ホラーは永遠!イーライ・ロスがゴア描写に終了宣言した「ノック・ノック」を語る
2016年6月10日 17:30
ロス監督のオファーに応え、リーブスは「たまたまスケジュールが空いていたらしく、『いいよ、僕この企画やる』と言ってくれて決まったんだよ」とプロデュースとしても参加。ロス監督は、「追い込まれた男を見事に演じてくれた」と初の父親役に挑んだリーブスに「彼は本当にひょうきんで、ファニーな奴だった。仕事ぶりも素晴らしく、プロ根性があって演技も素晴らしい。過小評価されていると思う」とほれ込んだようだ。
家族と幸せな日々を送っていた建築家エヴァンは、ひとり留守番をしていた豪雨の夜にふたりの美女を家に招きいれてしまったことから、地獄へと転がり堕ちていく。エヴァンはこれまでのリーブスのイメージとは程遠く、美女に翻ろうされた挙句、情けない姿をスクリーンでさらす。
エヴァンの心を削る狂気の美女コンビを演じた女優陣は、ロレンツァ・イッツォ、アナ・デ・アルマスの若手注目株。「エヴァンの周りを旋回するサメのような存在」として映し出すため、「彼女たちにとってのリアルなゲームなんだと。チェスゲームをやるように、一手一手進めて詰め寄るようにと、それを意識するようにやってくれと伝えた」と細かな演技を行ったという。
食人族を描いた前作「グリーン・インフェルノ」は残酷な描写が多かったが、本作ではグロテスクさは影を潜め精神的苦痛が見る者を襲う。「いわゆるゴア(血みどろ)シーンに対するマイクドロップ(終了の宣言)なんだ」と明かし、「これまでは、森へ行きました/ホステルに入ってみました/学生運動やってみました……という、慣れている環境から抜け出して異文化に接することで何かが起きる、という構成だった。今回は、家へ異文化がやってきましたと、逆転させてみたんだ。安全パイだと思ってガードが緩くなっているところに、異文化が乗り込んでくるんだよ」と新たな恐怖をテーマにした。
本作は「幸せとは、結婚して子どもを産んで……こういうことだ! みたいな公式があるけど、あくまで表面的なこと」ということに対し、「美女たちが『bullshitだ!』とエヴァンの気持ちを代弁してくれているんだ」。そして、サンダンス映画祭で話題を集めたホラー「ザ・ウィッチ」を引き合いに出し、「アートとは何か? ということも意識して作っている」と説明。「『ザ・ウィッチ』もアートだと思う。アカデミー賞にノミネートされている作品を見て、これの何がアートなんだ? と思ったりする。でも世間の人たちは『これがアートだ!』と言っていて、何なんだ! と思うわけ」と持論を展開した。
「ホステル」などさまざまなホラー作品を生み出してきたロス監督にとって、「恐怖は誰しも人生で対峙しなければならないもの。恐怖映画は、それを浄化するためにある」ものだ。
「これからもホラーはずっと続くと思う。ホラーは永遠だ! いつでも、形を変えてその時代のホラーが出てくる。ある時は狂信的な教祖、今は大統領選がホラーだよね。核ミサイルを飛ばせるような奴が大統領になったらどうするんだ! 実は僕の作品はミリタリーベースで人気なんだよ。彼らは日常的に人の死体を見るけれど、決して顔色を変えてはいけない。そういう環境を強いられている彼らが、ホラーを見る時には『怖い、怖い!』と堂々と言う。つまり『臆病者だな』と言われないで済む免罪符のような存在で、彼らにとっては心の解放になるんだ」
「ノック・ノック」は、6月11日から全国で公開。
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