黒沢清監督、フランスの幻想怪奇映画「顔のない眼」を語る
2016年10月15日 09:00

[映画.com ニュース] 黒沢清監督初の海外進出作品「ダゲレオタイプの女」公開を記念したアンスティチュ・フランセ東京の特集上映「フランス幻想怪奇映画特集」で、ジョルジュ・フランジュ監督の「顔のない眼」(1960)が10月14日上映され、黒沢監督と映画批評家のクリス・フジワラ氏がフランス怪奇映画の魅力を語った。
「顔のない眼」は、本企画のために黒沢監督自らセレクトした怪奇映画で、交通事故で顔の皮膚を失い、仮面をつけて生活する美しい娘を持つ医師の父親が、誘拐した若い少女たちの顔の皮膚を娘に移植しようと試みる物語。
同作を過去に何度も鑑賞しているという黒沢監督は「即物的で身も蓋もない物語だが、見終わった後に、おそろしい夢から覚めた後のような気分を引き起こす、ファンタジーのような映画。このような即物性と幻想を持った作品は『悪魔のいけにえ』くらい」と感想を述べる。
フジワラ氏は、ハリウッド、イギリス、イタリアなどではホラー映画がジャンルとして確立しているが、フランスにおいては「幻想映画の長い歴史があり、説明不可能な不条理な体験や幽霊などを描いた19世紀の文学が映画に流れてきた」と説明。黒沢監督は、「顔のない眼」が、自身も影響を受けたという、フランケンシュタインやドラキュラシリーズで知られる、英国のハマー・フィルム作品の人気を受けて作られたと推測しながらも「時代ものでもなく、怪人やモンスターは出てこず、医学的犯罪で警察が動くのは現代的で、またフランスの大衆犯罪映画的。『顔のない眼』はいろんなジャンル映画の要素を集めた独特の作品」と評した。
また、フジワラ氏から「顔のない眼」と「ダゲレオタイプの女」との類似点を問われた黒沢監督は「ハマー・フィルムの作品のように、古い館の中で怪しげな何かが起こるゴシックホラーから発生した物語を作りたいという子供じみた欲望があった。(2つの作品の)ルーツは同じなのかもしれない」と話した。
さらに、フジワラ氏から「岸辺の旅」以来、新作をシネマスコープサイズで撮影していることについて尋ねられると、「僕はずっと、1:1.85のビスタサイズが理想だと思っていましたが、『リアル 完全なる首長竜の日』で、今のテレビと同じサイズだと気付いた。テレビとは違うものを作るために、(新作を)シネマスコープで撮りながら勉強している」と明かした。
「フランス幻想怪奇映画特集」は10月28日までアンスティチュ・フランセ東京で開催。「ダゲレオタイプの女」は10月15日から、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国で公開。
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