「スプリット」M・ナイト・シャマラン監督が明かす、予想を裏切る脚本の作り方とは?
2017年5月12日 17:00
[映画.com ニュース] 「X-MEN」シリーズのジェームズ・マカボイを主演に迎え、23もの人格を持つ男の恐怖を描いた「スプリット」を手がけたM・ナイト・シャマラン監督が来日し、映画.comの取材に応じた。
マカボイ扮する23人もの人格を持つ男と、拉致監禁された3人の女子高生の戦いをスリリングに描き、全米で3週連続第1位のヒットを記録したスリラー。原点回帰を図った前作「ヴィジット」もスマッシュヒットを記録しており、「シックス・センス」ですい星のように現れ、観客の予想を裏切るち密なストーリーテラーとして名をはせたシャマラン監督は、第2の円熟期を迎えつつあるといってよいだろう。
シャマラン監督は「ここ最近は自分で資金調達をしていて、そうすると意識が変わってくるんだ。自分の家を担保にしてまでとなると、これでよかったのかとより細かくチェックするようになる。必死さがまた違ったレベルのものになるんだよ」と自身の“変化”について語る。「ここ2作はとても誇りに思う作品になっていて、投資したことでより保有意識が出てきたんだ。そういった経験を経て、今まで気づいていなかった自分の中の一部が“覚醒”した感じはある。自分が全責任を持って作った作品であれば、それに対する不評や批評、称賛を素直に受け止められるしね。全部自分にかかっていると思うと、不思議と安らぎを見いだすことができるんだよ」と柔和な笑みを浮かべる。
「ヴィジット」「スプリット」では、「パラノーマル・アクティビティ」「パージ」などの人気スリラーシリーズから、音楽ドラマ「セッション」まで幅広く手がける名プロデューサー、ジェイソン・ブラムと組んでいるが、この存在について聞くと、シャマラン監督はニヤリと笑い「実は昔、フィラデルフィアの僕の仕事場に彼が来て、小規模の作品を一緒に作ってみないかという話をもらったんだ。聞いたときは、彼のための雇われだったらやりたくないなと思ったんだ(笑)」とジョーク交じりに明かす。「でも色々と考えて、『ヴィジット』を自分1人で作り上げてから、ジェイソンに電話して『実はあなたのアドバイスを受けて作ったんだけど見てみない?』と誘ったらすぐ見てくれて、『これは最高だ!』と言ってくれたんだ。それで2人でユニバーサルに売り込みに行ったんだよ。だから、ジェイソンの普段のやり方とは異なるんだ。彼はいつも映画監督を雇って映画を作るんだが、僕の場合は逆に雇って一緒に携わってもらったんだよ」とシャマラン監督がリードする形でのコラボレーションだったようだ。
セルフプロデュースの良さは、自身が描きたいものを存分に追求できる点。シャマラン監督の言葉通り、「ヴィジット」と「スプリット」には随所に製作者の手触りが感じられる。とはいえ、ブラムを招へいしていることからも、決して独りよがりな作品には収まっていない。特に本作では、冒頭から意表をついた展開が巻き起こるなど、シャマラン監督らしいトリッキーな筋運びは鋭さを増し、娯楽性も一層押し広げられた印象だ。一体どのようにすれば、観客の予想を裏切る脚本を生み出せるのか。シャマラン監督は、待ってましたとばかりに熱く語り始める。
「脚本というのは、未知の部分が驚きにつながってるんだ。想像つかないことをいわれると笑っちゃったりもするし、逆に予想がつかないからこそ、緊迫感が生まれる。つまり、情報が制御されていると、そこに緊迫感が生まれるんだよ。たとえば、地下鉄に盲目の少女が手を広げて立っているとする。その状況がまずあるとすると、なぜ彼女はそんなことをしているんだろうとか、その意味はなんだろうとか色々考えられて、面白さが引き出されていく。ミステリーでは、話の流れをある方向に持っていくのが重要だ。その方向性は主人公の主観だから、情報が正しいかどうかは別として1つの方向に流れ始めているといえるよね。そこに、『本当はこうだった』という動きを加えることで、驚きが生まれるんだよ」。
シャマラン監督はさらに、斬新なアイデアを生み出す秘けつとして「飛行機に乗っていたり、車を運転しているときって、脳がニュートラルな状態に入っている。そういうときって、ぽっとアイデアが思い浮かぶんだ。それをメモしたり、そこからまた新たな話が浮かんだりするんだよ」と語る。今回の来日中にも常にメモを持ち歩き「今現在、次の作品の準備に入っていて、さらにその次にすっごく作りたいと思っている映画がある」という次々回作の構想を練っていたそうだ。「スプリット」のアイデア自体、2015年の「ウェイワード・パインズ 出口のない街」での来日時のメモから生まれたという。尽きない創作欲こそ、シャマラン監督の最大の武器といえるのかもしれない。
「スプリット」は、5月12日から全国公開。
PR
©2024 Disney and its related entities
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。