ベネチア映画祭銀獅子賞受賞「エル・クラン」監督、コメディ俳優の起用理由を明かす
2016年9月13日 12:00
「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」などを手がけたスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督が製作を務め、行方不明者にまつわる身代金で生計を立てていた実在の家族を描く本作。1983年のアルゼンチン、父アルキメデス(ギレルモ・フランチェラ)と母、5人の子どもたちで構成されるプッチオ家は、表面上は幸せに暮らしていたが、アルキメデスは次男アレハンドロ(ピーター・ランサーニ)を巻き込み、他人には言えない“裏稼業”に手を染めていた。
プッチオ家の大胆不敵な所業はまさに“事実は小説よりも奇なり”だが、トラペロ監督が映画化を熱望した理由もそこにあるという。「プッチオ家の事件は、強烈に魅力的で信じがたいストーリーだった。反面、多分に暴力的なこのストーリーを通して“父子の関係”といった普遍的なストーリーを語ることができると思った。それがこの映画の核となる部分なんだ」。
トラペロ監督の言葉に象徴されるように、本作は犯罪劇であると同時に父子の関係の変遷を追った人間ドラマの側面も持つ。キーとなるのが、本国アルゼンチンではコメディ俳優として知られるフランチェラの異例とも思えるアルキメデス役への抜てきだ。トラペロ監督は「大きなチャレンジだったね。なぜ彼がアルキメデスに適役と考えたか、それは彼には特別なまなざしがあるからだ」と決め手は“目力”にあったと解説する。
さらに「アルキメデスは周囲に尊敬されており、愛すべき親切な隣人だった。その反面、暴力的で病的で暗い一面を持っていたんだ。ギレルモのコメディ俳優としての人気、人々に愛されるキャラクターを駆使して、観客に近所の住人の視点に立ってもらい、最後に実は悪党だったと発見してもらいたかったんだ」とフランチェラのパブリックイメージを巧みに利用し、観客を物語に引き込む意図があったと明かす。
トラペロ監督は、俳優選びだけでなく、映像でもあるチャレンジを行ったと語る。監督のこだわりが凝縮されているのが、長回しを利用した衝撃的なラストシーンだ。「ラストシーンは現実に起きた通りでもあり、脚本の初稿段階から書かれていた。複雑なワンカットのシーンで、実現するのにすごく手がかかったんだ。その分、仕上がりをすごく誇りに思っているよ」と自信を見せる。
このほかにも、映画では要所要所で長回しが用いられているが「緊迫感、時間の経過、登場人物への共感を生むための手法なんだ。映画ではアレハンドロもある種、父親の被害者として描かれる。長回しを使うことによって、カットや撮影のトリックなしに、観客はアレハンドロと一緒にいるような臨場感を味わえるんだ。ラストシーンでは、アレハンドロが自由になれると感じるときがくる。彼が父親を見た瞬間から一連のことが急速に進展し、アレハンドロのアクションにつながるんだよ」。トラペロ監督の話し方からは理論派ぶりがうかがえるが「ラストシーンはサプライズだから、これ以上は話さないよ!」と観客への気づかいも忘れなかった。
「エル・クラン」は、9月17日から全国公開。
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