「愚行録」妻夫木聡、演技論を明かす「こういう人だと思って演じたことはこれまでない」
2017年3月28日 19:00
ミステリー作家・貫井徳郎氏による直木賞候補となった同名小説を実写映画化。未解決の一家惨殺事件の真相を追う週刊誌記者・田中(妻夫木)が、関係者たちに取材を敢行するなかで人間の浅ましさを目の当たりにしていく。2月18日に封切られ、興行収入は1億6000万円を突破した。
「怒り」で第40回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞に輝くなど、演技派として知られる妻夫木。「(このキャラクターは)“こういう人”だと思って演じてきたことはこれまでもない。表層的になってしまうんです。李(相日)監督もよく言うんだけど、『悪人』のときに『あー(役を)まとってるね』って(笑)」と演技論について明かし、「アフレコをいくつか行ったんですが、シーンを見直して『できないですわ』と言ったんです。微妙なブレスというか声のトーンがクリアじゃない。どうやったのかわからない」と入り込みぶりがうかがえるエピソードを告白。役作りに関しては石川監督とも協議を重ね「石川監督と同じ思いを共有できていて、存在感がありすぎてもなさすぎてもよくないと話し合った」と語った。
一方の石川監督は「共犯関係というか、なぜやるのかを含めて話し合えた。妻夫木さんって、相手役の芝居までも違う風に見えてくる。これが主演を張るっていうことなんだと感じました。シナリオしかできていない段階で打診させていただき、『やります』と言っていただけたので、この作品は妻夫木さんありきで始まっている」と絶賛。ラストシーンの田中の表情は2人で悩みぬいた結果生まれたものだそうで、妻夫木は「はっきりさせた方がいいんですかねと言ったらそういうことではないと。じゃあ泣くってことですかと言ったらそうでもないと(笑)。『マイ・バック・ページ』のラストの表情の撮影も『あれなんだ、なんていうかアレなんだ』と山下(敦弘)監督が言っていた」と撮影を振り返る。「微妙な表情なんですよね……」と撮影時の苦労を回想した石川監督は「山下監督もそんな感じだったんですね。安心した」と胸をなでおろし、会場からは笑い声が上がった。
初々しさを垣間見せた石川監督だったが、妻夫木によると意外な“大物ぶり”を感じさせたそうで「石川監督はマイペースなんですよ。撮影期間は20日間で、冒頭のバスのシーンから撮り始めた。バスは1日しか借りられない状況で、終盤と2シーン撮らなくちゃいけないのにずうっと(冒頭のシーンを)撮っている。僕はだんだん焦ってきちゃって(笑)」と冗談交じりに振り返った。
「悪人」「スマグラー おまえの未来を運べ」など共演作も多い満島ひかりに関しては「心を通わせるということをあまりしないようにしていましたね。(満島)ひかりちゃんも『あまり話さないようにしていた』と言ってたけど、現場では普通に話しかけてきましたけどね(笑)。自由奔放なんですよ」(妻夫木)とぶっちゃけていた。
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