「僕は女性の味方」フランソワ・オゾン、独仏舞台の恋愛映画で新星ヒロインを情感豊かに描く
2017年10月20日 14:00
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[映画.com ニュース]新作「婚約者の友人」で、第1次大戦直後のドイツとフランスを股にかけた、瑞々しい恋愛ドラマを描いたフランソワ・オゾン。戦争が両国に残した傷跡のなかで、婚約者フランツを亡くした若きドイツ人のヒロイン、アンナが絶望、虚無、新たな希望などを経験していく様を、モノクロとカラーを織り混ぜた独自の映像美学で語る。すでに自作「焼け石に水」でドイツを舞台にしたことがあるオゾンだが、彼にとってのドイツとは、一般的なフランス人の「近くて遠い国」的な感情とは異なるようだ。(取材・文/佐藤久理子)
「子供の頃に初めて親に連れられて行った外国がドイツだった。そのとき子供なりに、ドイツの方がフランスよりいいと思ったんだ(笑)。清潔だし、人々は礼儀正しいし、すべてがフランスより綺麗に見えた。たしかにフランス人にしたら珍しいかもね。でも子供の趣味というのは偏っているものだろう(笑)。それ以来、学校で学ぶ外国語もドイツ語を選択し、その後ライナー・ベルナー・ファスビンダーらのドイツ人映画作家を発見してますますドイツが好きになった。フランス人はドイツに複雑な感情を抱いている。かつての敵国だし、いまやドイツの経済はフランスより強い。同盟国で友人だけど、ライバル心もある。そんな微妙な関係が僕にとっては面白い。この原作に惹かれた一番の理由は嘘をテーマにしていたことだが、ドイツが舞台という要素も大きかった」
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アンナはフランツの友人と名乗るフランスから来た青年、アドリアンに出会う。婚約者が愛していたフランスを象徴するようなこの若く、知的で紳士な青年に彼女は次第に惹かれていく。これまでもその作品で、さまざまな女性たちを魅力的に描いてきたオゾンは、ここでも新星パウラ・ベーアの持ち味を最大限に生かしながら、アンナの旅路を情感豊かに描く。なぜ監督はアドリアンよりもアンナに共感を寄せたのか、と訊ねると、こんな答えが返ってきた。
「僕は女性の味方なんだ(笑)。女性を描く方が興味深いのは、彼女たちは往々にして社会の犠牲者で、闘わなければならないから。一方男性はもっと甘やかされている。アンナとアドリアンを比べても、アンナの人生は闘いだ。自分の家族はもういない、危うく愛してもいない相手と結婚させられそうになる。一方アドリアンはブルジョワの息子で、精神的には苦しんでいるけれど甘やかされている。映画の後半、フランスを訪れたアンナは彼女の幻想とは異なる本当のフランスを発見する。そこで彼女は大人になることを余儀なくされる。そんなアンナの精神的な旅路はとてもエモーショナルだと思う」
女性を温かい眼差しで見つめ続けるオゾンのマジックを、心ゆくまで堪能したい。
「婚約者の友人」は、10月21日から東京・シネスイッチ銀座ほか全国で順次公開。
(C)2015 MANDARIN PRODUCTION–X FILME–MARS FILMS–FRANCE 2 CINEMA-FOZ-JEAN-CLAUDE MOIREAU
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