成島出監督、親友が自殺したつらい思い出を新作に込める「悩んでいる人の背中押したい」
2017年5月13日 19:20

[映画.com ニュース] 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」の成島出監督と原作者の北川恵海さんが5月13日、都内での試写会後に社会学者の古市憲寿氏をゲストに迎えトークショーを行った。
テーマは、「自分らしい生き方・働き方を考える」。映画はブラック企業やパワハラなど現代に根差した問題を扱っており、共同で脚本も手掛けた成島監督は「僕も20代に親友2人が自殺した経験がある。その時は悲しみより悔しくて、その思いがずっとあった」と告白。原作小説と出合い、「ヘビーな思い出だけれど、それをユーモアを交えてきっと希望があるという柔らかさ、優しさを提示してくれた。一晩で読み終えて、僕の映画になると思った」と説明した。
古市氏は、「タイトルでオチを半分言ってしまっているから、ともすれば退屈になりがちだけれど、最後までハラハラさせるのは物語の力。それは希望と救いがあるから」と絶賛。ポスターに映ったブラック企業に勤めるサラリーマン役の工藤阿須加を見て、「死んだ目がめちゃくちゃうまい。何かの用例として出したい」と冗談交じりに話した。
成島監督は、工藤と主演の福士蒼汰にはクランクインの5カ月前からじっくりと演技指導をしたそうで、満足げな笑顔。タイトルについては、北川さんが「SNSなどでよく書かれている本当かどうか分からない軽い感じの表現に、仕事という重いテーマをまぜたら面白いと、書き始めた当初から決めていた。テーマは重いけれど、書いたのはあくまでエンタメです」と主張した。
その上で成島監督は、「一番怖いと思ってほしいのは、(上司に怒られている工藤の)周りが声を発しないこと。僕は『ソロモンの偽証』でもいじめを扱ったけれど、そういうことは全員で騒ぐしかないんです。この映画が悩んでいる人の何かのきっかけになり、背中を押す1枚のカードになってほしい」と警鐘を鳴らす。古市氏も、「今の若い子は優しくていい子が多い。だから周りを気にして、自己中心になれない。一生懸命頑張っても報われないのは、向いていないから。自分に期待しすぎないことが大事。そうすれば意外と楽しく無理のない生き方ができる」と持論を展開していた。
「ちょっと今から仕事やめてくる」は、営業ノルマと上司のしっ責に悩み自殺しようとした青山(工藤)が、小学校の同級生という山本(福士蒼汰)に助けられたことをきっかけに新たな人生を模索していく人間ドラマ。5月27日から全国で公開される。
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