいは感情を揺さぶられたり。自分自身、記憶していない部分も多いので、第3者の目で見るような変な感覚になったりもしましたね」と目を大きく見開いて語る。本作では脚本監修も務めており、「自分の役目として最も重要だったのは、特に症状に関する描写が正確に書かれているか監督すること。気になることがあれば、幸運なことにそれをちゃんと(製作陣が)聞き入れてくれて、修正してくれました」とほほ笑む。

さらに、モレッツとは互いに顔を突き合わせて、二人三脚で役を作っていったという。「こういう病気を患うのがどういう体験なのか、例えば発作が起きたときは体はこうなるんだ、といったことを結構話し合いましたね。クロエ(・グレース・モレッツ)から出てきた質問としては、回復していくというのは自分のアイデンティティを少しずつ取り戻していくプロセスでもあるわけですが、『それってどんな感じなの?』と聞かれました。彼女自身もやっぱり芝居をするときに、役にあまりにもとらわれてしまって自分を見失っちゃうことがあるそうです。きっと彼女は、そこに自分との共通点を見出したんじゃないかな。その質問を受けたとき、“鋭いな”と思いましたね」とモレッツの役者としての才能に驚かされたという。

キャハラン氏のモレッツへの称賛は熱を帯び、「クロエは、とにかくパワフルな女優。かなり大変なシーンを撮っている日に一緒に現場にいて、とても力強い女優だと感じましたね。それともう1つ、オン/オフのスイッチがすごい。どっぷりそのキャラクターに浸かって、次の瞬間には完全にオフになっているのには感心させられました。今まではあまり意識していなかったんですが、彼女の演技を見ていて、演じるというのはものすごく勇気を要する作業なんだと気づかされました。さらけ出すというか、時として恥ずかしいことを人前で堂々とやらなければいけないわけですから」と自身の価値観さえも変化するほどの出会いだったようだ。

そしてもう1人、自ら映画化権を獲得するなど、並々ならぬ決意を持って製作に挑んだセロンに対して「この映画を背負ってくれた。作品を前に進める駆動力になってくれました」と感謝を述べたキャハラン氏。「これは想像の域なんですが、シャーリーズ(・セロン)は、やっぱり女性をサポートする人だと思うんです。また、力強い女性を描くっていうことも、1つのモットーとしているんじゃないかな。だからこそ、この物語もまた芯のある女性を描く1つの形ととらえてくれたんじゃないか、と思っています。本の映画化権って、実際に映画化にこぎつけられるものはほんの一部なんです。そのなかで本作が映画化できたのは、彼女の力強い信念や、『やり遂げるぞ』という意志、ハリウッドの中で自分が持っている力を使ってくれたからだと思います」と自身の見解をまじえて語った。

キャハラン氏から、セロン、そしてモレッツへと、3人の力強い女性がバトンを受け渡していくことで生まれた本作。「書くことは自分の天命。仮に、この本が私がこの世に残した唯一の業績だったとしても、誇りを持って死ぬことができる。そんな意識はありますね。“書く”行為は世の中を見渡し、世界とコミュニケーションをとる手段。私にとっては、食事と同じくらい欠かせないものなんです」と熱い思いを語ったキャハラン氏は最後に、書き上げたばかりだという次回作について明かしてくれた。

「次の本も『脳に棲む魔物』と関連していますが、『果たして精神病とは一体何なのか』を掘り下げていくものです。1970年代に、ボランティアが精神病院に潜伏するという実験がありました。精神病ではないのに『幻覚が見える』と言った結果、統合失調症と判断されたんです。それは同時に、正気である、ということをどう証明するのかも考えさせる。そのような歴史をひも解きつつ、じゃあ自分が患ったこの病気は、現代医学の歴史の中でどういう位置づけになるのか? そういったことに踏み込んでいく内容になります」。映画好きで、お気に入りの監督はデビッド・リンチ。「ブルーベルベット」や、日本映画なら「おくりびと」が好きだというキャハラン氏の歩みは、これからも続いていく。

彼女が目覚めるその日まで」は、12月16日から全国公開。

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