坂本龍一、李相日監督×オールスターキャスト「怒り」の音楽を担当!
2016年6月16日 05:00
[映画.com ニュース] 音楽家・坂本龍一が、吉田修一氏の著書を李相日監督が映画化する「怒り」の音楽を手がけることが明らかになった。李監督作への参加は初となるが、「粘り強くこちらに様々な要求をしてくる。しかしそれは『もっとよい方法があるのではないか』『もっとよくなるのではないか』という李さんの作品へのこだわりからくるものであり、モノを作る人間ならば当然の欲求であって、逆にそれがないのがおかしいと言わざるを得ない」と強い信頼をにじませ、「『怒り』は日本映画としては珍しくエンタテインメントに流されず、骨太でパワフルな映画になったと思います」と完成度に太鼓判を押している。
坂本は、「戦場のメリークリスマス」で第37回英国アカデミー賞作曲賞、「ラストエンペラー」で第60回アカデミー賞作曲賞を受賞。近年は、第88回アカデミー賞で監督賞、主演男優賞、撮影賞の3冠に輝いた「レヴェナント 蘇えりし者」の音楽を手がけるなど、革新的なサウンドを追及する姿勢が世界的な評価を得ている。
熱烈なオファーを快諾した坂本は昨年8月、撮影現場を見学。李監督との複数回の意見交換を経て、今年3月に「レヴェナント 蘇えりし者」の音楽収録を行った米ワシントン州ケンモア市のバスティア大学内にあるチャペルで、レコーディングを実施。演奏も同作と同じノースウェスト交響楽団が担当したほか、エルトン・ジョンやレッド・ホット・チリ・ペッパーズとの競演経験を持つクロアチア出身のチェリスト・デュオ「2CELLOS」も参加した。
李監督は、坂本との仕事を「映像から受けた刺激と、僕のゴタクに忍耐強く耳を傾け、ミリ単位に及ぶ緻密で壮大なサウンドが生み出される。登場人物たちは多様な顔を見せ始め、シーンは様々な解釈を生じさせていく。もっと深く、もっと濃密に…思えば、“坂本龍一”という名の大きさに呑まれぬよう自分を叱咤していた」と振り返る。そして「気付けば、呑まれたのは、『怒り』に臨む坂本さんの姿勢。剥き出しの、その情熱に」と最敬礼だ。
さらに、このほど予告編も公開された。登場人物たちの感情が高まっていくさまが映し出され、それぞれの心に潜む“怒り”を浮き彫りにするかのように鳴り響く、ピアノの音色が見る者を圧倒する。川村元気プロデューサーは、坂本の音楽を「人を信じる気持ちと、信じられないと思う気持ち。揺れる登場人物たちの感情を、冷静な世界からエモーショナルに音楽を描けるのは、世界においても坂本龍一しかいなかった」と語っている。
「怒り」は、渡辺謙、綾野剛、松山ケンイチ、広瀬すず、森山未來、宮崎あおい、妻夫木聡ら日本を代表する俳優が結集し、「人間の本質は善と悪」というテーマに挑む。犯人未逮捕の殺人事件から1年後、千葉、東京、沖縄という3つの場所に、それぞれ前歴不詳の男が現れたことから巻き起こるドラマを描く。9月17日全国公開。